2015 Fiscal Year Annual Research Report
デスモイド腫瘍の変異解析と新規治療アルゴリズムの確立にむけた研究
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26293334
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 佳弘 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50332698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦川 浩 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座講師 (60584753)
小澤 英史 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60635572)
生田 国大 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (40732657)
濱田 俊介 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (90747289)
莚田 泰誠 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医化学研究センター, グループディレクター (40392146)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アルゴリズム / 医療・福祉 / 臨床 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
1.デスモイド腫瘍における遺伝子変異の特定、変異型別の腫瘍原性・薬物応答の解明:Sporadicに発症するデスモイド腫瘍について、生検あるいは手術で採取された腫瘍検体からDNAを抽出し、特異的プライマーを用いて蛍光ダイレクトシークエンシングによりβ-カテニンの変異部位を特定した。平成27年度にはさらに20例のデスモイド腫瘍に対して実施し、wild type、41A、45F、45Pの4 種類を特定した。変異型別細胞株に対するメロキシカムの効果をin vitroで検証し、Wnt/β-catenin pathwayの下流にある遺伝子の発現変化を評価した(Hamada, Nishida, Cancer Med 2016 Feb)。 2.手術・各種薬物治療効果と変異部位との関連解析: (1)治療成績と遺伝子変異型との関連解析:手術、メソトレキサート+ビンブラスチンの各治療成績とβ-カテニンの遺伝子変異型との関連を明らかにし、それぞれ論文化した(Oncol Lett, in press)(Int J Clin Oncol 2015 Dec)。メロキシカムの治療成績については既発表である33例に加えて、50例以上において検証した。 (2)薬物治療効果に関するゲノムワイド関連解析:インフォームドコンセントを取得後、患者血液よりDNAを抽出し、研究分担者理化学研究所筵田に送付。まずはHLAと薬物治療成績の関連解析を開始した。 3. 新規治療薬の効果の検証:動物実験による:デスモイド型線維腫症患者より採取した腫瘍組織によるマウスin vivoモデルを作成(PDX model: patient derived xenograft model)。Drug repositioning 法により同定された薬物Xを4週間投与した。今後評価予定。 4. デスモイド型線維腫症宿主側要因と薬物応答との関連解析:薬物応答が患者側要因で決まる可能性を考慮し、患者血清中の各種サイトカインと薬物応答の関連を解析した。症例数が少ないため今後増やす予定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記の項目すべてにおいて、研究計画として提出した内容と同じように、順調に研究が進んでいる。 1.デスモイド腫瘍における遺伝子変異の特定、変異型別の腫瘍原性・薬物応答の解明、手術・各種薬物治療効果と変異部位との関連:遺伝子変異型の特定は順調に症例数を重ねている。変異型と手術治療成績との関連を解析がすみ、英文雑誌に受理された。樹立したwild type、41A、45Fの各変異型の細胞を使用し、メロキシカムに対する反応性、Wnt/β-catenin pathway下流遺伝子の発現を解析、結果を報告した(Cancer Med 2016)。 2.薬物治療効果とゲノムワイド関連解析:理化学研究所筵田との施設間共同研究の締結後、患者からインフォームドコンセントを取得(40人以上取得済み)し、血液を採取、当研究室にてDNAを抽出した。筵田研究室に送付し、まずはHLAと薬物治療成績との関連の解析を始めている。症例数が増えたらゲノムワイド関連解析を開始する。 3.新規治療薬の発見:神経遺伝情報分野(研究協力者大河原、大野)と共同し、薬物リポジショニング法により既存の中から、デスモイド腫瘍培養細胞に効果を示す候補薬剤をしぼった。現在in vivoのデスモイド腫瘍モデルとして、患者から採取したPDXモデル(patient derived xenograft model)を作成し、同定された薬剤Xの効果を解析している。別のモデルとしてβ-カテニン遺伝子(CTNNB1)のexon 3だけをノックアウトした動物モデルを武藤研究室から譲り受ける契約を締結。組み替えDNA実験計画書の当院IRBで承認済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次の各項目については、症例数を増やすことで研究を継続する予定である。 1.デスモイド腫瘍における遺伝子変異の特定 2.遺伝子変異型と手術成績の関連 3.遺伝子変異型とメロキシカム薬物治療成績との関連 4.遺伝子変異型と抗がん剤治療成績との関連 新規治療薬の発見はドラッグレポジショニング法で既存薬からしぼられた薬剤について、in vivoでの効果を解析する。Patient derived xenograftモデルと武藤研究室から譲り受けるβ-カテニンexon3ノックアウトしたデスモイド自然発症マウスによる解析予定である。 臨床試験については、「遺伝子変異部位による前向き薬物治療臨床試験のデザインと実施」「前向き手術治療臨床試験のデザインと実施」を行う。遺伝子変異型と薬物治療奏功性の関連解析結果に基づいて、前向き臨床試験を実施し、結果を検証する。遺伝子変異型によって、術前に手術治療成績良好と判断される患者に限定して前向き手術臨床試験を実施する。 薬物治療効果とゲノムワイド関連解析については研究分担者の筵田とまずはHLAと薬物治療成績との関連解析を進め、次にゲノムワイド関連解析を実施し、結果の吟味・考察を行う。介在する種々のパラメータの推定と結果の解釈を進め、薬物奏功率関連マーカー遺伝子の特定および疾患関連マーカー遺伝子の特定を行う。
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Causes of Carryover |
1.動物実験が始まったばかりであり、その額を使用していない。またその評価に使用する解析試薬・キットを使用していないため。 2.ゲノムワイド関連解析について、研究計画を倫理委員会で通し、サンプルを研究分担者筵田に送付したところであり、今後解析を進めるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.β-カテニン遺伝子変異マウスとそれによるデスモイド自然発症マウスの作成、デスモイド自然発症マウスに対するドラッグレポジショニング法で絞り込んだ薬剤の抗腫瘍効果を評価する。 2.理化学研究所(筵田)との各種薬物治療におけるゲノムワイド関連解析を実施する。
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