2014 Fiscal Year Research-status Report
インド石窟美術史のための調査研究-西インド古代後期~中世前期石窟寺院を中心に-
Project/Area Number |
26300018
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
平岡 三保子 龍谷大学, 仏教文化研究所, 研究員 (00727901)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | インド美術史 / 仏教美術史 / 仏教石窟寺院 / エローラ石窟 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請時に記した研究実施計画に基づき、エローラ仏教石窟およびその周辺の西インド(マハーラーシュトラ州)の後期仏教石窟寺院を主として学術調査を行った。インド考古局からの撮影許可は概ね円滑に発行された。ムンバイを中心とするコーンカン地方(西インドのアラビア海沿岸)周辺では展示室をリニューアルしたCSMVS(Chattrapati Sivaji Maharaji Vastu Sangrahalaya,旧プリンス・オブ・ウェールズ博物館)の所蔵品、カーンヘーリー仏教石窟寺院、カールラー仏教石窟寺院、などを調査した。またデカン地方ではアジャンター後期仏教石窟、アウランガーバード後期仏教石窟、ナーシク後期仏教石窟、エローラ後期仏教石窟を調査した。加えて主たる前期仏教石窟の造営されたサータヴァーハナ朝の遺跡として重要な中インドのサーンチーのストゥーパ美術を比較研究の為、現地調査を実施した。また来年度の課題に関連するがPune市内のパタレーシュワル・ヒンドゥー教石窟寺院においても学術調査を行った。 ただしこの年は異常気象で悪天候が多く、アジャンター、アウランガーバード、カーンヘーリーなど一部の遺跡では全ての遺品を調査する事ができず、2015年度に継続する事にした。それでも多くの現地調査を遂行できたのは助成金により専用車をチャーターできた為である。現地では ①ファサードの浮彫彫刻 ②石窟内列柱の形式 ③石窟内列柱の柱頭彫刻 ④本尊の仏像彫刻もしくはストゥーパ ⑤壁面の仏教尊像 ⑥壁面の装飾(浮彫、壁画)⑦壁面に穿たれた銘文 などの幾つかの重要なテーマに沿って写真撮影・情報収集を行った。インド考古局の三脚を使用した撮影許可によって、申請者がこれまでに収集できなかった多くの写真資料が新たに加えられ、仏教石窟寺院における様式変遷および編年研究再構築の為の手がかりを多く得る事ができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究概要でも触れたが、通常インドは8月下旬に入ると雨期が最盛期を過ぎるのであるが、2014年は7-8月に雨が降らず干ばつに見舞われ、8月後半に豪雨が集中し、9月に入ってもなお度重なる降雨に見舞われた。そのため、山道が川と化し専用車でも近づけない遺跡、足場の悪い石窟遺跡の幾つかは危険を伴うため調査を断念せざるを得なかった(ガトートカッチャ、カーンヘーリー石窟群の川上地区など)。また、この豪雨により道路事情が悪化したため移動に時間を要し、遺跡でも雨を避けて写真撮影を行うなど効率が悪く、写真の撮り残しも生じた。また、交流を図る予定であったムンバイのソーメイヤ研究所の仏教学科主任 K.シャンカラナラヤン教授が2014年6月に惜しくも急逝され、インド仏教美術研究を進める上で貴重な足がかりを失ってしまった。さらマハーラーシュトラ州最大の祭礼(ガネーシュ・チャトルティ)が2014年度は8月下旬に入った為(太陰暦で毎年変動する)、研究機関が祭日休業となったり研究者が休暇を取ったりしていた事も交流の妨げとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
概ね交付申請時の研究実施計画に基づいて研究/調査を進める予定である。すなわちエローラの初期ヒンドゥー教石窟寺院(第14,15,21~29窟)を中心に西インドの関連石窟を調査する。また2014年度の悪天で調査を完遂できなかったアジャンター、アウランガーバードの後期仏教石窟も調査対象に含める。後期仏教石窟は5世紀以降造営され、6世紀に入ると遅れてヒンドゥー教石窟が出現する。両者で共有される様式・図像、あるいは継承・発展された様部分、影響関係が認められる要素などに注目し、比較研究のための資料収集に努める予定である。また、シャンカラナラヤン教授急逝後のソーメイヤ研究所仏教学科の人事が不明なままであるが、ムンバイのアジア研究所などを通してインドの研究者との交流を図る所存である。今年度のガネーシュ・チャトルティは9月中旬頃である為、インド現地調査を8月下旬~9月上旬に行うことで祭礼の影響を回避するつもりである。
|
Causes of Carryover |
申請者は交付金を用いて研究調査を実施し、ほぼ計画通りに交付金のほぼ全額を使用した。次年度使用額15634円というのは僅かな差額であるが、初年度より次年度の方が交付金総額が少ないこともあり、次年度に使用する為残す事とした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
インド現地における協力者の謝金および物品費の補助として加えたい。
|