2015 Fiscal Year Annual Research Report
不治の病である運動ニューロン疾患に対するiPS細胞による新規治療法の開発
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26293335
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
平田 仁 名古屋大学, 予防早期医療創成センター, 教授 (80173243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 真吾 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 連携ユニットリーダー (20415186)
栗本 秀 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (70597856)
山本 美知郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90528829)
岩月 克之 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90635567)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 運動麻痺 / 機能再建 / iPS細胞 / 再生治療 / 細胞治療 / 神経系前駆細胞 / 神経新生 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的:本研究の目的は運動ニューロン疾患に対する’iPS細胞を活用した真の意味でのmotoneuron replacement therapy’の確立 研究計画: 1. iPS細胞による異所性神経節形成技術の確立 愛知医科大学神経内科よりヒトIPS細胞及びマウスiPS細胞の提供を受け,embrioid bodyへと分化誘導した上でマウス末梢神経内に移植をし,生着を確認した。生着したiPS細胞は、ラット末梢神経内へ移植された脊髄胎児由来神経系前駆細胞と同様に脊髄様組織を形成し,移植後1ヶ月後より軸索伸長を開始し,3ヶ月にかけて再生軸索数が大幅に増加し、麻痺筋を再支配できることを確認した。先行して実施しているラットモデルでは形成された脊髄様組織がアストロサイト、オリゴデンドロサイト、マクロファージ,シュワン細胞などを含み,神経細胞はシナプスを形成して高度なネットワークを1年以上に亘り維持していることを確認した。 2. iPS細胞由来神経系前駆細胞による麻痺筋制御の実証 坐骨神経内iPS細胞移植実験を行い,機能的電気刺激により制御可能であることを実証した。再支配された麻痺筋では神経筋接合部が新たに形成されるのみならず,オリジナルの神経筋接合部の再支配も広範に生じ,また、筋紡錘の再形成も生ずることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実現には1.ヒトiPS細胞からの運動ニューロンの安定的確保、2.移植運動ニューロンの確実な神経筋接合部形成、3.生体の変化に応答して行動を創発するFES制御プログラムの実現,という3要件が満たされる必要がある.これまでの研究でiPS細胞にはクローン間で遺伝子発現にかなりのバラつきがあり,運動ニューロンをターゲットとする本課題に適当なクローンを確保することは容易ではない。このため1の段階で当初かなり苦戦したが,愛知医科大学の岡田研より技術指導を受け,マウスiPS細胞,ヒトiPS細胞の双方で安定的な分化誘導と移植細胞の生着、組織化を実現することがでいた。又,ex vivoモデルでの神経新生も可能となり,げっ歯類モデルにおいて末梢神経内に移植した神経系前駆細胞により脊髄様組織が構築されるメカニズムの解析も進んできている。2に関しては当初の想定を遥かに超えた中枢型ニューロンネットワークが構築されていることも明らかとなった。当初は機能的電気刺激によりすべての運動を制御する想定で研究を計画していたが,誘導された脊髄様組織がニューロンネットワークを構築する事実により、反復刺激を通じた学習の可能性も期待できる。 3に関しても大きな進歩があった。我々が提唱するtacit learningは生物の”複合制御により行動を創発する能力”を人工的に実現するためのアルゴリズムであり,未経験の自体に柔軟に対応することを目的に開発をされてきた技術である。一方で従来のtacit learningでは過去の記憶の活用に劣る欠点があった。そこでtacit learningにニューラルネットワークのモジュールを組み合わせ過去の経験も活用して判断を高度化できるアルゴリズムの開発が進められており、これを用いて運動制御を行う研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により当初想定していた以上に高度な神経組織がiPS細胞由来神経系前駆細胞の末梢神経内移植により実現できていることが明らかとなった。このため、最終年度にあたる平成28年度には当初予定されていた実証実験に加え,神経ネットワークの構築及び機能メカニズムの解析を更に深化させ、この技術による新たな機能再建法の可能性をも模索する。 1 大型動物による分散制御技術の実証:当初げっ歯類により実証実験をする予定であったが,人工知能の搭載など技術的なハードルが高く,実証実験には大型動物を用いる必要があることが明らかとなった。そこで,ミニ豚を対象動物に選定し,ブタ末梢神経内にヒトiPS細胞由来神経前駆細胞を生着させ、脊髄様組織を構築する技術をex vivoモデルで確立する。次に、ミニ豚では運動ニューロン疾患モデルが存在しないため従来げっ歯類でも用いてきた坐骨神経麻痺、横隔神経麻痺モデルを作成し,in vivoでの実証実験を実施する。歩行制御実験では下田らがロボットの歩行制御用に開発したtacit learningを利用して麻痺筋の活動制御を実証する。呼吸に関しては新たに制御アルゴリズムの開発を進める必要がある。 2. 脊髄様組織形成と神経ネットワーク構築の機序解明に関する研究 末梢神経内神経新生のメカニズムに関してはex vivoモデルを活用してwhole mount insitu hybridizationにより詳細に遺伝子発現の変化を解析する。また、運動学習による神経ネットワークの発達を実証するためにoptogeneticsの技術を導入し,げっ歯類モデルでtacit learnigによる運動制御により末梢神経内に形成された脊髄様組織がネットワークを発達させていることを実証する。
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Causes of Carryover |
in vivoスタディを研究計画書ではげっ歯類モデルを用いて実施する予定となっていた。しかし、27年度に実施をしたところ,とりわけ呼吸麻痺モデルではラット,マウスともに横隔神経のサイズが極めて小さく、最も細いニードルを用いても細胞移植を実施できず,また、呼吸機能のモニタリングも困難なことが明らかとなった。歩行機能評価に関する研究は実施可能であり,これにより小型動物でのコンセプトの実証は完了しているので,よりヒトに近い大型動物での研究に変更して実施することとした。動物実験審査委員会に研究計画の変更を申請し,また、必要となる機材や人員の確保を現在進めており,研究資金も27年度分を繰り越して大型動物を用いる細胞治療の基盤技術開発を準備した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の目的はiPS細胞より誘導した神経系前駆細胞の末梢神経内移植技術の確立と、人工知能による運動制御に関する基盤技術を確立することである。本年度は以下の研究を実施する。(ex vivo modelによる末梢神経内神経新生のメカニズム解析)ドナー神経はげっ歯類とミニ豚の双方を利用し,whole mount in situ hybridization法にて神経申請の過程を詳細に解析しミニ豚での分化誘導技術を確立する。(in vivo study)胸腔鏡視化に低侵襲細胞移植をする技術を確立し,呼吸機能評価を経時的に実施するとともに組織学的評価も行って目標とする効果が得られているかを検証する。(optogeneticsを用いる神経回路網形成の実証)開発を進めているoptogeneticsのツールを活用し,異所性神経節に対して適切に刺激をすることで神経回路生網形成を促進で切ることを実証しする。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Administration of umbilical cord blood cells transiently decreased hypoxic-ischemic brain injury in neonatal rats.2015
Author(s)
Hattori T, Sato Y, Kondo T, Ichinohashi Y, Sugiyama Y, Yamamoto M, Kotani T, Hirata H, Hirakawa A, Suzuki S, Tsuji M, Ikeda T, Nakanishi K, Kojima S, Blomgren K, Hayakawa M.
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Journal Title
Dev Neurosci.
Volume: 37
Pages: 95-104
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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