2016 Fiscal Year Annual Research Report
日本におけるがん看護外来のアウトカム評価指標の開発とがん看護外来の有効性の検討
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26293465
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
飯岡 由紀子 東京女子医科大学, 看護学部, 教授 (40275318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高松 潔 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (30206875)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 看護学 / がん看護学 / 看護外来 / アウトカム |
Outline of Annual Research Achievements |
<がん看護外来の看護実践に関する全国実態調査> これまでの研究成果を基に自記式質問紙を開発し、前向き観察研究を行った。全国のがん看護外来における看護実践や運営状況を明らかにし、その結果をもとにがん看護外来のアウトカム評価指標を開発することを目的とした。 対象者は、厚生労働省が指定しているがん診療連携拠点病院、都道府県がん診療連携拠点病院、国立がん研究センターなどの427施設のがん看護外来の看護師とした。データ収集内容は、がん看護外来の運営状況(利用者数、広報活動など)、がん看護外来における看護実践(40項目)の頻度と重要性、がん看護外来の有用性の評価(21項目)、がん看護外来の今後の課題(16項目)、がん看護外来の役割に対する認識、対象者の特性である。がん看護外来を開設していない施設は172施設であった。がん看護外来を開設している116施設から回答を得て、有効回答は108だった(回収率67.4%)。がん看護外来の看護師は、がん看護専門看護師もしくは認定看護師であった。がん看護外来に専従していた(8割以上従事)者は、約4割だった。がん看護外来の看護師が多く実践していることは、不安の傾聴と緩和、治療選択に関する意思決定支援、症状コントロールの支援などであり、重要性が高いと認識している項目と同様の結果だった。また、アウトカムとして重要性が高いと認識していることは、患者・家族の満足感、QOLの改善、不安の緩和などであった。担当看護師の職務満足度は高く、やりがいを感じている一方で、今後の課題としては、アセスメント能力の向上、心理的支援の向上など多岐にわたった。 以上から、がん看護外来はまだ発展途上であり、開設している施設も限られる。また、がん看護外来の実践内容と運営の実情や今後の課題が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度予定していた全国実態調査は実施できた。対象としたがん診療連携拠点病院のうち、がん看護外来を開設している施設は約4割あり、その実態を把握しながら質問紙回収を行ったために時間を要した(質問紙回収のための催促状の送付や電話対応などを行っていた)。平成28年度にはアウトカム評価指標が作成されている予定であったが、現在分析を行いながら、アウトカム評価指標を開発中である。また、がん看護外来の主な役割は相談であり、がん看護外来の看護師がアウトカムとして重要と認識していることは、満足感、QOLなどの抽象度が高く、関連要因が多岐にわたる概念である。だが、本研究では、より客観性が高く、簡便な評価指標を開発することを目指している。つまり、研究結果からどのように評価指標を開発するのかの検討に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのインタビュー調査結果、がん看護外来の全国実態調査の結果を基に、アウトカム指標を開発する。更に、開発したアウトカム指標を活用して、がん看護外来の効果を評価する。 1.がん看護外来のアウトカム指標の開発:全国調査結果の詳細な分析を行う。特に、がん看護外来の実践内容の類型化(因子分析)と、関連要因の明確化を行う。更に、実践内容と重要度が高いと認識しているアウトカム指標項目との関連を明らかにする。これまでの分析結果からは、がん看護外来の主な役割は相談であり、がん看護外来の看護師は、患者・家族の満足度、QOLの改善、不安の緩和、葛藤の緩和、病状・治療の理解の促進が、重要性が高いアウトカム指標として認識していた。相談役割という複合的で抽象度が高い実践内容に加えて、満足度、QOLのように多岐にわたる関連要因を有する概念がアウトカムとして認識されている。だが、臨床での実用性を考慮して、より客観的で簡便で実用性の高い指標の開発を目指す。同時に、医療の質評価尺度、患者満足度尺度、意思決定の葛藤尺度、不安・気分に関する尺度、QOL尺度などの既存の尺度を参考とする。 2.アウトカム指標の活用による有用性の検討:がん看護外来を運営している施設において、開発したアウトカム評価指標を活用し、その有用性・実現可能性・容認性を検討することを目的とする。対象の条件は、外来通院中のがん患者であり、研究協力が得られた者とする。対象者は、がん看護外来利用者と非利用者の2群とする。データ収集内容は、1で開発したアウトカム指標のほか、対象の特性、研究期間中の有害事象などを調査する。分析は、がん看護外来利用者群と非利用者群とで比較検討する。また、がん看護外来利用者やがん看護外来担当看護師にインタビュー調査を行い、質的データも収集する。本研究は、研究代表者およびデータ収集施設の研究倫理審査による承認を得て行う。
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Causes of Carryover |
がん看護外来のアウトカム指標開発の開発では、関連尺度の資料収集のために文献複写費が必要となる。また、アウトカム指標を尺度として開発する際には、尺度の内容や項目構成などにおいて統計学者からの専門的知識の提供とともに、コンサルテーションへの謝金が必要となる。これらの過程では、資料収集、統計的分析、資料作成のためにアルバイトを雇用して研究補助をしてもらう必要がある。 アウトカム指標の活用による有用性の検討では、研究協力施設の選定のために旅費や資料作成などの経費が必要となる。また、対象者にはアウトカム指標を活用してもらうため、謝金やデータ収集のための旅費やアルバイト代、データ入力費用や分析費用なども必要経費となる。がん看護外来の看護師を対象としたインタビュー調査においても、データ収集のための旅費や、逐語録作成費用なども必要となる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年4月から9月までには、データ分析を完了させ、がん看護外来のアウトカム指標を開発する。8月には統計学者へのコンサルテーションを予定している。また、10月からはアウトカム指標の活用による有用性に関する研究を開始する。一方で、研究協力施設の選定は、早期から取り組み、10月に研究が開始できるよう準備を整える。研究倫理審査は、アウトカム指標が完成次第に申請し、データ収集開始時期への支障が生じないように留意する。2018年1月にはデータ収集が完了し、2月から3月にかけて、データ分析および研究成果のまとめを作成する予定である。
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