2015 Fiscal Year Annual Research Report
動物モデルを用いた臍帯由来間葉系幹細胞による新規再生・免疫抑制療法の開発
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26293251
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長村 登紀子 (井上登紀子) 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (70240736)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹谷 健 島根大学, 医学部, 講師 (30359880)
竹谷 英之 東京大学, 医科学研究所, 講師 (90206996)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 間葉系細胞 / 臍帯 / 新生児脳性麻痺 / 新生児慢性肺疾患 / 血友病 / 肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自己または同種臍帯由来間葉系幹細胞(MSC)を動物モデルを用いて新規再生・免疫療法の開発することを目的とする。特に新生児脳性麻痺・新生児慢性肺疾患および血友病Bにおける肝炎に対するヒト臍帯由来MSCの有効性を、動物モデルを作成して解析し、作用機序の解明と臨床応用の適応拡大の可能性を探る。 ①新生児脳性麻痺に対する臍帯由来MSCの有効性の検討:これまで臍帯由来MSCは、神経系へ分化能を有すること、傷害された神経細胞株へ遊走することを確認し、H27年度は論文化を行った(Cytotherapy, 18, 229-241, 2015)。また新生児脳性麻痺の一要因である、新生児脳出血モデルを確立し、臍帯由来MSCを頸静脈投与した。現在、投与3週後のMRI画像および行動評価を実施している。In vitroにおいては、神経細胞株の損傷モデルを作成し、その培養上清(液性因子)によって、臍帯由来MSCの神経分化マーカーが上昇(誘導)することを確認した。 ②新生児慢性肺疾患に対する臍帯由来MSC移植の有効性の検討:これまで、高酸素条件下で新生児慢性肺疾患モデルを確立した。H27年度は、同マウスモデル日齢4目に臍帯由来MSCを経静脈投与し、日齢14に評価した。投与したMSCは肺毛細血管に捕捉され、投与群で損傷肺胞組織の回復、炎症性サイトカイン(IL-1beta、IL-6、TNF-alpha)の低下、抑制性サイトカイン(IL-10)の上昇およびHGFの上昇を認めた。今後、再現性の検討する。 ③血友病Bに対する臍帯由来間葉系幹細胞移植の有効性に関する研究:成人血友病B患者に多い肝炎・肝硬変モデルを確立した。H27年度は、血友病BモデルマウスにCCl4にて惹起した肝障害後にGFP-Luc遺伝子臍帯由来MSCを移植し、肝組織の病理検査を行った。肝組織にGFP陽性細胞が存在し、MSCの肝への遊走と生着が示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臍帯由来MSCは 連携産婦人科の提供者(母親)から書面同意を得て入手し、研究代表者の所属する東京大学医科学研究所(東大医科研)にてMSCを分離増幅・凍結し、所定の手続きに従って、所内外の研究者へ提供するシステムを構築した。 ①新生児脳性麻痺に対する臍帯由来MSCの有効性の検討:新生児脳性麻痺マウスモデルの作成では、これまで手技的な問題で苦労していたが、脳出血モデルを確立できた。この障害マウスの歩行距離の低下や片側脚の麻痺傾向を認め、MRIでの評価系および行動評価系も確立できたことから、予定通りの進捗状況と考えている。なお、26年度におけるin vitroにおける臍帯由来MSCの神経系への分化能と遊走能に関して論文化でき、順調に研究が進められている。一方、in vitroにおける神経細胞障害モデルを作成し、その上清やexosomeによって臍帯由来MSCの抗炎症能と神経分化能に関して、ニューロン系、グリア系マーカーの上昇で検討している。 ②新生児慢性肺疾患に対する臍帯由来MSC移植の有効性の検討:高酸素条件下で新生児慢性肺疾患モデルの作成を行うことができ、臍帯由来MSC投与によりその効果が明らかになりつつある。今後、ヒトへの投与を考慮して、最適な投与方法および投与回数の検討、由来が異なるMSCでの比較、効果と有害事象の評価項目の再検討を行う必要がある。 ③血友病Bに対する臍帯由来MSC移植の有効性に関する研究:MSCは、傷害や炎症部位へ集積することから、血友病Bマウスモデルにおいても(臨床的にも多い)肝障害モデルを作成し、臍帯由来MSCの投与を行って肝内分布を検討した。生体内イメージングおよび組織病理検査にてMSCの肝組織への生着が確認されている。さらに、肝細胞特異マーカーの検出によりMSCの肝細胞様細胞への分化を確認中である。 以上より、研究は概ね順調に進められていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、申請者、分担研究者間で定期的に情報交換を行いながら、効率よく動物モデルの作成と臍帯由来MSC投与方法およびその効果因子の同定を進めていく。 ①新生児脳性麻痺に対する臍帯由来MSCの有効性の検討:H28年度は引き続き、新生児脳出血モデルに対して臍帯由来MSCを投与することで、脳の組織学的障害、炎症反応や行動が改善するかを検討し、また、GFP/Luc導入臍帯由来MSCを用いて、生体イメージングで細胞をトレースする。また臍帯由来MSC治療効果の培養液による変化についても検討する。一方、in vitroにおける遊走能や神経系分化誘導した細胞が、標的組織/細胞と直接または間接的に接触して分泌されると考えられているexosome(エクソソーム)等を抽出し、そのmiRNAやサイトカインを含めたその効果因子の検討を進める。 ②新生児慢性肺疾患に対する臍帯由来MSC移植の有効性の検討: H28年度は、ヒトへの治療を考慮して、最適な投与方法および投与回数の検討、由来が異なるMSCでの比較、効果と有害事象の評価項目の再検討し、臨床用プロトコールの作成に役立てる。 ③血友病Bに対する臍帯由来MSC移植の有効性に関する研究:H28年度は引き続き、血友病Bマウスにおける肝障害モデルに対して、GFP/Luc導入臍帯由来MSC投与を行う。その後、時間経過を追って肝組織を採取してGFP陽性細胞の生着や肝細胞特異マーカーの発現を確認するとともに、マウス血液のAPTT測定によって凝固能の改善について検討する。 臍帯由来MSCは、現在、再生医療等製品としての製剤化(PMDAとの薬事戦略)を進めており、将来的には製剤化したものを用いて適応拡大につなげる。
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Causes of Carryover |
申請者(長村)らは、脳性麻痺モデルにおけるマウス(B6 albino)は新生児モデルであることから申請者ら自ら繁殖し、27年度は、新生児マウスの脳出血モデルを確立した。そのため、マウス購入費用に関しては、経費節約ができたが、平成28年度は新生児脳出血モデルに臍帯由来MSC投与による効果に関して、脳神経所見の解析のための病理標本作成(一部外注)費用に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は平成27年に確立した新生児脳出血モデルに臍帯由来MSC投与による効果に関して、行動評価とともに、MRI撮影、病理組織標本作成や染色を実施し、画像および組織上の変化を見極める。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Ex Vivo Expanded Allogeneic Mesenchymal Stem Cells with Bone Marrow Transplantation Improved Osteogenesis in Infants with Severe Hypophosphatasia2015
Author(s)
Taketani T, Oyama C, Mihara A, Tanabe Y, Abe M, Hirade T, Yamamoto S, Bo R, Kanai R, Tadenuma T, Michibata Y, Yamamoto S, Hattori M, Katsube Y, Ohnishi H, Sasao M, Oda Y, Hattori K, Yuba S, Ohgushi H, Yamaguchi S
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Journal Title
Cell Transplant.
Volume: 24
Pages: 1931-1943
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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