2015 Fiscal Year Annual Research Report
中越国境地域の市場に見る民族間交流とエスニシティの文化人類学的研究
Project/Area Number |
26300038
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
芹澤 知広 奈良大学, 社会学部, 教授 (60299162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉本 康子 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 外来研究員 (50535789)
奈倉 京子 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (70555119)
伊藤 まり子 京都外国語大学, 外国語学部, 非常勤講師 (70640887)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国 / ベトナム / 国境地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年4月25日に研究分担者を奈良大学へ招き、平成27年度の調査についての打ち合わせを行うほか、政治学者の小高泰氏(拓殖大学国際学部非常勤講師)から「最近の中越関係とベトナムの安全保障政策」と題するご講演をいただき、本研究課題に関係した近年の政治情勢についての理解を深め、さらに平成26年度の調査について各自が報告して、日本滞在中のCHU Xuan Giao 氏(国立民族学博物館外国人研究員)からコメントと調査上の助言を得た。 平成27年7月には、研究代表者の芹澤知広と研究分担者の伊藤まり子がオーストラリアで行われた国際アジア研究者会議で関連する発表を行い、芹澤はその間、オーストラリアに在住するベトナム・クァンニン省からの移民の宗教施設を訪れて、資料を収集した。 平成27年8月以降、研究分担者の奈倉京子は中国広東省及び広西チワン族自治区、伊藤はベトナム北部及び南部、吉本康子はベトナム南部、芹澤は中国とベトナムでそれぞれ調査を行った。 奈倉と芹澤は、広州市でベトナムとの貿易にたずさわる中国人とベトナム人にインタビューし、その流通経路についての情報を得たほか、広西チワン族自治区沿岸部の旧広東省地域を広範囲に踏査することで中越国境地域の歴史的地理的背景について深く理解することが可能になった。 伊藤は、クァンニン省のあるコミュニティに滞在し、ある宗教施設を中心に多くの情報を得ることで、中越関係に関わる人や物の動きについて多くを理解することができた。 平成28年3月19日には、研究分担者を奈良大学へ招き、平成27年度に各自が各地で行った調査について報告して情報を共有した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年8月に行った中国チワン族自治区での調査では大きな成果があり、中越国境地域を大きくとらえて研究をすすめるべく、視野が広がった。ベトナム北部クァンニン省に入植し、現在ベトナム南部やオーストラリアなどの海外に在住する華人が故郷としていたのは、中国チワン自治区沿岸部の旧広東省地域であり、言語や生活習慣において現在のクァンニン省とも共通性が強く見られることを確認した。また平成26年度から継続して訪問しているベトナム北部・クァンニン省の、あるコミュニティについての実地調査においても、新たに建設された宗教施設を中心に多くの情報が集まってきている。しかしながら中国で、あるいはベトナム南部で、対象をしぼって情報を集めていくまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間で、中国広東省及びチワン族自治区、ベトナム北部、ベトナ南部、それぞれで興味深い対象を見つることができた結果、確実に情報が蓄積されてきている。そのため中国とベトナムでの実地調査を今後も重ねていくことで研究を推進したい。しかし過去2年間の調査では、国際貿易に携わる人々から、その業務にかかわる情報を得ることのむずかしさも実感することができた。そのため研究の成果を確実にあげるためには、確実に調べられることがらに対象を絞り込んでいく必要もある。その作業を行っていくうえでも、各自が実地調査から得られた情報を共有し、共同調査研究を計画するうえでの研究会を頻繁に開きながら研究をすすめたい。
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