2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国の新型城鎮化政策による農民工の都市住民化動向と低炭素まちづくりへの影響の調査
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26303003
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
張 峻屹 広島大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (20284169)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 慎治 広島大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (00346529)
溝上 章志 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20135403)
森川 高行 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30166392)
應 江黔 岐阜大学, 地域科学部, 教授 (30242738)
原田 昇 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40181010)
藤原 章正 広島大学, 大学院国際協力研究科, 教授 (50181409)
安藤 良輔 (宿良) 公益財団法人豊田都市交通研究所, 研究部, 主幹研究員 (70251121)
沈 振江 金沢大学, 環境デザイン学系, 教授 (70294543)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国新型城鎮化政策 / 農民工 / 雇用 / 移住 / 生活 / エネルギー消費 / アンケート調査 / 行動モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
中国のエネルギー消費動向を明らかにし、来るべき農民工による新しい都市化時代に備える低炭素まちづくり対策の提言を狙いとして、新型城鎮化政策による農民工の都市住民化動向と低炭素まちづくりへの影響を体系的に、マクロ的な視点とミクロ的な視点から調査するのは本研究の目的である。今年度において、ミクロデータの追加収集及び、研究目的達成のためのより精緻な調査・分析が主な研究内容である。具体的には、農民工のエネルギー消費実態を明らかにするため、大連市民を対象とするアンケート調査を追加し、貴陽市と重慶市の農民工と市民の両方を対象とするアンケートを新規に実施した。その結果、985人の農民工及び671人の市民から有効な調査票を回収できた。これらのデータを用いて、潜在変数を有する構造方程式モデルに基づき、(1)現在の居住環境が農民工の居住、通勤及びエネルギー消費に与える影響、(2)新型城鎮化政策下における農民工の都市での定住意識の影響要因、(3)農民工の定住意識と将来のエネルギー消費増加との関係性について定量的な分析を行った。その成果を交通環境分野Transportation Research Part Dのトップ雑誌に投稿済みで、現在査読中である。一方、使用した構造方程式モデルは複雑な因果関係を柔軟に扱うことができる反面、統計的な関係をもとにしたアプローチであるが故に、農民工の真の意思決定メカニズムを反映できていない欠点を有している。この欠点を克服するための方法論を開発する必要性が生じた。そこで、今年度において、エネルギー消費を居住、交通、時間利用や消費支出などに関連づけた一連の世帯意思決定モデルを開発し、世界トップレベルの雑誌(Energy, Environmental Planning Bなど)に論文を掲載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
エネルギー消費を居住、交通、時間利用や消費支出などに関連づけた一連の世帯意思決定モデルを開発し、世界トップレベルの雑誌(Energy, Environmental Planning B, Transportation Research Part Dなど)に論文を掲載することができた。そして、1700弱のアンケート調査データを用いて、農民工の都市での定住意向とエネルギー消費との関係に存在する各種複雑な因果関係を同時扱うことのできる構造方程式モデリング分析を実施することができ、その成果を交通・環境の世界トップレベルの雑誌Transportation Research Part Dに投稿できた(現在査読中であるが、1回目の査読に合格している)。
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Strategy for Future Research Activity |
農民工の意思決定メカニズムを反映したモデリング手法を活用し、農民工の都市での定住意向とエネルギー消費との関係に存在する各種複雑な因果関係を同時に扱うことのできる連立方程式型モデリング手法の開発を進め、マクロデータに基づくDPSIR+C分析も進め、本研究の集大成を図るべく研究活動を強化する。DPSIR+C分析の考え方に従うと、農村の大規模な余剰労働人口(駆動力:D)の発生によって、多くの出稼ぎ労働者が都市に押し寄せていく(圧力:P)。これらの農民工が都市の発展(状態:S)を支える一方、中国特有の戸籍制度の影響もあって、農民工と都市住民との格差が広がるかもしれない(S)。その結果、社会的不安(インパクト:I)を招きかねず、このインパクトを緩和するための農民政策を講じるようになる(反応:S)。政策立案には、政府、企業や市民社会などの能力(C)が影響する。一方、出稼ぎの農民工の多くは都市住民になると、エネルギー消費が増える(圧力:P)と懸念され、大気汚染の悪化(状態:S)をもたらしてしまい、人々の健康被害やQOLなどにも影響(インパクト:I)を及ぼすかもしれない。上記の問題連鎖を同時に扱うDPSIR+C分析をマクロデータに基づき実施する予定である。一方、新型城鎮化政策の実施内容に変化(農民工の市民化の条件が緩和された)が生じたため、アンケート調査を新規に実施する必要はある。本来、農民工の行動変化を追跡できるパネル調査の実施が望ましいが、調査実施管理上の問題、農民工問題の政治的な特性、予算上の制約があり、研究計画時に提案したパネル調査の実施が難しくなった。そこで、農民工の行動変化を疑似的に表現できる表明選好調査を実施する予定である。上記の新規収集データを含む各種データを用いて、中国の新型城鎮化政策による農民工の都市住民化動向と低炭素まちづくりへの影響を体系的に分析する。
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Causes of Carryover |
2名の共同研究者は学会参加のための旅費を使う予定であったが、当該学会はほかの研究経費で支払った学会と同じであったため、本科研費を使わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本科研のための学会参加のための旅費に使う予定である。
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Remarks |
(1)は本科研のHPであるが、(2)は本科研の準拠理論である「市民生活行動学」の研究HPである。
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Research Products
(17 results)