2014 Fiscal Year Annual Research Report
マウス肝線維化を抑制する新規インテグリン抗体作用機序解明と治療応用に向けた研究
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26293174
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
横崎 恭之 広島大学, 保健管理センター, 准教授 (80210607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茶山 一彰 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (00211376)
正木 崇生 広島大学, 大学病院, 教授 (30397913)
仙谷 和弘 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (30508164)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | インテグリン / 線維化 / 抗体医薬 / 阻害抗体 / 肝硬変 / 肺線維症 / 腎硬化症 / TGF-β |
Outline of Annual Research Achievements |
初のインテグリン α8β1阻害抗体(特願 2011-537260)は、マウスの実験で明瞭な 抗線維化作用を示した。肝の胆管結紮と四塩化炭素投与の二つのモデルに加え、肺のブ レオマイシン投与モデ ルでも効果を認め(特願 2012-75147)臓器の壁を越えた。そこで本抗体が作用する対象を、各臓器共通で線維化の基本部分に働く細胞と考え、抗体と「筋線維芽細胞」の関連 を検討した。α8 鎖は前駆細胞にはなかったが筋線維芽細胞には出現し、また α8β1 由来シグナル は筋線維芽細胞に向かう分化を促進した。本研究では次の4点を期間内に完了し、医薬への展開の適否を判断計画である。1) 分化促進の機序解明 (TGFβ との関連)、2) 臓器を問わない効果の確認(腎)、 3) α8 鎖 KO マウスの線維化抵抗性、 4) ヒトの線維化に外挿できるか (臨床検体の検討)。 このうち平成26年度は、まずα8の作用にTGF-βがどの程度関与しているかを知るために、3-Dゲルでのバイオアッセイを試みたが、特に通常のアッセイとの差は見られなかった。次にα8のシグナル経路を具体化するため、種々のインヒビターを用いてシグナルの変化を検討したところ、PI3 kinase阻害剤により筋線維芽細胞への誘導が抑えられた。また、腎繊維化モデルを作成し抗体の作用を観察したところ、肝や肺と同じく抑制が見られた。さらに、これまで動物実験でみられたα8のprofibrotic作用が、ヒトの病態でも生じているかを観察するため、摘出肝におけるα8の発現を確認したところ、遺伝子レベル、蛋白レベルともに正常肝に比べ、肝炎、肝硬変において上昇していることが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の項に示したように、計画した項目について順調に結果が得られている。特に臨床検体約50例において発現亢進が確認できたことは重要な成果と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、実験動物においてα8β1を欠損させる事によって線維化が抑制できるかを確かめる。イン テグリンα8 鎖遺伝子 (Itga8) KO マウスは致死的で実験に使えない。そのためコンディショナル KO 作製用に 、Itga8 flox/flox マウスを既に入手し動物施設で飼育している。星細胞のItga8発現を消失させる交配相手と して、Pdgfrβ-Cre マウスが効率と特異性に優れる事が最近示されており、これを作出あるいは入手して交配す る。得られたマウスに線維化を誘導すると筋線維芽細胞の分化が十分でないため線維化の軽減が予測される。肝 線維化を既述の二つの方法で誘導し程度を解析する。また、星細胞の α8 鎖が消失するこのマウスでは、肺と 腎の星細胞相当細胞(血管傍細胞)でも α8が消失し、肺と腎においてもこれらが筋線維芽細胞の主要前駆細胞で あれば肝同様に線維化形成に障害が生じる。 そのため、肺(ブレオマイシン投与)と腎(尿管結紮)の線維化も、 このコンディショナル KOマウスに誘導し程度を評価する。また、線維化では悪役とされる筋線維芽細胞は、出 現を抑えると創傷治癒が障害される。そこで、皮膚創傷治癒実験をこのマウスで行う。また、申請者らは線維化 組織における α8 の発現増加を免疫染色で確認した。重要な点であるためさらに説得力ある明瞭な結果を得る べく、α8遺伝子の下流にレポーター蛍光色素遺伝子を組み込んだ Tg マウスを作製、肝の線維化を誘導し蛍光 を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は6,402円で、平成26年度助成金の0.2 %であり全体の計画の中では端数と言えるものである。研究の実態としては26年度で区切りがつき、27年度から新たな研究がスタートするわけではなく、また次年度に持ち込みも可ともことであったため、実験に対し必要性の低いものを購入して残額を消費することなどせず、必要度の高いものに限って購入した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入ですぐに消費される金額である。6,402円を使用する特段の計画はない。
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Research Products
(8 results)