2017 Fiscal Year Annual Research Report
Social Policy for the Coordination of Work and Care in Germany
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26301030
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田中 洋子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90202176)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ワークライフバランス / 女性労働 / 労働政策 / パートタイム / 労働時間 / 柔軟化 / ケア / 未来の仕事 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度中に招聘フェローとして滞在していたベルリン・フンボルト大学国際研究所での研究をまとめるため、研究史および集めた資料の整理・分析を進めた。その成果の一端を5月に社会経済史学会、6月に社会政策学会において報告した。それと平行して日本企業各社におけるインタビュー調査を行い、日独の現状比較分析を進めた。 8月よりハーバード・イェンチン研究所に客員研究員として招聘され、アメリカのケンブリッジに長期出張で滞在することとなった。ハーバード大学では、ライシャワー日本研究所のアンドリュー・ゴードン、メアリー・ブリントン、ハーバード・ビジネス・スクールのジョン・トランバー、ヨーロッパ研究所のピーター・ホール、キャシー・シーリン、またMITのトマス・コーカン、エリザベス・レイノルズ(「未来の仕事」タスクフォース・ディレクター)、またハーバード滞在中のドイツ労働・社会省のマックス・ノイファイントらと交流・議論を重ねてきた。この中で国際比較の論点を深め、また将来の働き方・仕事のあり方について、デジタル化・テレワークやフリーランス・自営化などについても新たな研究動向や知見を得ることができた。 10月には社会政策学会共通論題座長として帰国し、そこでのテーマであった日本とドイツの労働時間の柔軟化について3月に論文としてまとめ、6月に論文として公刊される予定である。11月にはハーバード・イェンチン研究所で日独比較の報告を行い、さらに12月にはベルリン日独センターの招待により、日本とドイツの女性労働をテーマとしたシンポジウムで報告を行った。また1月には、これまでの研究史と資料・統計の整理にもとづき、一本目の英語論文を本の編集者に提出し、現在校閲作業にはいっている。2月には日本語論文を完成させて投稿し、現在査読にかかっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに文献や資料の収集、インタビュー調査はだいたい出揃ってきた段階にある。現在はそれらをどのように国際比較した社会経済史的文脈の中に位置づけることができるか、さまざまな議論を通じて模索しているところである。同時にすでに集めた資料と読んできた研究史にもとづいて、現在、英語と日本語の双方の論文の執筆をかなりのハイペースで継続しているところである。 ドイツやアメリカ合衆国では、日本語でいくら論文を出してもその内容どころか存在すら認めてもらえない状況が存在している。そのため英語での論文執筆、あるいは少なくとも日本語論文の英語への翻訳が必須で求められており、それを英語の査読ジャーナルに投稿して認められる必要がある。現在遅ればせではあるが、英語の本として出版する予定の論文原稿を仕上げ、現在その校閲作業が進行中である。また英語論文についても一応完成し、校閲をへて投稿を行おうとする段階にはいっている。ようやく発信への一歩を踏み出しつつあるところまで来ている。 同時に日本においては複数の学会で学会報告・座長報告を好評のうちに終えることができ、それにもとづいて日本語論文を二本完成させることができた。そのうち一本は査読誌に投稿中である。英語で論文を発表したとしても、ほとんど日本人研究者からは存在を認められず、論文が読まれることも稀なため、日本向けには日本語論文が必須の状態だからである。 今後も、こうした日本と世界の間のジレンマを乗り越えるため、できる限り日本語と英語の双方で研究内容を学会やシンポジウムで発表し、それと同時に日本語と英語で学術雑誌や本等でも発表していけるように準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
この研究の最終年度を迎えるため、これまでの研究調査、また研究の位置づけについての特に最近の研究史を踏まえての総括的な執筆を精力的に進めていく予定である。特に、文献・資料は集まっているにも関わらず、これまでまだまとめてきれていない部分について、一つ一つ論文にまとめる作業を進めていく。「働き方改革」が進行中である現在、そのための議論に資するためにも、平成30年度中に論文の発表、できるならば本の執筆まで進めていくことを希望している。 8月までハーバードでの執筆活動を続けたあとは、再度ドイツのベルリン・フンボルト大学に戻り、ドイツの資料の最終確認、また補足インタビューを行うとともに、関連する企業へのインタビューも行う予定である。 帰国後は10月に、これらの成果を社会的に還元するためのイベントを企画している。ハーバード・イェンチン研究所に一年間招聘されることになったため、平成29年度に行う予定であった国際ワークショップの開催を見送り、平成30年度に延期した。そのため現在、平成30年秋にドイツのベルリン自由大学教授でベルリン社会科学研究所所長だった経済史研究の巨頭ユルゲン・コッカ氏を招聘し、国際ワークショップ、および広く公開した研究講演会の開催を企画中である。 今後はベルリン・フンボルト大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学において築いた研究分野の近い親密な研究者ネットワークを利用しつつ、より大きな国際共同研究に向かって研究を進展させていきたい。
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Causes of Carryover |
平成29年度途中からハーバード・イェンチン研究所に客員研究員として長期招聘されたため、平成29年度中に予定していた国際ワークショップの開催、それに伴う外国人研究者の招聘を平成30年度に延期することになったことにより、次年度使用額が生じた。平成30年度秋にこれを行う予定であり、この開催経費等に充てる。また平成29年度中のドイツへの渡航については、日本学術振興会の招聘によって費用がまかなわれたことも次年度使用額が生じた一因である。
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