2015 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤送達に対するリンパ管の役割:転写因子FOXC2に着目したリンパ管機能解析
Project/Area Number |
26293257
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
平川 聡史 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (50419511)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青戸 一司 浜松医科大学, 医学部, 助教 (60360476)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 脈管 / 薬物 / シグナル伝達 / 遺伝子改変動物 / 増殖因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、癌微小環境におけるリンパ管が、薬物送達とクリアランスに関わる重要な因子の一つであることを解明することである。癌血管新生が、内皮細胞と壁細胞の病的変化を伴い多様な血管構築を示す一方、癌リンパ管新生の構造と機能は、いまだ不明な点が多い。申請者は、癌を始めとする病的リンパ管新生の生物学的意義を解明し、一貫して病的リンパ管の構造と機能の解明に取り組んできた。癌微小環境における薬物送達と薬物クリアランスに関する知見は、より有効な癌薬物療法を創出する基盤になるものである。そこで本研究では、表皮特異的vascular endothelial growth factor (VEGF)-Aトランスジェニック・マウス及びFOXC2+/-マウスを用いて、病的リンパ管の機能解析を行う。本研究の独創性は、新規ナノ粒子を用いて、組織内胴体を生体イメージングから解明する点にある。また、本研究の重要性は、癌微小環境におけるリンパ管が、薬物送達とクリアランスに関わる主要な因子の一つであることを解明することにある。 癌血管新生が、内皮細胞と壁細胞の病的変化を伴い、多様な血管構築を示す一方、癌リンパ管新生の構造と機能は、いまだ不明な点が多い。そこで、本研究では野生型マウス及びVEGF-Aトランスジェニックマウスを用いて、病的リンパ管の機能解析を行った。耳介部の皮膚にインドシアニングリーンを注入し、近赤外線検出器を用いてリンパ管造影を行った。この結果、野生型マウスではリンパ流のうっ滞は検出されなかったが、VEGF-Aトランスジェニックマウスではリンパ流のうっ滞が認められた。VEGF-Aは、癌微小環境で豊富に存在する液性因子の一つである。従って、本研究の研究結果を考察することにより、癌微小環境ではリンパ流がうっ滞している可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
癌微小環境を模した遺伝子改変マウス、具体的にはVEGF-Aトランスジェニック・マウスを検討することにより、リンパ管の機能的変化を検出することが出来たため、進捗状況はおおむね順調と考える。VEGF-Aは、従来血管内皮細胞に選択的に作用する増殖因子として捉えられていた。しかし、VEGF-Aはリンパ管内皮細胞にも多様な作用を及ぼすことが、近年の研究成果から明らかになり始めた。培養細胞を用いた研究結果に基づき、本研究ではVEGF-Aの過剰発現型マウスで研究を行っている。その研究成果として、リンパ管の構造を明らかにするとともに機能的解析を進め、VEGF-Aトランスジェニック・マウスのリンパ流のうっ滞を見出したことは、本研究の特筆すべき点である。さらに、リンパ管の形態学的特徴が過剰に発現するVEGF-Aにより、どのように変化するかどうかを検討し、解剖学的情報を得ながら生理学的特性を明らかにすることは、リンパ管の機能と病的変化を理解する上で、極めて重要と思われる。本研究の進捗は、癌を始めとする疾患理解に繋がるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ管の発生は、増殖因子の作用とともに転写因子によって制御されている。FOXC-2は、リンパ管の発生に関わる転写因子であり、弁の形成を司る必須の蛋白質である。本研究では、増殖因子によるリンパ管機能の病的変化を検討するとともに、癌微小環境におけるリンパ管の発生を検討するために、FOXC-2の遺伝子改変マウスを用いる。具体的には、FOXC-2のノックアウト・マウスを用いて、リンパ管の病的変化を分析する。FOXC-2のノックアウト・マウスは、胎生致死である。本研究では、個体として成熟したFOXC-2+/-マウスを用いてリンパ流の生理学的観測を行ったが、リンパ流の明らかなうっ滞を見出すには至らなかった。そこで、リンパ管の疾患特異的な変化を解析する上で、新たなモデル作りが必要であることを認識し、FOXC-2コンディショナル・ノックアウト・マウスに基づいた分析系を構築することを目指す。具体的には、リンパ管特異的Creリコンビナーゼ・トランスジェニック・マウスとFloxed FOXC-2マウスを交配し、タモキシフェンによる誘導システムを用いて、時間的及び組織特異的にFOXC-2遺伝子を破壊する。その上で、本研究では癌微小環境を模した実験系を構築し、対照群との比較を行いつつ、FOXC-2がリンパ管の構造と機能に及ぼす影響を明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
誘導型FOXC-2マウスをリンパ管特異的Creマウスと交配し、FOXC2/Creマウスを作成する必要があるから。また、FOXC2/Creマウスを用いてリンパ管の機能解析を行う必要があるから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
誘導型FOXC2マウスをリンパ管特異的Creマウスと交配し、FOXC2/Creマウスを作成するためには、二世代飼育する必要がある。この期間に5ヶ月を要する。さらに、個体が実験可能な週齢へ成長するためには1ヶ月を要する。従って、実験可能なFOXC2/Creマウスを作成するためには、合わせて6ヶ月を要する。しかる後に必要マウスの個体数を揃え、リンパ管造影を行う。
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