2016 Fiscal Year Annual Research Report
Social Policy for the Coordination of Work and Care in Germany
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26301030
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90202176)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ワークライフバランス / 労働時間 / 労働政策 / 働き方改革 / 柔軟化 / ケア / パートタイム / 育児休業 |
Outline of Annual Research Achievements |
9月までの間、ドイツ文科省からの招聘によりベルリン・フンボルト大学国際研究所のフェローとしてベルリンに滞在しながら研究を進めた。フンボルト大学図書館における文献・資料収集と分析を進めたほか、ドイツ家族・高齢者・女性・青年省や経営者団体、企業・サービス労働組合、フンボルト大学関係者などへのインタビュー・資料調査を行った。それにより、ドイツの労働時間の柔軟化の政策と実態が明らかになってきただけでなく、親時間(育児休業)とパートタイムでの働き方、また時間を柔軟化した際の具体的な処遇のあり方(特に賃金・労働時間・社会保険・企業内福利・昇給・昇進・昇給・キャリア形成・労働組合ないし従業員代表委員会への関わり)についても徐々に制度上および実態上の特質が明らかになってきた。フンボルト大学の大学関係者および女性が多く働く小売業に着目し、これらを事例研究としたことにより、労働時間柔軟化と処遇との関係が、特に日本との対照的な関係性とともにクリアに浮かび上がってきたと考えられる。またこれらの制度が生まれた歴史的な背景についての文献資料調査も行った。 これらの研究成果にもとづき、5月には国際研究所主催の国際ワークショップにおいて報告を行ったほか、6月にはフンボルト大学でのシンポジウムでの報告を行い、さらに9月にはベルリン社会科学研究センターにおいて報告を行った。帰国後は社会政策学会でも報告を行った。現在これらの報告を英語論文として完成させる途上にあり、出来上がり次第国際的なジャーナルに投稿していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの文献資料調査・インタビュー調査から、育児・介護・高齢時における労働時間柔軟化の実態とその具体的な処遇のあり方が明らかになってきた。企業内の具体的な時間柔軟化の事例についての収集も進んだ。これによって仕事とケアの調整におけるドイツの時間政策のあり方の全容が徐々に把握できたと考える。職場レベルでのインタビュー・アンケート調査については、さまざまな関係機関また研究者に働きかけていただいたものの、十分に行うことができなかったが、これについては別の機会を待ちたい。 ドイツおよび日本において多くの報告を好評のうちに終えることができたことで、これらの研究の意義を再確認することができたため、今後はこの研究の最終段階である論文・著書の執筆、また国際シンポジウム・ワークショップの開催を通じて、この研究成果を広く社会・世界に還元していくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究の最終年度を迎えることになるため、これまでの研究調査を踏まえた総括的な作業を今後進めていきたい。特にドイツにおけるパートタイムについての論文、ミニ・ジョブについての論文、介護休業についての論文、小売業での働き方についての論文をまとめるとともに、日本で広く研究成果を知らせるために著書を執筆し、現在安部内閣でも重要テーマとなっている「働き方改革」の議論にも関係する形で成果を還元していきたい。またこれまで英語で報告してきた経緯があるため、日本語だけでなく、英語での論文や投稿、本の執筆を行っていく予定である。 また研究の成果を国際シンポジウムとして発表するため、研究計画書の予定どおり、ベルリン社会科学研究所前所長のユルゲン・コッカ氏やドイツ経済社会研究所前所長のハルトムート・ザイフェルト氏をはじめとする著名な国際的研究者を招聘し、東京・筑波など複数の場所においてシンポジウムやワークショップを企画していく予定である。 アメリカのハーヴァード大学におけるハーヴァード・イェンチン研究所の客員研究員として8月から招聘されることとなったため、アメリカ滞在中にこうした執筆活動およびシンポジウムの企画・実務等を進めていくつもりである。
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Causes of Carryover |
ドイツ往復の航空券や滞在中の日当が、ドイツ文科省から支払われることになったため、海外調査出張のための費用が大きく抑えられたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この研究の総括として行う予定の国際シンポジウムのため、複数のドイツ人研究者の招聘や会場の確保、通訳者への謝金等、かなりの金額がかかることが予想される。そのために繰り越される予算を使用する予定である。
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