2015 Fiscal Year Annual Research Report
レジリエンス強化に向けたインデックス型家畜保険の可能性:実験と構造推定による検証
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26301021
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高橋 和志 上智大学, 経済学部, 准教授 (90450551)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マイクロ保険 / インパクト評価 / 経済政策 / 気候変動 / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究における未解明の問題として、インデックス型保険への加入率の低迷がある。本年度は、その問題に取り組むべく、インデックス型家畜保険購入に影響を与える要因として、価格と製品に対する理解度、リスク選好の3つに特に着目し、これらの効果を測定するための経済実験を行った。価格に関しては、保険プレミアムが0%から80%割引されるクーポンをランダムに配布し、製品理解度に関しては、学習キット(漫画とラジオテープでIBLI商品の概要を説明したもの)をランダムに配布した。リスク回避度は、簡単なラボタイプ実験を調査票内で行い計測した。 結果からわかったことは主に以下の三点である。第一に、保険需要は価格に感応的で、価格が安いほど購入率が高くなる。いったん値下げをすると、それが価格参照点となってしまい、後に保険数理的に公正な価格に戻ったときに、購入率が低まることが危惧されたが、そうした影響はなく、Dupas (2014)の結果と整合的であった。第二に、学習キットを与えられた家計は、われわれが課すIBLIの理解度テストの成績がよく、商品知識が有意に向上することがわかった。しかし、商品知識の改善によって需要が刺激されることはなく、理解不足が保険需要を妨げているのではないことが判明した。最後に、経済理論が予測するように、リスク回避的な家計ほど、保険を購入する傾向にあることがわかった。これらの結果は、海外学術誌に掲載されたほか、一般向けに「経済セミナー」「アジ研ワールドトレンド」などの雑誌や「ブログ」で紹介した。 さらに、インデックス型保険と既存のローカルリスクシェアリングが補完的か代替的か、実証的に考察した論文をケニアで開催されたワークショップで発表し、現在、改訂中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に学術誌掲載も行われ、2本目の論文も投稿準備中である。また来年度にはインパクトに関する論文を新たに書き上げる予定であり、既に着手し始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に書き上げたインデックス家畜保険(IBLI)とリスクシェアリングの関係についての論文を各種学会や研究会で発表し、そのコメントを元に、共著者とともに改訂を続け、年度内に海外学術誌に投稿する。また、IBLIの経済厚生と生計戦略へのインパクトを実証分析を進める。特に、牧畜民のレジリエンスの強化に対するインプリケーションを得るために、IBLI を購入することで、所得変動下でも食料その他の消費の安定が達成され、牧畜家計の厚生水準の向上に寄与しているか分析する。さらに、旱魃などの災害発生時に、資産の取り崩し、児童の通学の一時的取りやめなどの長期的な厚生水準の低下をもたらすリスク対処手段をとらなくて済むようになるか、また、家畜をより遠くへ放牧させる、家畜への投資を増やすなど高収益が見込める行動を採用しやすくなるか分析する。
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Causes of Carryover |
所属先変更に伴う研究環境整備のため、海外出張の予定を1回減らしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は最終年度となるため、これまでの研究成果を積極的に国内外の学会・セミナーで発表する。持ち越された研究費はそのための旅費に充てる。
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Research Products
(5 results)