2014 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的蛋白質解析を利用した膵胆道癌早期診断法の確立とその分子機構解明に向けた挑戦
Project/Area Number |
26293299
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宮崎 勝 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70166156)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保木 知 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (50571410)
吉富 秀幸 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (60375631)
加藤 厚 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70344984)
清水 宏明 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80272318)
大塚 将之 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90334185)
賀川 真吾 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (90507302)
高野 重紹 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20436380)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 癌 / 外科 / プロテオーム |
Outline of Annual Research Achievements |
3人の膵癌切除標本より得られた癌部・非癌部のprotein profileを2-DE(アガロース2次元電気泳動法)及び2D-DIGE(蛍光ディファレンシャル2次元電気泳動法)を行い、それぞれのcaseにて比較検討した。その中で、3症例すべてのcaseにおいて、癌部で非癌部より高発現している蛋白を選び、それらの候補蛋白のgelを切り出し、ゲル内消化を行い、最後に精製・同定を行ったところ候補蛋白が36spot認められた。次に、2-DEで得られた結果の再現性を確認する上で、さらに他の7症例の癌部・非癌部におけるそれらの同定された蛋白発現をWestern blotで確認した。すると、その内、5種類の蛋白が8割以上の症例で癌部の高発現を確認した。 その1つの蛋白であるCofilin-1については近年、いくつかの癌種で浸潤や遠隔巣への転移への関わりが報告されている。さらに、膵癌細胞においてはZebrafishを用いた研究によりCofilin pathwayの中でCofilinのリン酸化に関与するLIM kinaseを抑えることにより血管新生および転移に対する抑制効果を示す報告も認められてきている。 そこでまず、候補蛋白であるCofilinの癌組織における局在と発現の強度を免疫組織学的に検討し、これらの候補蛋白と臨床病理学的因子との相関を解析し、また転移形式における蛋白の発現差異(局在・強度)があるかを検討した。59例の膵癌切除標本において染色強度Weak 15例、Strong 44例では年齢、性別、分化度、リンパ節転移の有無では有意差を認めないものの、Strong例では有意にstage IV症例が多く、術後の再発形式ではStrong症例ではWeak症例と比較し有意に遠隔転移の率が高かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の実験に関しては、主に候補蛋白の同定、validation、さらにcofilin蛋白の免疫染色法による膵癌組織における蛋白発現の強弱と臨床病理学的特徴との相関を解析した。研究の進捗状況としては候補蛋白の選定、免疫染色、および今年度の主要な実権系である血中の免疫複合体の測定系の確立は既に行っており、予定されていた研究や準備が行われているため、おおむね順調に進展していると考えられる。 今後、さらに今年度、次年度を通じ、研究を計画通り発展させていきたい。さらに免疫染色に関しては現在の症例数からさらに増やし、臨床での薬剤耐性との関連も追加検討していく予定である。 外部への情報、成果の発信については、現在まで少しずつ積み上げてきたデーターをまとめ、今年の日本消化器病学会をはじめとして、様々な学会報告を開始していく予定である。論文投稿に関しては今年度の終盤を目安に海外のjournalへ投稿を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)癌高発現候補蛋白(抗原)に対する自己免疫反応により生成される自己抗体、さらにはそれらの複合体(抗原抗体複合体)をdetectするsandwich ELISAの系を作製し、その測定値が再現性のあるものかを確認する。 2)血中の候補蛋白関連物質の存在量測定および血中マーカーとしての感度・特異度の検定。まず候補蛋白関連物質の膵癌と健常人においての測定値の違いを検討する。さらに、膵炎患者検体を含めた3群間において検討し、膵癌特異的なマーカーとして感度、特異度について注目していく。 3)血中の候補蛋白関連物質測定値と臨床病理学的因子、転移形式、予後との関連についての検討。2)の研究内容に引き続き、それぞれ候補蛋白の測定値と臨床病理学的因子、転移形式および予後との関連を調べ、さらに平行して行われる原発巣の免疫組織学的検討と血中の測定値の相関が認められるかの検討を行う。 4)原発巣~血管内循環~遠隔巣に対する転移メカニズムへのアプローチ。膵癌細胞株を用いて特異的siRNAおよびLIM kinaseの阻害剤を用いることでCofilinの膵癌細胞における機能解析を行い、浸潤、転移巣への生着、転移巣でのself-renewal capacityおよび増殖能についての検討を行う。 5)免疫不全マウスにYFPをlabelingしたマウスの膵癌細胞株を用いorthotopic transplantation膵癌モデル, およびintraportal vein injectionによる肝転移モデルマウスを用い、CTCの数、p-CofilinのEMTさらにCofilinのMETへの関与をCofilin pathwayの活性化を抑制した際に実際に転移能が抑制されるかをin vivoで確認しcancer progressionにおける転移へのmechanismを解明していく。
|