2015 Fiscal Year Annual Research Report
海を越えて来た古墳のガラスの起源をその場分析で明らかにする
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26303006
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 教授 (90155648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 善也 東京理科大学, 理学部, 助教 (90635864)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非破壊分析 / 蛍光X線分析 / ガラスの起源 / 古代ガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
弥生、古墳時代の古墳から膨大な数のガラス玉が出土するが、すべて海外からの輸入品である。これらのガラスがどこから来たかを分析化学的に解明することが本研究の第一の目的である。東北、北海道のガラスは未分析で、特にシベリアからの北方ルートの存在の有無は研究の空白地帯である。そこで、ロシアからの出土ガラスを分析し、北海道のガラスと比較することが2015年度の第一の目標であった。幸い、ロシア沿海州のウラジオストクの科学アカデミーで調査する機会に恵まれ、ロシア沿海地方で出土した7~8世紀に年代づけられる古代ガラス33点と12~13世紀に年代づけられる中世ガラス94点の分析が実現した。 一方、北海道の出土ガラスの分析も実施でき、続縄文文化期に位置付けられる朝日遺跡(4~5 世紀)と, 続縄文文化期から擦文文化期初頭に位置付けられる大川遺跡(7 世紀後半~8 世紀)で出土したガラスビーズ102点を分析した。アイヌ文化期では、北海道余市町(大川、大浜中、入舟遺跡)のガラス159点、瀬棚町(南川2遺跡)のガラス17点、釧路市(下仁々志別遺跡)のガラス66点である。続縄文文化期の北海道では本州以南と同様の起源を持つガラスが流通していたことが明らかになり、本州から北海道にガラスが移動していた可能性が高い。一方、7,8世紀のロシア沿海地方と北海道では、ガラス流通の様相に違いが認められた。アイヌ文化期のカリ石灰ガラスで、本州にないZrの少ないタイプが大川遺跡と沿海州で共通して出土していることが判明し、北海道へ本州を経ない北からのルートの存在の可能性が明らかになった。 前年度に引き続き、関東の古代ガラスの化学組成分析をおこない、東日本における古代ガラスの流通について検討を進めた。また、松山のびいどろ・ぎやまん・ガラス美術館で、江戸のガラスの分析調査を昨年に続いておこない、化学組成による特性化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ウラジオストクで沿海州出土ガラスを分析できたことは、日本の古代ガラスの起源を考える上で、北からのルートに突破口ができたことで、本研究の目標達成に大きな前進である。あわせて、北海道の古代ガラスの分析も実現したことは、北のルートの研究で極めて重要であり、本年度は大きく研究が進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度もひきつづき、ロシアのハバロフスクで古代ガラスの分析調査をおこなう計画であり、北方ルートの解明につながる大きな成果がえられるであろう。その他、内モンゴル自治区と、インドで分析を計画しており、海のシルクロード、陸のシルクロード双方について、データーの蓄積ができる予定である。国内的は、長崎のガラスの分析を申請しており、九州への南からのルートの解明をめざしたい。
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Causes of Carryover |
古代日本における、ガラスの日本(北海道)への北からの流入の可能性が考えられることから、2015年度にロシアのガラス資料の調査を実施することを計画し、モスクワの歴史博物館に対して調査を依頼したが、許可が得られず実現できなかったため、調査予算が残り次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
古代日本における、北海道へのロシア極東からのガラスの流通を立証するために、2015年度ウラジオストクで沿海州のガラスを分析することができ、ガラスの日本への北からの流入の可能性の一端を解明できた。本年度は、さらに確証を得るため、新たなロシアの調査地として、繰り越し金を用いてハバロフスクの調査を実施することを計画している。本調査により、北海道へのロシア極東からの流入を本格的に解明することが期待できる。
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