2014 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤送達に対するリンパ管の役割:転写因子FOXC2に着目したリンパ管機能解析
Project/Area Number |
26293257
|
Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
平川 聡史 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50419511)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 美香子 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 准教授 (20344351)
三浦 直行 浜松医科大学, 医学部, 教授 (40165965)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 脈管 / 薬物 / シグナル伝達 / 遺伝子改変動物 / 増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、癌微小環境におけるリンパ管が、薬物送達とクリアランスに関わる重要な因子の一つであることを解明することである。癌血管新生が、内皮細胞と壁細胞の病的変化を伴い多様な血管構築を示す一方、癌リンパ管新生の構造と機能は、いまだ不明な点が多い。申請者は、癌を始めとする病的リンパ管新生の生物学的意義を解明し、一貫して病的リンパ管の構造と機能の解明に取り組んできた。癌微小環境における薬物送達と薬物クリアランスに関する知見は、より有効な癌化学療法を創出する基盤になるものである。そこで、本申請研究では表皮特異的VEGF-Aトランスジェニック・マウス及びFOXC2+/-マウスを用いて、病的リンパ管の機能解析を行う。本研究の独創性は、新規ナノ粒子を用いて、組織内動態を生体イメージングから解明する点にある。また、本研究の重要性は、癌微小環境におけるリンパ管が、薬物送達とクリアランスに関わる腫瘍な因子の一つであることを解明することにある。 癌血管新生が、内皮細胞と壁細胞の病的変化を伴い多様な血管構築を示す一方、癌リンパ管新生の構造と機能は、いまだ不明な点が多い。そこで、本研究では週齢の異なる野生型マウスを用いて、病的リンパ管の機能解析に着手した。下肢にインドシアニングリーンを皮下注し、近赤外線検出器を用いてリンパ管造影を行った。この結果、10カ月齢の野生型マウスでは、リンパ流の明らかな鬱滞は検出されなかった。次に、週齢が一致したFOXC2+/-マウスを用いて、リンパ管造影を行った。この実験群では、野生型に比べて明らかなリンパ流の鬱滞は検出されなかった。従って、FOXC2+/-マウスでは、リンパ管の鬱滞は明確には検出されないことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用いた研究を先行して行い、リンパ管の機能を測定する評価系を構築できたからです。マウス下肢リンパ管は、成熟した個体でも2センチに満たない組織である。この組織でリンパ流を検出することは、光を用いた場合、蛍光強度と機器の感度に依存する。本研究では、インドシアニングリーンを皮下に局注することにより、リンパ流を近赤外線で検出することに取り組んだ。検出機器は、PDE(浜松ホトニクス社製)である。この方法で、マウス下肢のリンパ管を検出することが可能になった。 FOXC2+/-マウスの下肢リンパ管を造影し、明らかなリンパ流の鬱滞がないことが明らかになった。FOXC2は、リンパ管の発生を制御する転写因子の一つである。ヒトでは、FOXC2の突然変異に起因する原発性リンパ浮腫は常染色体優性遺伝であり、個体が発生した10代以降に発症することが多い。従って、マウスを用いた本研究でも、FOXC2+/-マウスは経時的にリンパ流の鬱滞を呈することが予測された。しかし、成熟個体を詳細に検討した結果、下肢リンパ流の明らかな鬱滞は検出されなかった。その理由は、2足歩行と4足歩行によるヒトとマウスの歩行様式の違いを反映していると思われる。従って、マウス下肢でリンパ流の鬱滞を測定するためには、よりリンパ管機能に負荷がかかる状態で実験系を構築しなければならないと考える。 乳房外Paget癌におけるリンパ管の形態的評価は、病理組織を観察し、リンパ管の検討を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス下肢のリンパ管は、現時点で期待通り検出できているものの、本幹を画像化できた段階である。薬物の排泄を見据えた実験モデルを構築するためには、より末梢レベルのリンパ管を画像として可視化し、その機能を評価しなければならない。従って、今後は検出感度を高める取り組みを蛍光色素、検出機器両面から取り組むことを勘案する。 成熟したFOXC2+/-マウスでは、明らかなリンパ流の鬱滞を検出することができなかった。従って、今後は成熟したコンディショナルFOXC2-/-マウスを作成し、リンパ流の鬱滞が生じるモデルの構築を検討してく。FOXC2 flox/floxマウスは、浜松医科大学医化学講座で作成された(論文未発表)。このマウスは、本研究の分担研究者である青戸一司博士より供与される予定である。FOXC2 flox/floxマウスは、Prox1-Cre ERT2マウスと交配し、リンパ管特異的なコンディショナルノックアウトマウスを作成する。成熟したマウス個体でFOXC2を不活化し、リンパ管の鬱滞を検出する予定である。Prox1-FOXC2 delta/deltaマウスでリンパ管の鬱滞を検出することができれば、薬物送達に関わるリンパ管機能を検討する上で役立つモデルを構築することができる。
|
Causes of Carryover |
平成26年度よりリンパ流を検出する評価系の構築に着手し始めた。平成27年度は、より感度が高い検出系を構築する必要があるため、次年度使用額は平成26年度より大きい。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
近赤外線による蛍光を検出するための蛍光色素の修飾及び機器開発を行う。
|