2014 Fiscal Year Annual Research Report
ウォーラシア海域と環太平洋域における人類移住・海洋適応・物質文化の比較研究
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26300028
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
小野 林太郎 東海大学, 海洋学部, 准教授 (40462204)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (30280712)
印東 道子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 教授 (40203418)
竹中 正巳 鹿児島女子短期大学, 生活科学科, 教授 (70264439)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 海洋資源利用 / 新石器時代 / 金属器時代 / 移住戦略 / 海上交易 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績としては、まず2014年8月よりインドネシアの北マルク州における「ウアッタムディ遺跡」での調査を開始することができたことがあげられる。この遺跡は1990年代にオーストラリア国立大学のピーター・ベルウッド博士らによって最初に発掘され、約3400年前に遡る新石器時代の文化層と、その上層に約2000~1000年前の年代値が得られた金属器時代層が確認された。インドネシアを含め、東南アジア島嶼部でこれまでに発見・発掘された新石器時代遺跡はまだきわめて少ないため、本遺跡は極めて重要な先史遺跡でもある。同時に本遺跡からは、東南アジア島嶼部の新石器時代遺跡ではまだ出土が確認されていなかったイヌやブタといった家畜動物の骨も報告されている。しかし、先行研究ではその出土状況や分析結果の報告はなく、詳細については一切不明な状態であった。 以上の背景から、本研究では新たな動物・貝類遺存体の収集とその動物考古学的な分析、およびイヌやブタ骨についてはDNA分析も視野に入れた新たな研究を目的として再発掘調査を実施した。その結果、先行研究で収取された以上の海産貝類や魚類遺存体を収集できたが、イヌ・ブタ骨に関しては、残念ながら上層の金属器時代層からは出土が確認できたが、新石器時代層からの確認はできなかった。場合によっては、先行研究での出土も上層からのものだった可能性があが、今後の計画として、まずは出土したイヌ・ブタ骨の年代を確認したうえで、DNA分析も試みる予定である。また再発掘では、上層から下層にかけて多数の炭化物や年代測定可能な遺物を収取できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度として予定していた遺跡の発掘調査を無事に実施できたこと、またほぼ想定していた出土状況を確認でき、多くの遺物を収取できたため。一方、新石器時代層からイヌ・ブタの骨を確認できなかったのは残念だが、こうした遺物は東南アジアの先史遺跡ではなかなか出土しないため、出土が確認できない可能性が十分にあることも想定内ではあった。こうした残念な部分もあったが、海産資源の利用痕跡についは予想以上の成果があったため、今後の分析により新たなデータの提出が期待されるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策としては、計画通りに2015年度からはさらにスラウェシ島での先史遺跡群の発掘を開始する。具体的には中スラウェシ州の沿岸域に立地する先史遺跡群の踏査を行い、可能性の高い遺跡の発掘を実施することで、新石器時代以前、新石器時代期、および金属器時代における人類の海産資源を中心とした資源利用、移住や交流をふくむ海上ネットワークのあり方、埋葬形態の変化、および海洋適応のプロセスに関わる一次資料の収取と分析を進める。そのうえで、比較の視点から、北マルクでの事例やオセアニア、琉球列島といった周辺の海域世界との分析も進めていく予定である。 一方、2014年度の発掘で出土した遺物群については、その同定分析や動物考古学的分析を進めるほか、大量に出土した土器等のその他の遺物についても本研究メンバーや協力者による分析を進め、その成果を学術論文、学会等にて積極的に公表していく計画である。
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Causes of Carryover |
インドネシアでのフィールド調査に参加予定だった協力者1名が、都合により本年度の調査に参加できなくなったため、次年度調査に参加する際の費用として使用せずに残した。また分担者の米田に配分された金額は、炭素年代測定の分析費として使用される予定であったが本年度中に分析を完了することが難しいことが判明したため、来年度に改めて分析を進め、完了することになり、必要となった一部の分析を行ったほかは分析を進めなったことから残った次第である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度にフィールド調査に参加できなかった協力者は次年度の調査には参加できることが確定しており、その出張費等に使用する計画である。また米田に配分された分担金は、予定通りに全て炭素年代測定の分析費として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)
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[Book] Emergence and diversity of modern human behavior in Paleolithic Asia2015
Author(s)
Ono, R, N. Nakajima, H. Nishizawa, S. Oda, S. Soegondho, Y. Kaifu, M. Izuho, T. Goebel, H. Sato, A. Ono, P. Mellars, J. Svoboda, R. Kimura, P. Bellwood, S. Athreya, R. Korisettar, H. Matsumura, M. Oxenham, N.L. Cuong, N. Viet, T. Reynolds, G. Baker, T. Simanjuntak, A.S. Mijares, A. Pawlikほか
Total Pages
580(201-213頁を担当)
Publisher
Texas A&M University Press
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