2014 Fiscal Year Annual Research Report
ポストMDGsに向けた新たな水へのアクセス指標の開発と水アクセス改善手法の提案
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26303013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
滝沢 智 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10206914)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 安全な飲料水 / 地下水水質 / フッ素 (タイ) / ヒ素 (ベトナム) / 浄水処理 / 家庭内水処理 / MDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
MDGsの安全な飲料水の供給に関する代替指標として、WHOとUNICEFの共同監視プログラムでは「改善された飲料水」を指標として用いている。しかし、「改善された飲料水」は、飲料水供給施設の構造上の分類に依存しており、それらの施設によって供給される飲料水の水質の安全性を担保するものではない。そのため、「完全されたが安全ではない」飲料水を使用している人口が相当な割合存在する可能性が指摘されている。そこで本研究では、「改善された飲料水」の指標としての問題点を、文献・資料のレビューにより精査し、改善された飲料水と安全な飲料水との差異が生じる原因を検討した。また、WHOとUNICEFの迅速飲料水水質評価(RADWQ)では、糞便性大腸菌、砒素、フッ素、硝酸性窒素の4つの指標を用いて、WHOの飲料水基準への適合性について検討した事例がある。そこで、本研究ではこの事例を参考に、調査対象地域に固有の飲料水水質に関する水質問題を精査し、各地域に合った水質調査指標を採用した。すなわち、タイのチェンマイでは、フッ素による健康被害が知られていることから、住民の水利用実態に関するアンケート調査を行うとともに、フッ素と大腸菌についての調査を行った。その結果、フッ素濃度が高い地下水を利用している住民が相当な割合で存在することや、安全とされているボトル水中にもフッ素濃度が高いものがあることが明らかとなった。また、ベトナムのハノイ市では、家庭内での浄水装置(PoU)の普及状況を考慮した、安全な水の普及率について、大腸菌とヒ素を指標とした推定方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDGs対象国におけるMDGs達成状況のレビューを行い、MDGs未達成地域の特徴と原因を解析した。また、タイとベトナムにおける、改善された飲料水と安全な飲料水の格差を評価した。新規水源としてのボトル水や家庭用の水処理装置の普及状況と、それらの処理性能について、タイとベトナムで評価した。また、水道水質についても評価を行った。これらのことから、平成26年度の研究目的の達成に必要な項目をすべて実施したことから、上記の自己点検評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に続いて、拡大迅速飲料水水質評価(eRADWQ)をタイ、ベトナム、ネパールなどアジア太平洋諸国において実施する。各地域において水利用の実態に違いがあり、また、異なる水質問題を抱えていることから、それらの実態に即したeRADWQの方法を検討する。 また、調査対象国における新規水源(ボトル水、海水淡水化、および家庭用の水処理装置(HWTS))の普及状況と、それらの処理性能・水質評価,安全な飲料水供給のための課題抽出と技術的な解決策について検討する。 WHOは水道普及までの暫定的な方策としてHWTSを推奨しているが、HWTSを安全な水供給方法と位置付けるには、安価で入手可能なだけでなく、正しい方法で使われているかどうかを評価する必要があるとしている。そこで平成27年度は、本研究の上記対象国において、HWTSの種類と普及状況、使用状況、処理性能などについて調査を行い、安全な飲料水に合致しているかの評価基準を提案する。同時に、各国で文献・データの収集を行う。 また、多くの国でボトル水が飲料水として普及していることから、その普及状況、水質などの課題について、現地ヒアリング、文献データの収集、並びにサンプル分析を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、水利用実態調査などを目的として複数の海外現地調査を予定していたが、現地共同研究機関の協力により、渡航する回数を少なくしても当初予定した調査データが得られることが判明した。このため海外旅費の使用額が減少した。また、現地調査において、水サンプルの分析に必要な機器も現地調査機関の協力により使用が可能になったことから物品費を削減することができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は、海外現地調査の回数が増加する。また、国内の研究関連情報の収集を行うため、旅費として使用する予定である。また、これらの調査において、主に水質分析関連の物品費が増加することが予定されているため、物品費についても使用する予定である。
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