2014 Fiscal Year Annual Research Report
互助組織の社会経済的機能の変遷と現代的役割に関する比較社会学的研究
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26301028
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
辰己 佳寿子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80379924)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 互助組織 / 村落社会 / 生活改善 / 過疎化 / 出稼ぎ / 集落 / ネパール / 山口県 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に沿って、主軸の調査対象地域である山口県とネパールでの現地調査を実施し、調査チームの連携体制を強化したり、研究の枠組みや方法論について議論したりする研究会やセミナーを開催した。また、調査対象地域の選定のための視察を、インド北部ラダック、宮城県・岩手県、福岡県で実施した。これらの成果・知見は以下のとおりである。 ネパールの調査では、山間・山岳地域では過疎化が進行しているが、携帯電話等の普及により、農村と都市との間、首都に出た他出子間、海外出稼ぎ先とネパールとの間などで互助的なネットワークが形成されていることが把握できた。この調査の成果の一部は、西日本社会学会で報告し「居場所づくりを始めたネパールの女性たち」としてまとめた。 インド北部ラダックにおいては、従来の互助関係に加えて、農村観光への新たな取り組み、女性グループのごみ問題に対する取り組みや僧侶による森林管理等の現代的な課題に対する組織の活動の視察を行った。 山口県の調査では、女性グループが経済的な活動のみならず文化的な活動を始めていること、2013年7月28日の豪雨被災地の自治会、農事組合法人、果樹生産組合、女性グループ等の組織間の互助関係が構築されていることが新たな発見となった。この調査の成果の一部は、やまぐち地域社会学会、世界社会学会議、草の根国際会議で報告し「集落点検を踏まえた女性の活動」としてまとめた。 岩手県では、女性グループが自立の道を歩んでいること、宮城県では、講組織を基盤とした従来の互助関係が成り立っているところは一部の住民の移転があったとしても集落の関係性が強いことが看取できた。福岡県では、支援する側・される側の転換が可能な関係が長期的な互助関係を継続できるとの見解を得た。この成果の一部は「日本社会における相互多重型支援の可能性」としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主軸の調査対象地域である山口県とネパールでの現地調査は、これまでの定点観測の実績があるため計画通りに進んでおり、山岳地域と山間地域の調査地は確定している。副軸の調査対象地域においては、東北やラダック方面はおおよその目処が立った。ネパール国内の平野地域、ネパールの周辺国、九州の調査地選定は、次年度以降に決定する予定であるため、全体的に順調に推移しているものと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年4月25日にネパールにて大地震が起きたため、今後のネパールでの調査に影響がでる可能性がある。2015年度は、地震の被害状況を的確に把握することを優先事項とし、状況に応じて計画を部分的に変更しながら研究を推進していく予定である。
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Research Products
(10 results)