2016 Fiscal Year Research-status Report
日米国際結婚夫婦の離婚に関わる心理的要因についての研究
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26301034
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Research Institution | Tokyo City University |
Principal Investigator |
矢吹 理恵 東京都市大学, メディア情報学部, 准教授 (30453947)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際結婚 / 国際離婚 / 日米 / 質的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下の3点である。1. 在米の日米国際結婚が継続する場合と破局にいたる場合とでは、アメリカ人夫と日本人妻の生涯発達過程の何がどう異なるのかを明らかにすること、2. 国際結婚に至った夫婦関係の親密性を高める社会的・心理的要因を抽出すること、3.国際離婚に夫婦を向かわせる社会的・心理的要因を析出することである。 2016年は、3.に焦点をあててデータ収集と質的分析を行った。研究調査協力団体の紹介を得て、国際離婚経験のある日本人女性、および国際離婚に向けて協議中の日本人妻の対象者をスノーボール形式で募り、ライフストーリー法を用いて、一人当たり3回から5回の聞き取り調査を実施した。2015年の調査で、「夫婦の社会思想的・宗教的一致」が夫婦関係を円滑にする要因の一つとして析出されたため、2016年の調査では夫婦関係の破局について「社会思想的・宗教的不一致」を主訴としている対象者を中心に探し、夫と妻のライフストーリーの文脈にうめこまれた夫婦関係の破綻のプロセスについて、データを収集した。現在まで明らかになっていることは、自らの意志で信仰を選び、宗教的実践を目的として渡米した信仰者一世の日本人妻と、代々その宗教を信仰していて宗教が所与のものであった信仰者二世、三世のアメリカ人夫とでは、1.宗教的信念の強さと、2.宗教的文化実践についての熱意が異なっており、それが結婚当初から夫婦間葛藤課題となっていた。家族も友人も捨てて渡米した信仰者一世の日本人妻は、夫の出会いの場も結婚後のコミュニティも教会に依拠していた。教会の教えにより自己鍛錬をし、教義を忠実に家庭文化に反映させようとする信仰者一世に日本人妻と、その意欲があまりない信仰者二世、三世のアメリカ人夫の間で葛藤課題が調整されることはなく、夫婦関係の破綻に至っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は以下の3点である。1. 在米の日米国際結婚が継続する場合と破局にいたる場合とでは、アメリカ人夫と日本人妻の生涯発達過程の何がどう異なるのかを明らかにすること、2. 国際結婚に至った夫婦関係の親密性を高める社会的・心理的要因を抽出すること、3.国際離婚に夫婦を向かわせる社会的・心理的要因を析出することである。 2016年は、3.に焦点をあててデータ収集と質的分析を行った。研究調査協力団体の紹介を得て、国際離婚経験のある日本人女性、および国際離婚に向けて協議中の日本人妻の対象者をスノーボール形式で募り、ライフストーリー法を用いて、一人当たり3回から5回の聞き取り調査を実施した。2015年の調査で、「夫婦の社会思想的・宗教的一致」が夫婦関係を円滑にする要因の一つとして析出されたため、2016年の調査では夫婦関係の破局について「社会思想的・宗教的不一致」を主訴としている対象者を中心に探し、夫と妻のライフストーリーの文脈にうめこまれた夫婦関係の破綻のプロセスについて、データを収集した。現在まで明らかになっていることは、自らの意志で信仰を選び、宗教的実践を目的として渡米した信仰者一世の日本人妻と、代々その宗教を信仰していて宗教が所与のものであった信仰者二世、三世のアメリカ人夫とでは、①宗教的信念の強さと、②宗教的文化実践についての熱意が異なっており、それが結婚当初から夫婦間葛藤課題となっていた。家族も友人も捨てて渡米した信仰者一世の日本人妻は、夫の出会いの場も結婚後のコミュニティも教会に依拠していた。教会の教えにより自己鍛錬をし、教義を忠実に家庭文化に反映させようとする信仰者一世に日本人妻と、その意欲があまりない信仰者二世、三世のアメリカ人夫の間で葛藤課題が調整されることはなく、夫婦関係の破綻に至っていた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年に引き続き①国際結離婚に向けて協議中の日本人妻と、②国際離婚成立後にアメリカに残り自活している日本人女性のデータを集積する。①については、国際離婚を引き起こす家族心理学的要因を思想的・宗教的要因を含みながら広く考察する。②については、国際離婚に向かうプロセスと離婚後に日本人妻が直面する心理的・経済的困難についてさらに深く聞き取り、どのような心理的・社会的サポートを彼女達が欲しているかを検討する。さらに、離婚後に心理的・経済的自立が出来ているケースについては、何がそれを可能にしたのかについてのデータを集積する。破局に向かう夫婦関係や離婚とはプライベートな領域のため、語りのデータ提供者を探すことは容易ではない。対象者の数を増やし表面的なデータをとるよりも一人の対象者に対して時間をかけて何度も調査を行うことで、より深いデータを収集していく。
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Causes of Carryover |
①研究代表者の父親が研究初年度に死去したため、当初に計画していた海外調査の一部を実施できなかったため。②海外における国際離婚の調査であるため、対象者の母集団が小さい。さらに離婚という私的領域についての語りを収集するために、対象者を見つけるのに想定以上の時間がかかったため。③離婚体験を対象者のライフストーリーの文脈で分析するため、対象者のとの間にラポールを築きつつ、一人当たり何回も面接を行う必要があり、想定以上の時間がかかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ライフストーリーを聞き取りつつ、語ることが感情的に容易ではない離婚経験や夫婦関係の破綻のプロセスについて詳細に対象者に語ってもらう研究である。そのため、こちらから聞きたいことだけを聞き取って結果を出すワンショットサーベイではなく、対象者とのラポールを何よりも大切にし、対象者との信頼関係を元にデータを集めて行く。そのため本年度も、一回の聞き取りに十分な時間をとりつつ、同じ対象者のもとに何回も足を運ぶ研究スタイルをとっていく。
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