2016 Fiscal Year Annual Research Report
社会主義国の大学運営における党組織の役割変容に関する比較研究
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26301040
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
近田 政博 神戸大学, 大学教育推進機構, 教授 (80281062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 社会主義 / 大学運営 / 大学評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、市場経済化が進行している社会主義国の大学において、これまで政治的に厳しく制限されてきた「アカデミック・フリーダム」、すなわち大学における「運営の自由」、「教育・研究の自由」、「学ぶ自由」がどこまで認められうるのかを、現地調査によって検証することである。本研究の調査対象は、市場経済化が進行あるなかで共産党による実質的な一党支配体制を今なお堅持している中国とベトナムである。 平成28年度は「教育・研究の自由」についてベトナムで現地調査を行った(一部予定変更)。具体的には、教育・研究活動への政治的制約はどのような論理、手段に基づいて行われているか。市場経済化は教育・研究活動にどのような影響を与えているのか、大学評価における内部質保証の仕組みを整える上で、運営上の自主性がどこまで保証されているのかを考察した。 調査の結果、学内党委員会の機能は「政治統制の機関」から、構成員間の「既得権益の利害調整機関」へと変容しつつあることを確認できた。その成果は、近田政博、服部美奈、乾美紀「ベトナム、インドネシア、ラオスにおける教育計画の特質と課題」(日本比較教育学会、大阪大学、2016年6月26日)にまとめて発表した。発表した内容を精査して、論文「東南アジアの教育計画と質向上のための課題」にまとめ、2017年中に出版予定である(山内乾史編『現代アジアの教育計画改訂版』学文社所収)。また、本調査の結果をまとめ、2017年6月の日本比較教育学会において自由研究発表「ベトナム高等教育における質保証制度の特質と課題」を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成28年度は「教育・研究の自由」について、中国で現地調査を実施する予定であったが、実施できなかった。その理由は、習近平政権下において大学に対する「教育・研究の自由」についての締め付けが強化されており、調査依頼を固辞されるケースが続出したことである。また、先方が調査受け入れ可能だと打診してきた時期は、報告者が本務校で授業があり、渡航することができなかった。別の理由として、報告者は本務校で全学委員会の委員長に任命されたため、夏休みなどの休業期間中であっても本務校の運営業務に忙殺されるようになり、この科研費の研究に時間を十分に投入することができなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は「学ぶ自由」に絞り込んで現地調査を行う。大学生の履修選択や履修内容において政治的な統制は行われているのか、どのように統制されているのかを現地調査によって考察する。調査対象者は各大学の教務処長、高等教育研究者、大学生である。政治思想科目の指導要領、シラバス、教科書、学生便覧、学生の党組織に関する規程等である。また、今年度は本科研の最終年度であることから、これまでの研究成果をとりまとめ、日本比較教育学会等において発表を行う。
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Causes of Carryover |
5573円の残額は当初は文具購入をする予定であったが、別の予算で文具を購入したために、次年度繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査に必要な消耗品の購入に充てたい。
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Remarks |
上記サイトは大学改革支援・学位授与機構が作成したブリーフィング資料であるが、作成にあたっては報告者が協力・助言を行った。
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