2015 Fiscal Year Annual Research Report
腹膜播種はなぜ治療困難なのか?‐マイクロRNAとエクソソームに焦点を当てた解析
Project/Area Number |
26293360
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00452392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬淵 誠士 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00452441)
木村 正 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90240845)
橋本 香映 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90612078)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / マイクロRNA / パクリタキセル耐性 / 腹膜播種 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌が腹膜播種として再発した場合、外科切除はまず不可能であり、多くの場合、頼みの綱である抗がん剤治療も一時的にしか奏功しない。「なぜ腹膜播種した癌細胞は治療不可能なのか?」、その原因がマイクロ RNA (miRNA)によるepigenic な刺激によるものではないかを検討することが本研究の主目的である。 具体的には、癌細胞に①低酸素刺激、②抗がん剤持続暴露を行い、発現変動したmiRNAの網羅的解析を通じて、いわゆる‟腹膜播種関連miRNA”を同定し、その役割を検討し、かつ、それを標的とした新しい分子治療の可能性を提示したいと考えている。 平成27年度は前年度よりのIn Vitro実験、In vivo 実験および卵巣癌組織検体におけるmiRNAプールの作成を引き続いて行った。具体的にはパクリタキセル(PTX)耐性卵巣癌細胞株を作成した。卵巣癌細胞株SKOV3ip1 とHeyA-8 に対して、PTX 10nMと低濃度から培養を開始、3か月かけて徐々にPTX の濃度を挙げて継続培養し、300nM でも細胞死が誘導されないPTX 耐性株を作成した。これらの作成した細胞株を用いて、PTX耐性化により変動するmiRNA の網羅的解析をTaqman miRNA microarrayを用いて行い、親株と比べて、発現が有意に減少しているmiRNA をいくつか見いだした。その中でも、miR-194 に焦点をあてて、さらなる解析を進めた。miR-194の強制導入により、In vitro cell proliferation assay でパクリタキセル耐性株における耐性が一部解除されることを確認した。さらにin silico 解析を行い、miR-194の標的として、MDM-2 (Mouse double minute 2 homolog) を抽出した。MDM-2 は癌抑制作用を有するp53 の活動を抑制的に調整する。すなわち、パクリタキセルの持続暴露により、miR-194の発現が減少した結果、MDM-2の発現が増強し、p53の発現が抑制され、パクリタキセルに対する耐性を獲得するという新しい耐性化のメカニズムを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に立案した通りに、パクリタキセルの耐性に関わるmiRNA を同定し、その一つについては役割解明に至っている。今後、論文投稿予定である。現時点では、実験は計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のTaqman miRNA microarrayでいくつかの候補miRNA を抽出している。引き続いて、それらのmiRNAの機能解析を行っていく。また、当初の計画通り、何故、腹膜播種の過程で卵巣癌細胞において、miRNA のgain または loss が起こるのかに関して、腹水中に存在する骨髄由来細胞が放出するエクソソームに焦点をあてた解析を行う。まず、多量の腹水を有する進行卵巣癌から腹水を採取し、骨髄球のマーカーであるCD11b抗原を標識として、マグネットビーズを用いて、骨髄由来細胞を回収し、その細胞の培養上清よりエクソソームを抽出する。現在、卵巣癌細胞株HeyA-8 を用いて、高純度エクソソーム抽出のプロトコール作成に成功している。抽出したエクソソームよりRNAを抽出し、Taqman miRNA microarrayで“腹膜播種関連miRNA”の発現を検討する。コントロールにはSV-40を導入して不死化させた卵巣上皮細胞を用いる。エクソソームの癌細胞への取り込みは、緑色色素PKH67 (Sigma)で蛍光標識したエクソソームを卵巣癌細胞株の培養上清に添加し、48時間後、共焦点蛍光顕微鏡を用いて、その取り込みを確認する。さらにエクソソーム添加後の細胞を回収し、1.腫瘍形成能、2.接着能、3.運動能、浸潤能、4.抗がん剤耐性の亢進がエクソソーム添加によって、誘導されるかどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、大量の腹水より、骨髄由来細胞を抽出する。そして、大量の細胞からのエクソソームの抽出作業を行う。そのためには、CD11b抗原を標識したマグネットビーズなど、大量の消耗品が必要である。したがって、平成28年度に使用する物品費を考え、控えて使用した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬や器具(主に、物品費)の購入に充てる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Efficacy of raloxifene hydrochloride for the prevention of health care problems in patients who undergo surgery for endometrial cancer: a multicenter randomized clinical trial.2015
Author(s)
Nakamura, K. Sawada, K. Sugiyama, M. Mabuchi, S. Hisamatsu, T. Nishio, Y. Ito, K. Kimura, T. Kamiura, S. Morishige, K.
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Journal Title
Int J Gynecol Cancer
Volume: 25(2)
Pages: 288-295
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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