2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞周期進行指標の放射線感受性評価への応用と染色体異常頻度に及ぼす背景因子の解明
Project/Area Number |
26293270
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
三浦 富智 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20261456)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 悠 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (00722472)
葛西 宏介 弘前大学, 保健学研究科, 講師 (50400148)
吉田 光明 弘前大学, 学内共同利用施設等, 教授 (60182789)
坂井 晃 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (70284221)
中田 章史 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (70415420)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | バイオドシメトリー / 血液搬送 / 抗凝固剤 / 分裂頻度 / 糖尿病 / 動脈硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.病院からの血液搬送の最適化 緊急被ばく医療における生物学的被ばく線量評価(バイオドシメトリー)において、血液輸送時の血液凝固に起因する細胞回収率の低下が解析を困難にする場合があった。本年度は、採血後の血球数および分裂指数に及ぼす抗凝固剤、血液保存温度、電離放射線被ばくの有無、および保存時間の影響を検討した。ヘパリン採血では凝固抑制が不十分であり、4℃保存下では非照射血液およびX線照射血液ともに白血球数および血小板数の顕著な減少や血液凝固が認められた。また、4℃で保存した3Gy照射ヘパリン血において、未成熟血小板分画(IPF)が保存時間に対して正の相関を示した。一方、EDTA採血では、全血培養時にメタフェーズを得ることができなかったが、分離リンパ球培養ではヘパリン採血と比較して、分裂指数の低下は認められなかった。 2.慢性炎症を伴う患者血液の提供 昨年度、バイオドシメトリーに影響する背景因子を解明するため、本研究の研究対象となる糖尿病および動脈硬化患者の血液を提供していただくのが困難な状況にあった。今年度は、北海道循環器病院(札幌市)に通院および人間ドック受診者のうち、Ⅱ型糖尿病患者(早朝空腹時血糖値:126mg/dL以上、随時血糖値:200mg/dL以上、HbA1C:6.1%以上)15~20名、動脈硬化症患者(頸動脈血管壁厚:1.0mm以上、ABI検査:0.9未満、CAVI検査:陽性)15名、および健常者(早朝空腹時血糖値:110mg/dL以下、HbA1C:6.0%以下)15名より血液を提供していただく共同研究が成立した。今後、解析を加速させて、バイオドシメトリーに影響を及ぼすと考えられる糖尿病や動脈硬化症、ゲノム不安定性について解析を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成27年度、バイオドシメトリーに影響する背景因子を解明するため、本研究の研究対象となる糖尿病および動脈硬化患者の血液を提供していただくのが困難な状況にあった。その理由としては、弘前市近郊では高齢者の血液しか入手できなかったこと、さらに、採血量が約40mlと多くの血液を必要とすることから、血液を提供していただくボランティアの確保が困難であったことがあげられた。そこで、平成28年度、複数の病院に交渉した結果、北海道循環器病院(札幌市)が共同研究に合意し、血液提供を承諾していただける体制が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
放射線治療の副作用として糖尿病などの慢性炎症が増悪因子となること、火傷や傷を負った傷病者が被ばくした場合には放射線影響が顕著に増大することなどが報告され、被ばく線量評価において炎症の影響を考慮する必要があることが推測される。そこで、慢性炎症を伴う疾患である糖尿病や動脈硬化症の患者様の血液を対象とし、放射線被ばくにより誘発される染色体異常頻度の調査および我々が提唱している新規被ばく線量評価指標「細胞分裂進行指数」に及ぼす慢性炎症の影響を解析する。さらに、血清中のサイトカイン、DNA修復に関与するATMタンパク質の発現量、尿中低分子化合物の網羅的解析を行い、放射線個人感受性に影響を及ぼす背景因子を探索する。また、解析の時間を要することから、解析要員を確保し、解析の高速化を図る。
|
Causes of Carryover |
昨年度、バイオドシメトリーに影響する背景因子を解明するため、本研究の研究対象となる糖尿病および動脈硬化患者の血液を提供していただくのが困難な状況にあった。その理由としては、弘前市近郊では高齢者の血液しか入手できなかったこと、さらに、採血量が約40mlと多くの血液を必要とすることから、血液を提供していただくボランティアの確保が困難であったことがあげられた。そこで、今年度、複数の病院に交渉した結果、北海道循環器病院(札幌市)が共同研究に合意し、血液提供を承諾していただける体制が整った。そのため、必要となる旅費や消耗品の執行額が少なくなり、次年度使用額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
血液検体受理および処理のために北海道循環器病院(札幌市)を6~7回訪問する必要があるため、国内旅費として約30万円を必要とする。また、血清サイトカインの測定キットとして約40万円、染色体解析費用として約20万円、解析要員謝金として約70万円、その他、国際学会成果発表旅費として約30万円を執行する予定である。
|
Research Products
(6 results)
-
-
[Journal Article] Analysis of chromosome translocation frequency after a single CT scan in adults.2016
Author(s)
Abe Y, Miura T, Yoshida MA, Ujiie R, Kurosu Y, Kato N, Katafuchi A, Tsuyama N, Kawamura K, Ohba T, Inamasu T, Shishido F, Noji H, Ogawa K, Yokouchi H, Kanazawa K, Ishida T, Muto S, Ohsugi J, Suzuki H, Ishikawa T, Kamiya K, Sakai A.
-
Journal Title
J Radat Res
Volume: 57
Pages: 220-226
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
[Presentation] 低線量γ線照射による細胞遺伝学的線量評価用線量応答曲線の作製2016
Author(s)
阿部悠, 三浦富智, 吉田光明, 氏家里紗, 黒須由美子, 柳亜希,津山尚宏, 川村文彦, 藤岡来実, 稲葉俊哉, 神谷研二,坂井晃
Organizer
日本放射線影響学会第59回大会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2016-10-28
-
[Presentation] バイオドシメトリーにおける抗凝固剤および血液保存温度の影響2016
Author(s)
三浦富智、藤嶋洋平, 金浜朱希, 川森詩織, 成田房恵, 萩野繁樹, 有吉健太郎, 吉田光明, 葛西宏介, 山田恭吾, 真里谷靖
Organizer
日本放射線影響学会第59回大会
Place of Presentation
JMSアステールプラザ, 広島県広島市
Year and Date
2016-10-26 – 2016-10-28