2015 Fiscal Year Annual Research Report
難治性嗅神経障害の病態生理解明とその診断・治療法開発のための分子生物学的研究
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26293366
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 健二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40334370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 周 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00555865)
有田 誠 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, チームリーダー (80292952)
野村 務 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (20228365)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鼻科学 / 嗅覚医学 / 嗅神経障害 / 神経再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. カロリー制限が嗅神経上皮の細胞動態に与える影響の解析:2ヵ月齢雄C57BL6マウスをコントロール食と36%カロリー制限下に1ヶ月飼育した後、メチマゾール投与で嗅粘膜傷害を惹起した。さらに2ヶ月飼育を行い鼻腔組織を採取、嗅粘膜を組織学的に解析した。その結果、カロリー制限群では傷害後の嗅上皮再生がコントロール群に比べ不完全であった。この背景にある分子機構を探るため、コントロール食とカロリー制限食で1ヶ月維持したマウスより嗅粘膜を採取し、DNAマイクロアレイ法にて遺伝子発現の差異を網羅的に解析した。カロリー制限群ではIL-6等の炎症性サイトカインが優位に上昇しており、これが組織再生に影響した可能性が考えられた。 2.嗅神経上皮の加齢・傷害・再生過程における組織脂肪酸組成変化の網羅的解析 2ヵ月齢雄C57BL6マウスにメチマゾールによる嗅粘膜傷害を惹起した。コントロール群(非傷害群)と傷害後14日の神経再生の盛んな時期に嗅粘膜を摘出し、脂肪酸代謝物の一斉定量分析システム(メタボローム解析システム)でアラキドン酸、EPA,DHA,及びそれぞれに由来する約250種類の代謝物を測定した。その結果、傷害後2週間の時点では抗炎症作用を持つ脂肪酸代謝物が有意に増加していた。傷害後の嗅神経再生過程に脂肪酸がメディエーターとして関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カロリー制限が嗅神経上皮の細胞動態に及ぼす影響の解析については組織学的解析がほぼ終了し、現在分子生物学的解析に移行している。本年度中に学術誌に投稿できる見込みである。 嗅神経上皮の加齢・傷害・再生過程における組織脂肪酸組成変化の網羅的解析については実際に神経上皮再生期に脂肪酸組成の変化があることが明らかとなった。今後分子機構の解析や臨床応用への橋渡し研究など大きな展開が期待できる状況となった。 新規ドラッグデリバリーシステムを用いた神経上皮の傷害制御・再生促進に関する解析については論文が学術誌に受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
1.嗅神経上皮の傷害・再生過程における遺伝子、蛋白発現の網羅的解析においては次世代シークエンサーを用いて非傷害時と傷害後再生期の遺伝子発現の網羅的解析を行い、データが出たところである。今後は再生期に発現が増加または低下するいくつかの遺伝子群にターゲットを絞って蛋白発現の定量、組織内分布を調べ、また遺伝子欠損マウスを用いた嗅粘膜の解析を行う予定である。 2.嗅神経上皮の加齢・傷害・再生過程における組織脂肪酸組成変化の網羅的解析においてはn-3脂肪酸合成酵素トランスジェニックマウス(FAT-1マウス)および12/15-LOX欠損マウス、及び飼料にn-3脂肪酸を添加して飼育するマウスに嗅粘膜傷害を惹起させ、組織の再生の評価及びその過程における遺伝子、蛋白、脂肪酸組成の網羅的解析を行う予定である。さらに、レゾルビン、プロテクチンなどn-3脂肪酸由来の生理活性代謝物を直接投与することによる嗅神経上皮組織の保護・治療効果についての検討を行う。 3.ヒト嗅裂気流解析においては慢性副鼻腔炎をはじめとする様々な鼻腔形態の変化が嗅裂気流に及ぼす影響を順次シミュレーション解析する予定である。
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Causes of Carryover |
気流解析ソフトウェアを購入予定であるが、手続きの関係上購入が次年度になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月に上記ソフトウェアを購入予定である。また研究の進展に伴って遺伝子解析費用と動物飼育費用が増大しており、次年度使用額の一部はこれに充てる予定である。
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Research Products
(12 results)