2016 Fiscal Year Annual Research Report
Poverty reduction and development of the cut-flower exporting industry: the cases of Kenya and Ethiopia
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26301018
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
真野 裕吉 一橋大学, 大学院経済学研究科, 講師 (40467064)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 綾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20537138)
松本 朋哉 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (80420305)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 切花産業 / 園芸作物 / アフリカ / ケニア / エチオピア / 貧困削減 / 雇用創出 |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる先進国や中進国が衣食住の最低限の水準をクリアしている一方で、サハラ砂漠以南のアフリカでは今も貧困が深刻な問題である。さまざまな解決策が提案されており、付加価値の高い野菜などの園芸産業も注目を集めている。しかし、この産業が貧困削減にどのように貢献するか、まだ十分な研究の蓄積があるとは言えない。そこで、切花の輸出額が世界第5、6位を占める、ケニアとエチオピアにおいて数度にわたって独自の現地調査を実施し、この産業の貴重なミクロデータを収集し、その発展の仕組みや貧困削減への効果などについて研究を行った。 まず、エチオピアでは教育水準の低い若年層を中心とする非熟練労働に対する雇用創出という観点から調査研究した。とくに、切花農園に従事する労働者は、教育水準などの人的資本のレベルをコントロールしたうえで、他の産業に従事する労働者に比べて、仕事に対する満足度や賃金の水準が高いのか、さらに積極的に貯蓄を行っているのか、ミクロ計量経済学の手法を用いて分析を進めた。 一方、農園で経営者に聞き取りを行ったところでは、産業の発展とともに各農園の販路の開拓が進み、それと関連して経営業績の格差が拡大しつつある。そこで、さらに追加的な調査を行い、各農園の生産に関するデータだけでなく、経営者のスキルや販路なども含むユニークなパネルデータの構築をさらにすすめ、経営能力と企業の生産性および産業発展の関係について解明しようと試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調にすすんでいる。 ケニアでは、大規模農園だけでなく、小規模農家も切花生産をしている。われわれは小規模農家によるそうした試みがはじまったところから調査を開始し、自ら農村を回って、農家の方たちと対話することで、彼らの信頼を得て、貴重なパネルデータを構築することができた。現地でのインフォーマルな聞き取りや収集したデータの分析から、さまざまな事実が明らかになってきている。とくに、農民組織を通じた集団的行動により、個人では困難な新技術の採用や、輸出業者との取引交渉、さらには直接輸出を行っている。ネットワークを通じた情報交換や生産性への効果は、近年あらためて注目を集めている研究テーマである。 また、エチオピアのプロジェクトのうち、とくに労働者についての研究は、World Developmentにアクセプトされた。切花農園に従事する労働者は、教育水準などの人的資本のレベルをコントロールしても、他の産業に従事する労働者に比べて、仕事に対する満足度や賃金の水準が高く、さらに積極的に貯蓄を行っていることが明らかになった。所得が高いのは企業側に離職率を抑えたい狙いがあること、貯蓄率が高いのはワーカー間の交流の密度が高いことが背景にあると考えられる。 さらに、エチオピアの切花農園についても、エチオピアの農業省や切花産業組合、そして各農園と信頼関係を築き、数回にわたる産業の全数調査を行うことができた。貴重なデータであるため、エチオピア政府や世界各国の研究者からもデータ閲覧の依頼をたびたび受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
近年の経済学では、経営スキルと生産性の関係に大きな注目が集まっている。われわれの聞き取りによれば、切花産業の発展とともに各農園の販路の開拓が進み、それと関連して経営業績の格差が拡大しつつある。これを実証するために、各農園の生産に関するデータだけでなく、経営者のスキルや販路なども含むユニークなパネルデータを収集し、経営能力と企業の生産性および産業発展の関係について解明をすすめる。 さらに、心理学者と経済学者の新たな共同研究が各国で行われ、とくに子供の教育における人間の認知・非認知能力の形成について関心が高まっているが、これらの能力が仕事における生産性とどのように関連するかはまだ研究が少なく、よくわからないことが多い。われわれは、切花産業との信頼関係のおかげで、各労働者の認知・非認知能力を計測する実験や生産性を計測する実験を行うことができた。認知・非認知能力と生産性の関係を解明して、学術における貢献はもちろん、開発や教育などの実務においても役立つことを目指したい。 ケニアでは小規模農家の切花生産について貴重なパネルデータを構築した。農民組織を通じた集団的行動により、個人では困難な新技術の採用や、輸出業者との取引交渉、さらには直接輸出を行っている。ネットワークを通じた情報交換や生産性への効果を解明していく。近年の先行研究で注目されている、ネットワークと技術導入、生産の関係についての新たな知見を国際学術誌に出版することを目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年10月、エチオピアの研究協力機関が急遽エチオピア政府主導の大規模調査を実施することになった。そのため、こちらが委託予定であった同国における切花産業の現地調査を行うことができないことが判明した。この調査を学術研究に見合う、高い品質で実施できる調査研究機関は他にはなく、日程調整を余儀なくされた。そこで、当初の予定を延長し、平成29年10月に事前調査、11月に本調査を実施することになった。
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Research Products
(14 results)