2015 Fiscal Year Annual Research Report
長期の心肺補助を可能とするポータブル緊急生命維持装置の実用化研究
Project/Area Number |
26293384
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯山 隆 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20302789)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長期心肺補助 / 緊急生命維持 / フォンビルブランド因子 / 2段昇圧 / 血液ポンプ |
Outline of Annual Research Achievements |
急性呼吸窮迫症候群や急性心不全といった救急症例に対し体外式膜型人工肺(ECMO)や経皮的心肺補助装置(PCPS)を用いることが多いが、高流量・低揚程型の遠心ポンプでは人工肺や回路の圧力損失を考慮すると不利な条件で運転せざるをえない。 本研究では高揚程・低流量でも高い特性を持たせることを目的にシーケンシャルフローポンプ(SFP)を独自に設計し、SFPを組み込んだ小型・軽量な緊急生命維持装置(ELSS)を開発中である。SFPは2段階昇圧と呼ぶ新たな昇圧機構や、通常の遠心ポンプと流入口・流出口が逆に配置されていることにより人工肺との接続が簡易的かつ小型化に有利な特徴を持つ。 現在、開発中のSFP3次モデルについてはインペラーの上下バランスの問題や動圧軸受の改良により比較対象とするbiopumpと比較し溶血指数(NIH)が7.6倍程度まで低減できて来ており、さらに改良すべく数値流体解析により溶血原因部位の特定を行った。解析にはANSYS15.0を使用し、結果としてSFPにおける2段階昇圧構造の部位において、溶血の原因となるようなせん断応力が閾値である400Paを超える部位を特定することができた。 せん断応力を低減することはフォンビルブランド因子マルチマーの減少を抑えることに寄与するのでこの部位におけるせん断応力が閾値を超えないような構造にし、来年度の動物実験に向けて改良を行っている。 人工肺および中空糸の抗血栓性を向上させるための生体親和性高分子修飾膜に関しては、生体的合成モノマーであるMPCポリマーにシリコーンと親和性の高い疎水性モノマーに加え共有結合性モノマーの3者の共重合体を作成し、中空糸膜や血液回路表面に対して物理-化学吸着する表面コーティング法を開発し、血小板の活性化が低減する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
比較的細いカニューレを用いる経皮的心肺補助(PCPS)において基本的に高流量・低揚程型の通常の遠心ポンプで駆動することは回転数が高くなり不利な条件で運転せざるをえないことから、本研究では高揚程・低流量でも回転数を低く抑えられる2段階昇圧と呼ぶ新たな昇圧機構を持つシーケンシャルフローポンプ(SFP)を提案した。 設計開発したSFPは通常の遠心ポンプに比較して低回転で運転可能な点や通常の遠心ポンプと流入口・流出口が逆に配置されていることにより人工肺との接続が簡易的かつ小型化に有利な特徴を持つ。 一方で比較対象とするbiopumpと比較し溶血指数(NIH)が7.6倍程度存在し、ポンプ回転数が低減できたのに比較して、溶血特性はさらに改良が必要である。 数値流体解析により溶血の原因となるようなせん断応力が閾値である400Paを超える部位がSFP内の2段階昇圧構造付近に存在することが判明したため改善に注力している。 フォンビルブランド因子マルチマーは溶血発生よりも早期に敏感に減少し始めるため、長期使用を目指した心肺補助の実現のためにもポンプ構造の改良を今後とも進めていく計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
細いカニューレを用いる経皮的心肺補助(PCPS)において高揚程・低流量でも回転数を低く抑えられるシーケンシャルフローポンプの改良設計を継続する。フォンビルブランド因子マルチマーの断片化を低減するためにはせん断応力の低減が不可欠なので、数値流体解析によりポンプ構造の改良を繰り返すことで目的達成を目指す。
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Research Products
(8 results)