2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26293423
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アデノウイルス / 口腔がん / 腫瘍 / 溶解 / ARE-mRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、腫瘍細胞、特に口腔がん細胞では増殖可能で最終的には細胞を溶解し、正常細胞では増殖できず何の影響も与えない腫瘍溶解アデノウイルスを開発することである。アデノウイルスのE4領域にコードされているタンパクは、ウイルスの増殖に必須で、ARE-mRNAを核外輸送・安定化することによりウイルスを複製に導く。そこで、E4を欠損したアデノウイルス(AdΔE4)でも、あらかじめARE-mRNAが核外輸送・安定化しているがん細胞では増殖でき、ARE-mRNAが核内にある正常細胞では増殖できないと考えた。本研究ではこのウイルスの口腔がんに対する腫瘍溶解効果を検討することを目的とする。 本年度は、まず口腔がん細胞に対するAdΔE4の増殖効率及び細胞死効果を検討した。HSC3、Ca9.22、SAS等の口腔がん細胞と、HGF等の口腔正常細胞にAdΔE4を感染させ、増殖ウイルス数を確定した。その結果、正常細胞に比べて口腔がん細胞の方が効率よくAdΔE4が増殖することがわかった。さらに、同じ細胞を用いてAdΔEが増殖後に引き起こす細胞死の活性を検討した。その結果、ウイルス増殖効率と比例して、がん細胞の方が正常細胞より効率的に細胞死が誘導されることが明らかになった。 次に、現在世界で唯一臨床応用されている腫瘍溶解アデノウイルスONYX-015とAdΔEとの腫瘍溶解効果を比較した。その結果、使用した口腔がん細胞全てで、ONYX-015よりもAdΔEの方がウイルスの増殖効率が高く、また細胞死誘導活性もAdΔEの方が成績が良かった。従って、我々が開発しているAdΔEはONYX-015よりも有効な腫瘍溶解ウイルスであることが示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、我々が開発中の腫瘍溶解アデノウイルスの口腔がんに対する効果を培養細胞を用いてin vitroで解析した。比較的悪性度の高いHSC3やSAS細胞で効果が見られ、悪性度が低いとされているCa9.22細胞でもその効果が確認でき、予想以上に口腔がんに対して効果があることが明らかになった。また既存の腫瘍溶解ウイルスONYX-015と比較してもその効果は遜色なく、AdΔE4は有望であることが示せた。これらの研究は、当初の研究計画に即して行われ、ほぼその計画通りに結果が出せた。従って、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、腫瘍溶解アデノウイルスの効果を動物を用いてin vivoで解析する。 1. ヌードマウスに移植した口腔がんに対する効果:ヌードマウスの皮下にHSC3、SASなどの口腔がん細胞を移植し、できた腫瘍にアデノウイルスを投与することにより腫瘍溶解効果を検討する。時間経過とともに変化する腫瘍の大きさをグラフにし、コントロール(ウイルスが入っていない溶液を投与した群)と比較して、AdΔEの腫瘍溶解効果を決定する。 2. 臨床応用を想定した検討:実際にAdΔEが臨床応用された時を想定して、臨床応用に必要なことが想定される以下のような様々な条件を解析する。(1)舌部等、口腔内に腫瘍を形成しAdΔEが効果を持つか検討する。(2)投与後の全身各部のウイルスの存在を検討する。(3)ウイルス投与の間隔を検討する。(4)投与法の検討。尾静脈から静脈を介してウイルスを注入し腫瘍溶解効果が十分得られるか検討する。(5)ONYX-015とin vivoでの効果を比較する。 3. 腫瘍で増殖したウイルスの確認:1で縮小した腫瘍を摘出し、増殖したウイルスの存在をウイルスタンパク(ヘキソンタンパク)の抗体を用いて、免疫組織化学的に解析する。
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Causes of Carryover |
本年度前半は、研究室の耐震工事等の理由で研究の開始が大幅に遅れた。また、我々の開発したウイルスと既存の腫瘍溶解アデノウイルス(ONYX-015)との生産効率を比較するために、従来のpfu (plaque forming unit)法でおおまかな結果が出たが、正確なウイルス生産効率比較のために、途中でウイルス粒子測定法に変更を余儀なくされた。そのため、ウイルス粒子測定法を習得するのに時間がかかり、かつそのためのキットや資料等を購入するために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、昨年度に引き続きウイルス粒子測定法で各ウイルスの生産効率を解析し、正確な値を出し、それぞれを比較する。そのために、ウイルス粒子測定キットの購入等を予定している。そしてさらに、今年度の計画に加えて、できればヌードマウスに移植し増殖したウイルスの粒子測定も、この手法でやりたいと考えている。
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