2014 Fiscal Year Annual Research Report
デスモイド腫瘍の変異解析と新規治療アルゴリズムの確立にむけた研究
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26293334
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦川 浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60584753)
小澤 英史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60635572)
莚田 泰誠 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医化学研究センター, グループディレクター (40392146)
生田 国大 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40732657)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルゴリズム / 医療・福祉 / 臨床 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.デスモイド腫瘍における遺伝子変異の特定:Sporadicに発症するデスモイド腫瘍について、生検あるいは手術で採取された腫瘍検体からDNAを抽出し、特異的プライマーを用いて蛍光ダイレクトシークエンシングによりβ-カテニンの変異部位を特定した。40例のデスモイド腫瘍に対して実施し、wild type、41A、、41I、45F、45Pの5種類に類別できた。 2.遺伝子変異型と手術成績の関連:14例の手術治療を実施したデスモイド腫瘍患者において、β-カテニンの遺伝子変異型と手術治療成績の関連を解析した。45Fの変異型は1例のみであり、その1例のみが再発した。他の遺伝子変異型を有するデスモイドはすべて無再発であった。 3. 遺伝子変異型とメロキシカム薬物治療成績との関連:33例のメロキシカム治療を実施したデスモイド腫瘍患者において、β-カテニンの遺伝子変異型とメロキシカム治療成績との関連を解析した。45Fの変異型を示すデスモイドは有意にメロキシカム治療抵抗性を示した(P=0.017)。他の遺伝子変異型と治療成績に関連はなかった。 4. 遺伝子変異型と抗がん剤治療成績との関連:15例のメソトレキセートとビンブラスチンによる化学療法を実施したデスモイド腫瘍患者において、β-カテニン遺伝子変異型と本抗がん剤治療成績との間に関連性は見いだせなかった。 5. 細胞株の樹立:デスモイド腫瘍患者から採取した腫瘍から3種の細胞培養に成功した。3種はwild type、41A、45Fの変異型を有しており、それらのWnt-β-カテニンシグナル経路下流の遺伝子発現パターンを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の項目すべてにおいて、研究計画として提出した内容と同じように、順調に研究が進んでいる。 1.デスモイド腫瘍における遺伝子変異の特定、変異型別の腫瘍原性・薬物応答の解明、手術・各種薬物治療効果と変異部位との関連:遺伝子変異型の特定は順調に症例数を重ねている。変異型と薬物応答の関連はメロキシカム、メソトレキセート+ビンブラスチンともに英文雑誌に受理されている。また変異型と手術治療成績との関連を解析がすみ、英文雑誌に投稿中である。これまで報告のきわめて少ない変異型(41I)の特定もできている。 2.細胞株の樹立、遺伝子・タンパク発現プロファイリング:3種の異なる変異型を有するデスモイド腫瘍の細胞培養に成功した(wild type、41A、41F)。これらのβ-カテニンの下流にある遺伝子群の発現パターンを解析した。 3.薬物治療効果とゲノムワイド関連解析:理化学研究所筵田との施設間共同研究の締結を済ませた。また本研究計画について、両施設の院内倫理委員会ですでに承認されている。現在、デスモイド患者に対して研究説明を行い、同意を得た上で採血、血液保存を進めている。 4.新規治療薬の発見:神経遺伝情報分野(研究協力者大河原、大野)と共同し、薬物リポジショニング法により既存の中から、デスモイド腫瘍培養細胞に効果を示す候補薬剤をしぼった。現在in vivoのデスモイド腫瘍モデルがないため作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次の各項目については、症例数を増やすことで研究を継続する予定である。1.デスモイド腫瘍における遺伝子変異の特定 2.遺伝子変異型と手術成績の関連 3. 遺伝子変異型とメロキシカム薬物治療成績との関連 4. 遺伝子変異型と抗がん剤治療成績との関連 新規治療薬の発見はドラッグレポジショニング法で既存薬からしぼられた薬剤について、in vivoでの効果を解析する。まずは世界でも報告のないβ-カテニン遺伝子変異トランスジェニックマウスによるデスモイド自然発症モデルの作成を試みる予定である。 臨床試験については、「遺伝子変異部位による前向き薬物治療臨床試験のデザインと実施」「前向き手術治療臨床試験のデザインと実施」を行う。遺伝子変異型と薬物治療奏功性の関連解析結果に基づいて、前向き臨床試験を実施し、結果を検証する。遺伝子変異型によって、術前に手術治療成績良好と判断される患者に限定して前向き手術臨床試験を実施する。 薬物治療効果とゲノムワイド関連解析については血液検体の集積を進め研究分担者の筵田と解析を進め、討論を重ね、結果の吟味・考察を行う。介在する種々のパラメータの推定と結果の解釈を進め、薬物奏功率関連マーカー遺伝子の特定および疾患関連マーカー遺伝子の特定を行う。
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Causes of Carryover |
1.動物実験が始まっていないため、その額を使用していない。またその評価に使用する解析試薬・キットを使用していないため。 2.ゲノムワイド関連解析について、研究計画を倫理委員会で通したところであり、今後解析を進めるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.β-カテニン遺伝子変異マウスとそれによるデスモイド自然発症マウスの作成、デスモイド自然発症マウスに対するドラッグレポジショニング法で絞り込んだ薬剤の抗腫瘍効果を評価する。それらの実験における動物・解析試薬・キットに使用する。 2.理化学研究所(筵田)との各種薬物治療におけるゲノムワイド関連解析を実施する。
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