2016 Fiscal Year Annual Research Report
在外絵入り本を中心とする書誌・出版・解釈の総合的研究
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26300020
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
山下 則子 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (40311162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神作 研一 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (30267893)
小林 健二 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (70141992)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 在外絵入り本 / 国際情報交換イタリア / 国際情報交換アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
1,ホノルル美術館リチャード・レインコレクション版本の調査と研究 本年度の調査は、2017年3月5日(日)~3月10日(金)に実行した。今回の調査はレインコレクションの草双紙類、特に黄表紙を完成させ、絵入折手本を精力的に調査した。調査前に同じく同コレクション調査に入っていた九州大学グループと、成果発表に関する取り決めを行った。また同グループは今年度以降調査予定がないことが判明し、ホノルル美術館側から調査成果に関する相談を受けた。目録作成は九大グループが予定しているので、当方はキオッソーネ東洋美術館等4カ所の在伊日本古典籍目録と、ホノルル美術館蔵稀覯日本古典籍に関する研究論文とを合体させた成果発表を行うこととした。 2016年8月26日に国文学研究資料館で共同研究会を実施した。内容は二叉淳氏「レインコレクションの黄表紙『敵討政五郎話』について」、浅野秀剛氏「絵入折手本」、神作研一氏「〈和歌絵本〉のひと齣―『立画百人一首』から『錦百人一首あづま織』へ―」、山下則子「レインコレクションの稀覯絵本紹介―『獣絵本つくし』について―」、山下則子「国文研蔵『一枚刷他貼込帖』について―『かせんむすめはなくらべ』の紹介」である。そのほとんどがリチャードレインコレクションに蔵される貴重資料に関する研究であり、熱心な質疑応答がなされた。 2,在伊日本古典籍資料の追加調査と成果発表に関する検討 昨年度のキオッソーネ東洋美術館目録の完成により、研究代表者は4つの在伊日本古典籍目録を作成したこととなった。これらは全て紀要に発表したので、一般的には目に触れにくい。故に在伊日本古典籍資料の4つの目録を集約し、リチャードレインコレクションの貴重資料に関する研究論文をまとめて、冊子体出版を目指したい。そのため、ローマサレジオ大学マリオ・マレガ文庫蔵の未調査本も整理調査して、目録を補完する検討をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ホノルル美術館リチャード・レインコレクションの本年度調査は、2017年3月5日(日)~3月10日(金)に実行した。今回の成果は草双紙類、特に黄表紙調査を全て完成させ、絵入折手本を精力的に調査した点にある。 本調査前には、同コレクション調査に入っていた九州大学グループと、成果発表に関する取り決めを作成した。九大グループは今年度から調査を行わないないことが判明し、ホノルル美術館側から調査と成果発表に関する相談を受けた。その結果、既調査分の目録作成は九州大学に主導的に任せ、当方はキオッソーネ東洋美術館等4カ所の在伊日本古典籍目録と、ホノルル美術館蔵稀覯日本古典籍に関する研究論文とを合体させた「在外絵入り本の研究と目録(仮題)」とした成果発表を行うことを提案した。ホノルル美術館による画像公開のための書誌的事項の解説等の助力も引き続き提供することとした。 また2月に研究分担者が調査とともに現地学生や学芸員対象に、同コレクション本を用いた講演会を開催し、大きな反響を呼んだ。ハワイ大学と学術交流協定締結ができ、ホノルル美術館側から大変喜ばれた。 研究代表者は、約15年前にローマサレジオ大学マリオマレガ文庫所蔵日本古典籍目録を完成させたが、完成後発見された資料の追加調査中に、諸般の事情からそれら日本古典籍が移送された。そのため今年度他経費でサレジオ大学図書館を訪ね、それらの日本古典籍の所在と、整理状態を確認した。それらは所在確認は概ねできたが、書誌学的に正しく配置されているとは言えない状態であった。サレジオ大学新図書館長に事情を説明し、図書館長から調査続行と、アクセス可能状態にすることを依頼された。この調査を完成させ、今まで作成した在伊日本古典籍目録4つを集約させ、更にそれらの中の貴重本解説と、リチャードレインコレクション稀覯本の研究論文数本をまとめた出版計画を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
ホノルル美術館リチャードレインコレクションの調査は、その対象となる日本古典籍の分量が膨大なため、しばらく続行される。調査の途中で発見された貴重本を中心とした共同研究会を毎年開催している。それらのリチャードレインコレクション稀覯本の研究成果をまとめたものと、キオッソーネ東洋美術館所蔵日本古典籍目録を初めとする、4つの在伊日本古典籍目録をまとめた研究成果物「在外絵入り本の研究と目録(仮題)」の作成準備をする。それらの在伊日本古典籍中の貴重書解説も行う。 また、リチャードレインコレクション日本古典籍の価値を、現地の若い研究者達―ハワイ大学大学院生や学芸員等―に知って貰うための社会的還元としての講演も行う。これはホノルル美術館やハワイ大学から協力を得るための、事前の調整が必要である。講演は日本語で話し英語版プレゼンテーションを用意して行うこととなり、ホノルル美術館の資料を用いて作成する。これらの現地への貢献は、ホノルル美術館側も強く希望していることではあるが、入念な事前準備が必要となる。
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Causes of Carryover |
本計画は、在外絵入り本の資料調査を、助成金の主たる使用目的としている。 本年度は研究代表者と研究分担者や研究協力者との間で日程調整が難しく、2017年2月と同年3月の2回に別れての調査となった。2月の訪問時には、古典籍調査に加えてハワイ大学院生や学芸員などを主対象とする「古典籍ワークショップ」も開催し、諸般の事情から他経費使用で渡航した研究分担者もいた。また研究代表者が「在外絵入り本の研究と目録」(仮題)成果発表のために、在伊日本古典籍の現況確認調査に渡航したが、それも他経費使用となった。 また一昨年度に所蔵者との調査日程の折り合いが付かず、他図書館へ少数で調査に行った時の余剰も繰り越されている。在外絵入り本の研究を深化させるために、古典籍を購入して比較考察する必要があるが、それに該当する最適な資料が市場に現れなかった。それらの理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
極力多くの研究分担者や研究協力者と調査に行き、膨大なレインコレクションを数多く明らかにしたい。ホノルル美術館側からも調査成果を公表することが求められているので、「在外絵入り本の研究と目録」(仮題)という成果物を出版するべく準備を整えたい。その成果物の出版準備には、ある程度の経費がかかることは十分に予想される。その成果物には在伊日本古典籍目録と貴重本解説も載せるので、ローマサレジオ大学蔵マリオマレガ文庫の新出資料も改めて調査する必要がある。サレジオ大マリオマレガ文庫蔵日本古典籍新出資料の調査と整理のために、再び渡航する必要もある。また在外絵入り本調査に重要な意味を持つ古典籍が市場に流通した場合には、可能な限りそれを購入したい。
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Research Products
(31 results)