2016 Fiscal Year Annual Research Report
福島第一原発事故による地域住民・被災者への心理社会的健康影響要因の特定
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26293485
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神馬 征峰 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70196674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 真三 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (50321849)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原子力災害 / 放射線 / 健康 / 精神 / 被災者 / 質問調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
原子力災害後、被災者はどのような心理社会的健康影響を受けるのか。日本でも世界でも学術的研究は少なく、その影響要因はほとんど明らかになっていない。本研究では、2011年3月に発生した福島第一原発事故の現場で、質的・量的調査の両手法を用いて、その要因を特定する。「放射線による健康不安」に着目し、一人ひとりの被災者や避難者が抱える不安を具体的かつ系統的に把握できる尺度(質問票)の開発を行うのかつ最初の目的である。次に、開発された尺度によって、精神健康指標をはじめとする健康状態と健康不安との関連を探索する。今後、原子力事故を含む同様の複合災害が発生した場合にも起こりうる心理社会的影響の予防や長期化した時のあり方について具体的に提言することを目指す。 本研究は、三段階で構成される。1) 「放射線による健康不安」を把握するための尺度開発にあたり、質的手法を用いて被災者のインタビュー調査を行い、情報収集を行う。2) インタビュー調査で得られた内容に基づき、福島版「放射線による健康不安」尺度の開発を行う。3) 更に、開発された尺度を用いて、精神健康指標をはじめとする健康状態との関連を探索する。 研究初年の26年度においては、避難生活を続ける高齢者を主な対象として、インタビュー調査を実施した。27年度においては、別の対象(母親、子供等)にインタビューを実施しながら、入手した情報の整理を行い、尺度開発を進めている。28年度においては、インタビューで得られた内容を、チェルノブイリ原発事故被災地のウクライナで開発され、使用されている「放射線被ばくによるPTSD尺度」及び、その他関連のある尺度等を参考に福島避難者用の尺度の作成を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度には福島避難者用の尺度を、チェルノブイリ原発事故被災地のウクライナで開発、使用されている「放射線被ばくによるPTSD」尺度等を参考に、さらに開発を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は共同研究者による会議を行い、かつ論文を作成する。なお、避難指示区域、および福島県外にいる被災者に対して個別インタビューによる質的調査の追加実施が可能であれば実施する。 次にチェルノブイリ原発事故被災地域で開発されたPTSD評価尺度を参考に、日本における被災者の長期的健康被害を表示するための尺度開発を、約400名の市民対象に行う予定である。 最後に各種学会にて成果報告をする。まずは11月前半、米国公衆衛生学会にて成果発表を行う。国内においても11月後半に国際保健医療学会を主催するので、その場で一つシンポジウムを設け、これまでの成果を発表する。
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Causes of Carryover |
1.ウクライナ情勢悪化のため。 2.日本では小中学校でデータ収集を行う予定であったが、市長の交代により教育委員会からデータ収集の許可が得られず、予定した調査ができなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.ウクライナ研究者との連携を密にして、情勢の改善後、予定していた調査を行う。 2.教育委員会傘下にない一般市民を対象に、新たな調査を実施する。
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