2015 Fiscal Year Research-status Report
インド石窟美術史のための調査研究-西インド古代後期~中世前期石窟寺院を中心に-
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26300018
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
平岡 三保子 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (00727901)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | インド美術史 / 石窟寺院 / 仏教美術史 / ヒンドゥー教美術 / インド寺院建築 / デカン高原 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度には申請時の研究計画に加え、スリランカの仏教遺跡調査を加える事ができた。これは研究代表者がスリランカ・キャンディ地区のダルマ・アショーカ寺院管長および長老方の知遇を得る機会があり、各遺跡や寺院の案内および特別拝観の便宜を図って頂く事が可能となったためである。スリランカ美術は古代のアヌラーダプラ時代、中世のポロンナールワ時代を通じてインドの同時代美術との関係性が強い。特にアヌラーダプラ時代のシーギリヤ石窟壁画は、様式や技法について常に西インドのアジャンター壁画に比して論じられる。またスリランカの諸時代に遺された磨崖仏も、インド石窟の浮彫彫像と興味深い関連性を有している。従ってスリランカ調査を加える事でインド石窟研究の視野をさらに広げ、比較対象となる遺跡・作品のデータ収集をより多く収集する事が可能となった。 遺跡の調査面では、まず研究計画に従いムンバイ周辺の、Jogeshwari、Mandapeshwar、Parel(磨崖彫刻)といった初期ヒンドゥー教石窟の調和を行った。続いてエローラヒンドゥー教石窟のうち早期の開窟と考えられている第14,15窟そして昨年完了できなかったエローラ仏教石窟の細部(第2,6,8窟を中心として)の撮影に取り組んだ。ただし、昨年大雨で調査を延期したアジャンター、カーンヘーリー、アウランガーバード仏教石窟は調査を完了できなかった。これは冒頭で触れたようにスリランカ調査を新たに加えたためである。これらはまた2016年度の調査時に継続的に調査を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に比べ、2年目は申請者が調査に必要な様々な手続きが円滑に遂行できた。たとえば、インド考古局ムンバイ支部、アウランガーバード支部の局長とそれぞれ対談することができ、申請者の研究調査に多いに理解を得る事ができ撮影許可もスムーズに取得できた。また2015年度には西インドにおいて、石窟研究に関わる現地の研究者と昨年以上に多くの交流を持つ機会に恵まれた。具体的にはムンバイ大学、ソーメイヤ大学、デッカンカレッジ考古学科、旧プリンス・オブ・ウェールズ博物館に所属する研究者方との交流と意見交換を通じ本遺跡調査への協力や情報提供を得る事ができた(インド考古局やデリー国立博物館、デリー大学に所属する研究者との交流も昨年度より継続)。 また昨年度のように大雨による計画の中止に見舞われる事がなかったため、概ね申請者の希望する形で調査を進める事ができた。ただし先述したように急きょスリランカ遺跡の調査という好機を得たため、その反面、インド石窟の調査対象が限定される事となった。しかしその分は先に述べた調査手順の円滑化に伴い、2016年度の遺跡調査における挽回が十分に期待できる。 周到な調査の遂行によりエローラ仏教窟で撮影が難しかった仏堂内の仏像の鮮明な写真資料を得る事ができ、5世紀から8世紀にかけて石窟壁面に刻出された仏像や堂内荘厳の制作過程がどのように変化したのかを、技法面から解明する手がかりが得られた。また同時代に造営されたヒンドゥー教石窟における神像表現や建築形態の資料収集を進めた事で、両者がいかに親密な関係性の中で相互に影響を与え合い新たな造形活動を展開していったのかを具体的に検討する準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
先述したように5世紀から8世紀にかけて石窟壁面に刻出された仏像の制作過程がどのように変化したのかを、技法面から解明する手がかりがアジャンター、アウランガーバード、エローラ諸石窟の作例を比較分析する事で得られる見通しが付けられた。7-8世紀エローラ石窟に頻出する密教系の各種尊像についてはその出自や発展過程について未だ不明な点が多く、現地調査のみならず仏教経典の解読や解釈に関する知見を専門家より得たり、当時の王朝がどのように石窟造営に関わっていたのかという歴史的背景(とくにデカン地方)についての視野を広げる必要性を再認識させられた。もちろん、同時代のヒンドゥー教美術との影響関係が密接であることを検討する上で引き続きエローラヒンドゥー教石窟の膨大な遺跡・遺品群の調査と写真資料収集を進める事が必要不可欠である。そして未だに定説のないエローラのヒンドゥー教諸石窟群の編年研究において、新たな知見を加えるためにも仏教石窟との比較分析を視野に入れて調査研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今回は専用車による移動距離が計画時より少なくなった。これは予定を変更してスリランカ遺跡調査を加えたためである(スリランカでの移動は先述スリランカ仏教寺院のご好意を受けたので支払いの必要がなかった)。そのため、専用車両での移動費用が毎年高騰しつつあるインドでの現地調査に備え、次年度に使用する事に決めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前期石窟寺院が主に造営されたサータヴァーハナ朝時代に中インドでサーンチーの仏塔群が造営された。同時代の作例として重要であるが、この度、サーンチー現地の考古博物館収蔵庫に保管されている出土品を調査できる可能性が生じた。次年度の調査において西インドの石窟にサーンチー調査を加える事になると大幅に移動距離が増えるため、国内移動費の補助としたい。
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