2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本におけるがん看護外来のアウトカム評価指標の開発とがん看護外来の有効性の検討
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26293465
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
飯岡 由紀子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (40275318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高松 潔 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (30206875)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護学 / がん看護 / 看護外来 / アウトカム / 評価指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
<日本のがん看護外来の実態調査> がん看護外来を積極的に展開している施設から、その実態の概要を明らかにすることを目的に質的研究を行った。次年度行う予定の全国調査で活用する質問紙の設問項目作成にもつながる研究として位置づけた。対象は、病院ホームページや先行文献や、便宜的なサンプリングにて抽出し、研究協力が得られた6施設のがん看護外来担当看護師6名、がん看護外来と連携している医師5名、およびがん看護外来管理者6名であった。それぞれの対象者に半構造化面接を行い、収集したデータを逐語録にして内容分析を行った。研究倫理審査委員会の承認を受けて行った。 がん看護外来担当看護師からは、相談役割を担うことが多く、専門的知識の提供、心理的サポート、専門機関や専門家の紹介が中心的な活動内容であった。また、高いコミュニケーション能力と連携・調整力が求められることが明らかになった。医師への調査からは、医師の説明の補助的支援、精神的・社会的側面への支援を看護師の役割と考えており、看護外来へは肯定的な評価をしており、情報共有を密にするようにしていた。がん看護外来管理者への調査からは、専門性の高いケアの提供、相談窓口としての場、医師をサポートする役割、スペシャリストの人材活用としてがん看護外来をとらえており、人材不足、質の保証、費用対効果の調整、場所の確保などを課題として考えていた。 <文献検討> 海外文献にて、看護師が主導するクリニックや外来介入プログラムの評価指標を検討した。アウトカム指標には、QOL、満足度、コスト(費用効果)、受診回数、検査の回数と割合、心配事、抑うつ・不安などが活用されていた。更に、日本で活用できる患者を対象とした満足度尺度を収集し、検討した。 以上の結果をふまえ、全国調査の質問紙を作成し、調査実施への準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度計画していた文献検討と質的研究は一定の成果が得られた。文献検討では、海外のアウトカム指標が明確となった。海外とは医療事情も異なるため直接活用することはできないが、日本の現状に即したアウトカム指標を検討する上で参考となる。 質的研究では、計画時の対象者数よりは若干少ないが、十分なデータが収集できた。分析も完了しており、研究成果の概要に示したように、結果が導き出されている。 だが、質的研究の分析に時間を要したため、昨年度より着手する予定であった全国調査は、質問紙開発段階に留まっている。質問紙は質的研究や文献検討結果を基にして開発しているため、先行研究である質的研究の分析が終了しなければ、質問紙開発に着手できなかった。それらにより、質問紙は完成していない。今後は、早急に質問紙開発を進めて、調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
<平成28年度の推進内容> 本年度は、全国のがん看護外来の横断的質問紙調査にて、その実態を明らかにする予定である。全国調査で行う質問紙は、先行研究で行った文献検討や質的研究を基にして作成している。これらの設問により、がん看護外来の実態や役割が明確になると考える。また、質問紙には、看護師が抱く困難感尺度や職務満足度尺度、チーム医療尺度などを同時に調査する。これは、がん看護専門外来担当看護師が抱く困難感や満足度にどのような要因が関連しているかを明らかにすることも目的としている。サンプルサイズは、質問項目数により変動するが、現段階では300施設を想定した。全国のがん診療拠点病院から、地域の偏りがないよう層化サンプリングを行う。郵送先は、対象施設の看護部代表者とするが、回答はがん看護外来担当看護師が行うよう依頼する。回答は研究者へ郵送し、返信をもって同意とみなす。研究代表者所属施設の研究倫理審査委員会による承認を得て研究を実施する。 <平成29年度の推進内容> これまでの研究では、がん看護外来担当看護師、がん看護外来との連携が多い医師、がん看護外来管理者に調査を行ったが、当事者であるがん看護外来利用者の患者・家族への調査は行っていない。最終年度である平成29年度には、がん看護外来を利用した患者・家族を対象に調査を行う。がん看護外来の1日の利用者数は少ない傾向があり、サンプルサイズは限界があるが、30名を目標として横断的質問紙調査を行う。データ収集内容は、がん看護外来のケアに対する満足度、有効と感じたケアの内容、担当看護師に期待する役割、看護師から受けたい医療サービスとする。研究代表者所属の研究倫理審査委員会による承認を得て実施する。 これまでの研究の全ての成果を基にして、がん看護外来の構造(先行要因、要素、アウトカム)を導き出す。その構造を基にアウトカム評価指標を開発する。
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Causes of Carryover |
本年度は、全国調査を行う必要がある。この全国調査は、多種多様に展開しているがん看護外来の実態を明らかにするためには必要不可欠な調査として位置づけている。この調査を行うために、これまで予備研究を積み重ねてきている。必要費用として、質問紙印刷代、郵送代、データ入力作業代などを考えている。また、質問紙の整理や資料の郵送手続きなどは、アルバイトを雇って対応する必要がある。更には、質問紙作成を検討するためや、分析結果を検討するための会議は、研究を遂行するためには必要事項であり、定期的に行う必要がある。そして、これまでの先行研究の成果公表や、発展して間もないがん看護外来に関する最新の情報を収集するために、学会や研修会への参加が必要となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
以上の理由より、全国質問紙調査研究の費用として、質問紙印刷代、質問紙の配布や回収のための郵送代、膨大な量のデータが回収されるため業者委託作業としてのデータ入力作業代を計上している。また、質問紙の整理や資料の郵送手続きなど多岐にわたる事務作業を行うためのアルバイトの謝金を計上した。更には、会議費や資料印刷などの諸経費と、学会や研修会への参加のための交通費や参加費を計上している。
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