2015 Fiscal Year Annual Research Report
生理活性物質の動的均衡制御とリアルタイムイメージング技術開発による緑内障治療研究
Project/Area Number |
26293375
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
谷原 秀信 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (60217148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 俊洋 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00317025)
岩尾 圭一郎 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (30549118)
高橋 枝里 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (60622602)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生理活性 / 生体分子 / 緑内障 |
Outline of Annual Research Achievements |
眼内環境における生理活性物質の動的均衡とリアルタイムイメージング(real-time imaging; RTI)技術の開発により、緑内障病態解明を踏まえた治療研究を目指している。(1)網膜神経節細胞(RGC)軸索流のRTIによる緑内障視神経障害の病態解明 (2)房水流出路の前眼部OCT装置を用いたRTI技術による手術治療の解析 (3)緑内障手術に関連した結膜創傷治癒における炎症細胞挙動のRTI評価 (4)房水流出路の細胞成分でのアクチン骨格を可視化するRTI技術による病態解明などの多面的なアプローチを展開した。 難治緑内障である血管新生緑内障やぶどう膜炎緑内障における手術に対する抵抗の原因が、房水中炎症性サイトカイン濃度の上昇に由来するという仮説が浮かびあがった。これは、房水流出路のRTIで証明された漏出点の経時的収束が、過剰なサイトカインによる創傷治癒で閉鎖されていく状態が示唆された。生理的房水流出路については、房水中に含まれるRhoリガンドとなる生理活性物質が眼圧制御機構に深く関わることが、Rho-ROCKシグナルの阻害薬を用いた臨床研究で証明された。他方、ステロイド緑内障に対してROCK阻害薬が有効であることは我々の研究で解明されていたが、アクチン細胞骨格のRTI技術を用いて、ステロイドによる細胞骨格のクロスリンク構造が誘導され、機能異常を呈することが明確に解析することができるようになり、アクチン細胞骨格の脱重合によって、ステロイド誘導性変化を解消するROCK阻害薬の奏功機序と平仄の合うことが解明され、ステロイド緑内障に対する治療の位置付けを大きく進展させた。 また、結膜創傷治癒の炎症細胞の挙動のRTI技術の開発とRGC軸索流のRTI技術の開発にも成功した。 総括して、RTI技術を応用することで緑内障治療の理解を深める研究の基盤を構築する重要な成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
我々は、本研究計画において、眼内環境(特に房水)における生理活性物質の動的均衡とリアルタイムイメージング技術の開発によって、緑内障の病態解明を踏まえた治療研究を目指した。今年度の成果において、我々は、房水中のサイトカイン濃度が緑内障手術に対して重要な影響を与えていることを、厳格なスタディデザインで証明することができた。さらに、詳細な奏功メカニズムについては、動物実験と臨床研究を組み合わせることで、多面的な解析を行うことができ、これらはIOVS, PLoS Oneなどの一流学術雑誌に論文業績として発表することができた。さらに、我々の開発した緑内障手術(線維柱帯切除術)の房水流出経路のリアルタイムイメージング技術が、臨床的に有効な手段であることが解明されたことは特筆すべきである。 さらに、結膜創傷治癒における炎症細胞挙動や網膜神経節細胞の軸索流のリアルタイムイメージング、房水流出路の細胞成分におけるアクチン細胞骨格の可視化を用いたリアルタイムのライブイメージング技術による病態解明などの多面的なアプローチは、我々のリアルタイムの「可視化」技術の応用が、緑内障研究にとって、きわめて重要な役割を果たすことが証明されたと考えている。今後、これらの成果を臨床面で応用していくことで、次世代型緑内障手術治療戦略が一新されるものと考えることができ、高く評価できるだけの実績を成し遂げたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえて、平成28年度は、本研究計画の最終年度に相当することから、リアルタイムイメージングの「可視化」技術を、さらに臨床面へとフィードバックする研究を幅広く展開することを予定している。具体的には、前眼部OCTを用いた緑内障手術後の房水流出路についての解析では、房水吸収の場となっている濾過胞の定量的解析技術の開発による臨床研究を計画している。特に、難治緑内障における緑内障手術に対する抵抗性を詳細に解明するために房水中サイトカイン濃度の変化のデータを踏まえて、さらに詳細な臨床研究によって、多様な臨床背景要因が手術成績を不良にするメカニズムについて詳細な解明を行いたい。またその観点から、より良き手術成績を目指して、薬物治療によって、結膜線維芽細胞や線維柱帯細胞における増殖や分化転換、機能修飾などをどこまで制御できるのかを基礎研究で解析して、将来的な新たな緑内障治療概念の確立へと結びつけていきたい。特に、眼内環境(房水)中の生理活性物質による動的均衡の重要性を明らかにするためには、結膜線維芽細胞や線維柱帯細胞と相互的な影響を生じる重要な細胞成分として、マクロファージなどの単球系炎症細胞が想定されるので、これらの炎症細胞に対するサイトカインの影響をリアルタイムイメージング技術を用いて解析し、これらをエピジェネティクス修飾薬や代謝拮抗薬がどう制御するのか、詳細な分子メカニムズを解明していきたい。
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[Journal Article] In vivo imaging of axonal transport of mitochondria in the diseased and aged mammalian CNS.2015
Author(s)
Takihara Y, Inatani M, Eto K, Inoue T, Kreymerman A, Miyake S, Ueno S, Nagaya M, Nakanishi A, Iwao K, Takamura Y, Sakamoto H, Satoh K, Kondo M, Sakamoto T, Goldberg JL, Nabekura J, Tanihara H.
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
Volume: 112
Pages: 10515-10520
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Histone deacetylase inhibitor attenuates TGF-β2 induced human conjunctival fibroblast activation.2015
Author(s)
Futakuchi A, Inoue T, Fujimoto T, Kuroda U, Inoue-Mochita M, Takahashi E, Shobayashi K, Ohira S, Kojima S, Tanihara H.
Organizer
The Annual Meeting of the Association for Research in Vision and Ophthalmology (ARVO)
Place of Presentation
Denver, Colorado, USA
Year and Date
2015-05-03 – 2015-05-07
Int'l Joint Research
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