2015 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤耐性遺伝子に関するmicroRNAを用いた悪性脳腫瘍に対する分子治療の研究
Project/Area Number |
26293324
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
田宮 隆 香川大学, 医学部, 教授 (50252953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三宅 啓介 香川大学, 医学部附属病院, 講師 (00398033)
岡田 真樹 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (40457346)
小川 大輔 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (70524057)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬剤耐性遺伝子 / MGMT / MicroRNA / 脳腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回我々は薬剤耐性遺伝子を標的とするmicroRNAを同定し、microRNAの関与する脳腫瘍の薬剤耐性取得機構を明らかにし、化学療法や放射線療法に対する治療効果の向上をめざしている。 今年度は、MicroRNAのMGMT mRNA 3’-UTRへの直接結合の確認を行っている。 MicroRNAとMGMTのmRNAが直接結合していることを確認するため、プラスミドベクター上のMGMT mRNA 3’-UTRのmicroRNA結合部位を変異させたMGMT発現ベクター(mutMGMT)を用い発現させ、mutMGMTがmicroRNAにより発現抑制されないことを示した。この結果より、microRNAがmRNAに直接結合して翻訳抑制されていることが証明された。現在、microRNAによる細胞への影響(増殖能、遊走能、アポトーシスなど)の評価を行っている。 さらに、近年、膵がんや乳がんにおいて、 (pro) renin receptor ((P)RR) 発現の上昇によるWnt receptor complexを介したprogenitor cellからのがん化が報告されている。神経膠腫において、Wnt/β-catenin signaling pathway を介した (P)RRの発現とその役割について検討し、grade II~IVのgliomaで(P)RRが発現し、悪性化に伴い(P)RR発現が亢進した。 (P)RR発現量はKi-67 labeling indexと正の相関を示し、(P)RR発現量の多い群は生存期間が短かかった。また、(P)RRはWnt/β-catenin signaling pathwayを介して細胞増殖に関与し、knockdownすることで、 Wnt/β-catenin signaling pathwayの発現を低下させ、アポトーシスを誘導すると考えられた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の目的の一つに、microRNAがmRNAと結合することによって翻訳抑制する性質を利用して、薬剤耐性遺伝子であるMGMTの発現量を抑制することにより、脳腫瘍のテモゾロマイドに対する感受性を増加させ、より効果的な化学療法の治療効果の向上がある。 その候補となるmicroRNAを絞り込み、実際に薬剤耐性遺伝子MGMTの発現抑制をきたすmicroRNAを同定できた。次に、実際にどれぐらい感受性向上に効果があるかを調べるために、microRNAがMGMTのmRNAに結合して、直接作用していることを示すのは非常に重要であり、本年度の研究成果からMGMTの3’-UTRに結合していることを確認できた。これにより、他の物質を介さず、microRNAが直接MGMTの発現量を調節していることが示され、臨床応用において重要なデータが得られた。 また、細胞の癌化や増殖に関係している新たな物質として(pro) renin receptor ((P)RR)についてもグリオーマで検討を行っており、新しい分子標的治療として期待ができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中のmicroRNAが細胞に与える影響(増殖、遊走、アポトーシス)を継続して評価していく。さらに、このmicroRNAによる脳腫瘍細胞株のテモゾロマイド感受性向上の確認をin vitroにおいて行う。具体的にはリポフェクション法を用いて一過性にmicroRNAを脳腫瘍細胞株に過剰発現させ、MGMTが発現抑制された状態で、テモゾロマイドに対する感受性が向上しているかを評価する。このリポフェクション法がうまくいかない場合には、CMVレンチウィルスを用いてmicroRNAを安定発現させた細胞株を樹立し、同様のテモゾロマイドに対する感受性試験を行う。 In vitroにおけるmicroRNAのMGMT発現抑制効果を確認できた時点で、レンチウィルスを用いてmicroRNAを安定発現させた脳腫瘍患者細胞株を免疫不全マウス(Athmic nude)の脳内に定位装置を用いて移植する。この脳腫瘍モデルにPBSを腹腔内投与したコントロール群において、microRNAがホストマウスの生存期間に悪影響を及ぼさないことを確認しつつ、テモゾロマイド腹腔内投与群においてはin vivoにおいてもmicroRNAが脳腫瘍細胞のテモゾロマイド感受性を向上させ、ホストマウスの生存期間延長を来たすことを確認する。感受性の確認方法としては、Caplan-Meier法を用いた生存期間の比較や、一定期間ごとの脳組織切片を用いた体積比較を予定している。 (pro) renin receptor ((P)RR) に関しては、knockdownあるいはmicroRNAを用いて、 Wnt/β-catenin signaling pathwayの発現を低下させ、増殖抑制効果やテモゾロマイドに対する感受性の増加などの検討を行う予定である。
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