2015 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類モデルを用いたドルーゼン生成機序の解明と予防薬の開発
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26293377
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
岩田 岳 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 分子細胞生物学研究部, 部長 (90374157)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝田 淳 帝京大学, 医学部, 教授 (10239262)
下澤 律浩 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 霊長類医科学研究センター, 研究員 (50300786)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 医歯薬学 / 外科系臨床医学 / 眼科学 / 眼生化学・分子生物学 / ドルーゼン |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢黄斑変性症は中心視野が障害される難治性の眼疾患である。病態初期にドルーゼンが蓄積する網膜の環境や分子メカニズムは明らかにされていない。我々は生後2年でドルーゼンが黄斑部に観察される遺伝性のカニクイザルと加齢によるドルーゼン生成個体の比較を行ってきた。病理学的解析によってヒトに類似するドルーゼン組成であることが明らかとなり、網膜色素上皮細胞の形態、貪食能、タンパク分解能などが著しく低下していることも明らかになった。さらに遺伝性カニクイザルの家系について全エクソーム解析、全ゲノム解析を実施したところ、染色体1番の広い領域の複数の遺伝子変異がドルーゼンの発症に関与していることが明らかになった。本研究はドルーゼンが生成される黄斑部の環境を分子レベルで解明し、ドルーゼンの生成を遅延あるいは抑制する方法を考案することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを用いた全ゲノムシークエンスを行い、全ゲノム情報を用いてドルーゼンと相関する領域を再度検証した。全エクソーム解析とは異なり、全ゲノム情報を用いた連鎖解析によって、染色体1番の広い領域にドルーゼンとの強い相関が発見された。この中に発見された複数の遺伝子変異が網膜色素上皮細胞の機能障害をもたらすと考えられる。これらの遺伝子変異は全エクソーム解析の結果と一致していた。遺伝子領域以外でのゲノム中の大きな欠損、反復配列は見つかっておらず、遺伝子領域における複数遺伝子中のアミノ酸置換とイントロン2か所における挿入(大きさ不明)が原因と考えられる。これらの変異体をそれぞれ、あるいは一度に全て網膜色素上皮細胞株(ARPE19)において強制発現させることによって、ドルーゼン個体から得られた網膜色素上皮細胞(RPE細胞)の状態と比較検討している。疾患個体から得られたRPE細胞のこれまでの培養実験から、上皮系細胞からの離脱、細胞接着能の低下、貪食能の低下、オートファジー機能の低下などを観察している。また、変異体を強制発現しているプライマリーRPE細胞とドルーゼン個体から得られたRPE細胞の遺伝子パターンの遺伝子発現とRNA発現の解析結果についても比較検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究事業中に新たな重篤個体が発見されており、これらの個体は生後1歳で黄斑部にドルーゼンが観察される。これらの重篤個体は数が少なく、他のドルーゼン個体よりも進行が早く、ドルーゼン数が多い特徴があり、遺伝的な要因が考えられる(生活環境は全ての個体について一定であるので)。重篤個体の重点的な全ゲノム解析によって、ドルーゼン個体の中でも特に重篤に現れる個体と相関する遺伝子を探索している。ドルーゼン個体の黄斑部における電顕像からRPE細胞間に間隙が生じていることから、これらを阻害する薬の効果について、変異体を強制発現しているRPE細胞とドルーゼン個体から得られたRPE細胞を用いて評価している。
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Causes of Carryover |
平成27年度に計画していた変異体の機能解析について、相関する変異体遺伝子数が増加しために、細胞実験などの費用を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
網膜色素上皮細胞(RPE細胞)にそれぞれの変異体あるいは変異体をまとめてトランスフェクションし、病態個体から直接得られたRPE細胞と比較検討する。比較内容は細胞骨格、細胞接着、細胞貪食作用、細胞オートファジー機能、細胞発現プロファイルなのである。
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[Journal Article] Congenital Achromatopsia and Macular Atrophy Caused by a Novel Recessive PDE6C Mutation (p.E591K).2015
Author(s)
Katagiri S, Hayashi T, Yoshitake K, Sergeev Y, Akahori M, Furuno M, Nishino J, Ikeo K, Tsunoda K, Tsuneoka H, Iwata T.
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Journal Title
Ophthalmic Genet.
Volume: 36
Pages: 137-144
DOI
Peer Reviewed
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