2014 Fiscal Year Annual Research Report
頭蓋顎顔面領域高頻度疾患の原因究明から病態発症機序解明への最先端研究戦略
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26293436
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
田中 栄二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (40273693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井本 逸勢(橘逸勢) 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (30258610)
泰江 章博 徳島大学, 大学病院, 講師 (80380046)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 遺伝子疾患 / TALEN / CRISPR/Cas |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、頭蓋顎顔面領域の形態形成に影響を及ぼす原因遺伝子不明の疾患をターゲットに、次世代シーケンサーを用いた解析を柱に原因遺伝子探索を行い、新規原因遺伝子を同定すると共に、人工ヌクレアーゼによる同定変異部位の機能解析から、病態形成機序を解明することを目的とする。 平成26年度は非症候性多数歯欠損症家系の唾液サンプルからゲノムDNAを抽出し、歯牙欠損症の原因遺伝子の全てのエクソンのシーケンスをサンガー法にて行ったところ、Msx1遺伝子のエクソン2にフレームシフト変異を検出した。マウスMsx1遺伝子配列中、変異検出部位近傍に標的配列を設定し、マウス1細胞期胚においてマイクロインジェクションにてCRISPR/Casシステムを適用した。胎生16.5日に胚を摘出し、Msx1ノックインマウス様表現型の確認、ならびにゲノムDNAを抽出し、標的配列のシーケンスを行った結果、歯牙欠損症を有する家系に、過去に報告のないフレームシフト変異がMsx1の3’末端領域に検出された。本変異はMsx1遺伝子最下流のMH6領域に影響を与えるため、同領域の5’側にgRNA標的配列を設定し、マイクロインジェクション法によるCRISPR/Casシステムを適用し、胎生16.5日に胚を摘出したところ、12胚中6胚で口蓋裂ならびに歯の発生異常を認めた。 さらに、Fgf10遺伝子を標的とするTALEN mRNAを細胞質に導入した結果、Non-homologous end joining (NHEJ)率は25~50%であった。さらに約10%に四肢発生の異常を認めた。次にCRIPSR/CasシステムをFgf10遺伝子に対して適用したところ、90%以上の胚でNHEJが確認され、四肢発生異常は40~100%の胚で認められた。Pax6遺伝子に対してCRISPR/Casシステムを適用した場合にも、ほぼ同様の効率で眼の発生異常を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の実施計画として挙げた、検体ならびに臨床情報収集と次世代シーケンサーを用いた疾患関連変異の検証については、8例のエクソーム解析に加えて、16例の孤発例(新生突然変異やX連鎖性劣性遺伝などの遺伝形式を想定)に対する既知病原性遺伝に特化したターゲットリシーケンスを行い、計24症例から5例で、疾患に関連すると考えられる責任遺伝子変異候補を検出できた。 また、多数歯欠損症を呈す家系の疾患関連遺伝子を探索したところ、既知原因遺伝子であるMsx1にフレームシフト変異が検出された。しかし、転写因子であるMsx1遺伝子変異の過去における報告は、全てDNA結合領域であるホメオドメイン内かその上流で、今回検出されたフレームシフト変異は3’末端近傍であった。そこで、疾患関連変異を検証するため、それにより機能を失うMsx1タンパク質中最もC末端に存在する機能領域であるMH6に影響を及ぼすようgRNAを設定し、CRISPR/Casシステムをマウス1細胞期にて適用した。結果、Msx1ノックアウトマウス同様、口蓋裂ならびに歯の発生異常を認め、シーケンスによりMH6領域に影響を及ぼす変異が導入されていることも確認され、患者より検出された変異は疾患関連変異であることが示唆された。これは、疾患関連変異であることの証明のみならず、CRISPR/Casシステムを用いることで、in vitroでの機能解析が困難な場合、in vivoにて検証可能であることを示している。 以上より、平成26年度に予定した研究計画はほぼ実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も引き続き、検体の収集・選別を行い、次世代シーケンサーを用いた疾患関連変異の検証のための一連の解析を終了する予定である。また、In vitro解析についても平成26年度に引き続き、検出変異遺伝子のクローニング、in situ hybridizationによる発現パターン解析、強制発現系による解析などを継続する。さらに、In vivo機能解析として、検体の収集によって検出された変異から、TALENあるいはCRISPR/Casシステムを駆使してゲノム編集マウスを作製し、疾患原因遺伝子であることの妥当性を検証する。これらにより獲得されたマウス胚の形態学的・組織学的観察を行い野生型と比較する。新規遺伝子、または既知遺伝子であるが過去にノックアウトマウスの報告が見られない遺伝子の場合、当該遺伝子を標的としたTALEN RNAまたはCRISPR/Cas9 RNAのマイクロインジェクションにより、ノックアウトマウスを作製する。
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Causes of Carryover |
非症候性多数歯欠損症家系が追加で1家系見つかり、その検体の収集を年度をまたいで行うこととなってしまったため、次世代シーケンサー使用料を次年度に回した。さらに、本研究成果をまとめ、現在学術雑誌に投稿している論文2編について、英文校正料の支払いが遅れた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次世代シーケンサーによるゲノム解析は検体が集まり次第、実施する予定である。論文の英文校正料については、すでに請求書を提出している。
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