2015 Fiscal Year Annual Research Report
互助組織の社会経済的機能の変遷と現代的役割に関する比較社会学的研究
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26301028
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
辰己 佳寿子 福岡大学, 経済学部, 教授 (80379924)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 互助組織 / 村落社会 / 生活改善 / 過疎化 / 集落 / ネパール / 山口県 / 震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主軸の調査対象地域であるネパールにおいて、2015年4月25日に大地震が起きたことから、本年度の海外調査の計画を一部変更した。海外での調査が変更を余儀なくされたことを受けて、国際的な会議で発表することに重点を置いた。日本国内の調査対象地域では聞き取り調査だけでなくワークショップ等を開催した。具体的な実績は以下のとおりである。 ネパール山岳地域の調査対象地域では、震災直後、血縁・地縁での助け合いが顕著にみられたようである。ある集落では、ほとんどの家屋が倒壊していたにもかかわらず、崩壊した寺院を優先して復旧させた協働行為がみられた。災害時であるからこそ、相互支援の関係性がより明確にあらわれたと考えられる。 山口県では、定点観測を継続させるなかで見えてきた課題を明確化させるために地域社会の未来を考える研究会やワークショップを開催した。また、山口県が主催した「農山漁村女性のつどい」「『輝く女性』支援協議会」「生活改善士研修会」等に参加し、普及員や生活改善士等とのネットワークを構築した。岩手県では、女性組織を支援していた団体が建設的な解散の道を選んだ経緯を踏まえて支援におけるアクターの動態について検討した。福岡県では研究会やセミナーに参加することで九州内での研究者や実践者とのネットワークを広げた。 研究成果の公表については、国内での論文執筆や学会発表はもとより、オーストラリアのアデレード市で開催されたInternational Convention of Asia Scholarsの会議、インドのプネ市で開催されたIndia International Geographical Unionの会議、釜山大学や釜山発展研究院での研究会など、海外での発表に重点を置いた。海外の研究者や実践者からの助言をもとに比較研究の視点を養うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ネパール大震災の影響でネパールの調査計画と海外の比較対象地の調査計画を変更せざるを得なかった。本年度の海外調査は、ネパールでの地震の被害状況を的確に把握することを優先したため、予定していたネパールでの悉皆調査は断念し、翌年度に代替となる調査を実施することとした。また、夏に予定していた副軸の調査対象地域への訪問は翌年度以降に延期することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ネパールでの大地震によって海外調査が遅れてはいるものの、災害時であるからこそ機能する互助組織の存在を把握することができた。ゆえに、調査計画を変更すること自体は、本研究の目的を到達することの障害にはならない。ただし、被災地での調査は、住民がトラウマをもっていたり、援助の格差等で住民間のジェラシー等が生じたりすることもあるため、調査はこれまで以上に慎重に行わなければならない。予定よりも時間を要することになるかもしれないが、状況に応じた調査を実施しながら、本研究の目的を達成していく所存である。
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