2015 Fiscal Year Annual Research Report
膵発癌過程におけるselection pressureの網羅的解析と治療応用
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26293171
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下瀬川 徹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90226275)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱田 晋 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20451560)
正宗 淳 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312579)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 膵癌モデルマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は膵特異的に変異Krasおよびp53を発現するKPCマウスを作成し、肉眼的に確認できる膵癌が発生したものを複数確認した。形成された腫瘍を摘出し、コラゲナーゼによる処理によって癌細胞を単離し、細胞株を樹立した。これまでに2系統の細胞株を樹立し、標準的な膵癌に対する抗癌剤であるゲムシタビンへの感受性をMTTアッセイにて確認した。いずれの細胞株でもゲムシタビン処理後72時間経過後も50%程度の細胞がviabilityを維持しており、内因性の耐性が示唆された。また、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルの評価を行い、これらの細胞株では薬剤耐性に関わるABCトランスポーターやグルタチオン合成酵素が発現していることが確認され、耐性獲得に貢献している可能性が考えられた。以上の結果はモデルマウスにおける膵発癌過程において発現遺伝子の淘汰が起こっていることを意味しており、膵発癌過程におけるselection pressureの詳細を解明する基礎となるデータである。また、近年様々な疾患と腸内細菌叢が関連していることが報告されているため、膵癌患者由来腸液検体からメタゲノムDNA抽出を行い、膵癌患者における錠剤細菌叢のプロファイリングにも着手した。便潜血用の微量検体から抽出したDNAを用いて腸内細菌由来16s rRNA遺伝子のPCR増幅を行い、解析が可能であることを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は膵発癌モデルマウスに発生した膵癌から細胞株を樹立し、癌進展に有利に作用する遺伝子群の発現を確認した。これらの遺伝子群の発現を制御する因子の解析には樹立した細胞株が利用できるため、今後の進捗が期待できる。また、膵癌患者における常在菌叢プロファイルの解析も微量の検体で施行可能であることが明らかになり、膵局所のみならず個体として病態形成に関与する因子の一つとして、膵発癌過程におけるselection pressureの解明に有用な解析対象と考えられる。これらの知見が得られ、次年度以降の解析に利用しうる細胞資源・検体の集積が進められており、本研究課題の進捗はおおむね良好と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降はマウス膵癌由来細胞株を用いて抗癌剤耐性株の樹立を行い、遺伝子発現プロファイルを網羅的に解析することで治療抵抗性の獲得に関わる遺伝子群の特定を行う予定である。同定された遺伝子についてはKPCマウスまたはKPCマウス由来膵癌細胞株を用いて作成したヌードマウス皮下移植モデルを用いて、薬剤による機能阻害やsiRNAによる発現抑制が治療感受性を回復させうるかの検討を行う。また、ヒト膵癌検体においてもそれらの遺伝子発現レベルを評価し、予後や抗癌剤への反応性、進展形式や再発期間の差といった臨床的アウトカムの予測に有用であるかの評価を行う。膵癌と腸内細菌叢の関係については、膵癌患者由来腸液検体に加えて非担癌患者由来腸液検体(慢性膵炎や総胆管結石など)での細菌叢プロファイル解析を実施し、膵癌特異的な細菌叢の変化がみられるかを評価する。特定の細菌叢変化が膵癌患者の予後や治療反応性と関連するかについても解析を実施し、特徴的な関連がみられる菌種についてはKPCマウスへの投与実験によってヒト膵癌にみられた臨床経過の変化の再現を試みる。また、早期の膵癌症例でも確認できる細菌叢の変化については、スクリーニング検査への応用が可能であるか検討する。
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Causes of Carryover |
本年度は年度末に網羅的解析のデータ処理を集中的に行ったため、物品費の消費が予定より少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度で消耗品を使用する細胞培養実験や生化学実験を実行するため、未使用額を併せて使用する予定である。
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