2016 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム改変型ヒト多能性幹細胞を用いた肝炎ウイルス感染・複製機構の解明
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26293178
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
紙谷 聡英 東海大学, 医学部, 准教授 (30321904)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
B型、C型肝炎ウイルス(HBV, HCV)の持続感染は本邦における肝硬変・肝癌等の致死的肝疾患の最大の原因である。ウイルスのヒト選択性から、感染関与遺伝子を改変した動物モデル等でのHBVの感染実験は困難であり、HBVウイルス感染の分子機構の解明の障害となっていた。申請者らは、ヒトiPS細胞から肝幹・前駆細胞、そして成熟肝細胞を誘導する培養系を独自に開発している。また最近、ゲノム上の任意の配列を切断できるゲノム編集酵素を用いたヒトiPS細胞等の遺伝子改変法が報告され、申請者らも特定の遺伝子をノックアウトしたヒトiPS細胞由来肝幹・前駆細胞の作製に成功している。本研究では以上の成果をもとに、ウイルス受容体候補遺伝子を破壊したヒトiPS細胞由来肝細胞を作製する。得られた細胞を用いたin vitro、in vivo系の感染実験から、HBVの感染・増幅機構を解明する。 本年度までの研究によって、HBVの受容体として知られるNtcpを薬物依存的に誘導できるヒトiPS細胞を作製した。この遺伝子改変iPS細胞からヒト肝前駆細胞または成熟肝細胞を誘導し、HBVを感染させた。この系でHBVの感染や細胞内での増幅を確認しており、ヒトiPS細胞由来細胞を用いたHBV感染系を構築した。今後、ゲノム編集等によりHBVに重要な分子を欠損したiPS細胞等で同様の実験を行う予定であり、HBVの感染・細胞内増幅を制御するメカニズムの同定やそれをターゲットにした新規創薬等へつなげる。これにより困難だった遺伝子修飾されたヒト細胞を用いたHBV感染・増殖の分子メカニズム解析が可能となる。この技術は、当該分野の重要なテーマである肝炎ウイルス研究における新規の有力な研究手法になりえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B型肝炎ウイルスの受容体を発現するヒトiPS細胞由来肝臓系細胞の作製やHBVの感染・増幅計を構築し、国際誌に報告するなど順調に研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
人工ヌクレアーゼ(TALENまたはCRISPR/Cas)を用いて、HBVのAttachmentやEntryに関連が示唆されているヒト肝細胞の特異的受容体等をノックアウトしたヒトiPS細胞を作製する。得られたiPS細胞を分化させることで、特異的に遺伝子を欠損したヒト肝細胞を誘導し、HBV感染系等に用いる予定である。
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Causes of Carryover |
ヒトiPS細胞の遺伝子改変等の実験が一部来年度に持越しになっているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年までに一部できなかったヒトiPS細胞等の遺伝子改変等の試薬、培養等に用いる。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Human induced pluripotent stem cell-derived hepatic cell lines as a new model for host interaction with hepatitis B virus.2016
Author(s)
Kaneko S, Kakinuma S, Asahina Y, Kamiya A, Miyoshi M, Tsunoda T, Nitta S, Asano Y, Nagata H, Otani S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Nakauchi H, Nishitsuji H, Ujino S, Shimotohno K, Iwamoto M, Watashi K, Wakita T, Watanabe M.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 29358
DOI
Peer Reviewed / Open Access