2015 Fiscal Year Annual Research Report
食道癌ゲノムおよびエピジェネティクス制御解析による分子治療開発
Project/Area Number |
26293298
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松原 久裕 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20282486)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井ノ上 逸朗 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (00192500)
阿久津 泰典 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00375677)
村上 健太郎 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (40436382)
田村 裕 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50263174)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 外科 / 癌 / 遺伝子 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
予後不良の消化器癌である食道癌に関し、手術標本、郭清リンパ節、内視鏡生検検体から次世代シーケンサーを利用した全ゲノムシークエンスおよびエクソームシークエンスを行い、食道癌における原発巣およびリンパ節転移における遺伝子配列とその変異を明らかにする。同時にヒストンのアセチル化、miRNAなどエピジェネティクス制御についても解明することにより、癌転移機構の解明および抗がん剤、放射線治療感受性について解明し、個々の状態にあった適切な治療を行う個別化医療の一助となる新たな分子、その制御について明らかにすることにより新たな分子治療を提案する。 食道癌切除標本の全ゲノムシーケンスおよび食道癌切除標本、転移リンパ節のエクソームシーケンスを継続的に行いその精度についてさらに検証を加えた。食道癌切除標本および同一標本における正常食道粘膜から抽出したDNAそれぞれの全ゲノム配列を決定し、食道扁平上皮癌患者の腫瘍の切除標本、生検検体、血液検体からそれぞれDNA、RNAを抽出し、Illumina HiSeq2500を用いた全エキソーム解析、mRNA解析を行った。 DNAの解析ではこれまで食道扁平上皮癌ではTP53遺伝子をはじめとする遺伝子変異が報告されているが、今回の解析においてもTP53の変異がそのまま最多であり、次いでZNF750が多いことを確認した。 TP53について、それぞれの変異位置においてDNAとRNAの変異アレルの検出頻度を比較すると、多くの症例で変異をもつアレルが優位に発現していることがわかった。また、同様の解析を検出された全体細胞変異に対して行うと、大部分の遺伝子において変異アレルはRNAとして発現していない一方で、TP53を始めとする細胞周期や アポトシースといった癌抑制に関連する遺伝子においては変異アレルが優位に発現しているものがあることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道扁平上皮癌におけるエクソームシーケンスにより、DNAの解析ではこれまで食道扁平上皮癌ではTP53遺伝子をはじめとする遺伝子変異が報告されているが、今回の解析においてもTP53の変異がそのまま最多であり、次いでZNF750が多いことを確認した。ZNF750の変異がTP53の次にい多いことが発見され、この分子につき現在、食道癌における増殖、浸潤、転移などその悪性度に関する重要性に関し、食道癌培養細胞をも引いて解析を進めている。 また、食道扁平上皮癌においてはそれぞれの変異位置においてDNAとRNAの変異アレルの検出頻度を比較すると、多 くの症例で変異をもつアレルが優位に発現していることがわかり、食道癌細胞ではアレル特異的な遺伝子発現が存在し、さらに癌の発生、維持に有利な遺伝子変異を もつアレルを発現している細胞が選択されている可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
変異を多く認めたP53癌抑制遺伝子、ZNF750などの癌関連遺伝子群のアンプリコンシーケンスの解析を進める。p53, p16, EGFR, Her2, K-Ras, Bcl-2, Bax等癌においてこれまで報告された重要な遺伝子群ならびに当科で食道の浸潤、転移に関与することを明らかにしてきたPrdx-1, Fra-1等の癌関連遺伝子および全ゲノムシーケンスおよびエクソームシーケンスから得られた新規癌関連遺伝子をパネル化し、多検体における大規模なスクリーニングをおこなう。パネル化にはHaloPlex ターゲットエンリッチメントシステム(Agilent)を用い、最大5Mb(200,000以上のアンプリコン)までのゲノム領域をシングルチューブで増幅すると共に、最大96検体を同時に解析していく。 また、食道癌切除標本、転移リンパ節におけるCpGメチル化検出のためにバイサルファイトシーケンス、ヒストン修飾、クロマチン構造を明らかにするためにChIPシーケンスをおこなう。タンパク質のDNAへの結合と癌転移、浸潤の関連が予測される場合は対象タンパク質をターゲットとしたChIPシーケンスも必要に応じて追加する。バイサルファイト後のアライメントはBISMARK、ChIPシーケンスのピーク検出はMACSにより解析する。 さらにこれまでの解析で明らかになった候補遺伝子に関して、食道癌細胞での発現を確認し、さらにそれらの遺伝子の細胞への導入、siRNAによるノックダウンなどの手法により当該遺伝子の食道癌細胞での役割について明らかにする。また、マウスin vivoモデルにて抗腫瘍効果などについて確認する。また、同様にこれら候補遺伝子の導入、ノックダウンによる抗癌剤あるいは放射線感受性の変化について解析する。
|
Causes of Carryover |
アレル特異的発現について、Loss of Heterozygosityの影響を排除するためにCopy number variationの解析を追加するため全ゲノム上のsingle nucleotide variationについて、それぞれのサンプルごとにどの程度の頻度で置換をもっているかを網羅的に調べる必要があり、Illumina社のHumanOmniExpress-24というチップを用いた解析を検討中です。受注はチップ1枚単位となり、1枚で48検体の解析が可能となる。解析が年度末となり、検体を増やして一度に行った方が効率的、経済的であるため、新年度になってから纏めて行うこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
アレル特異的発現について、Loss of Heterozygosityの影響を排除するためにCopy number variationの解析を追加するため全ゲノム上のsingle nucleotide variationについて、それぞれのサンプルごとにどの程度の頻度で置換を持っているかを網羅的に調べる必要があり、Illumina社のHumanOmniExpress-24というチップを用いた解析を検討中です。受注はチップ1枚単位となり、1枚で48検体の解析が可能となる。腫瘍部と正常部のペアで9例、腫瘍のみの解析を追加し、解析を行う。1検体あたり33,300円(税抜)で、腫瘍部の解析を含め平成28年度の経費を含めて経費を執行する
|