2016 Fiscal Year Annual Research Report
同位体年輪分析による落葉・常緑熱帯林の気象・生理的環境応答の長期変動履歴の解明
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26304004
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
吉藤 奈津子 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林防災研究領域, 主任研究員 (80514223)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高梨 聡 国立研究開発法人森林総合研究所, 森林防災研究領域, 主任研究員 (90423011)
松尾 奈緒子 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (00423012)
田中 延亮 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (10323479)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 熱帯林 / チーク / 同位体年輪 / 形成層 |
Outline of Annual Research Achievements |
落葉熱帯季節林サイトの樹木(チーク)を対象に、同位体年輪が気象変動と生理的環境応答の履歴をどのように反映しているのか明らかにすることを目指し、同位体年輪の分析対象である樹幹木部がどの時期に生長し炭素を蓄積するのかを特定することを目的として、形成層活動や木部組織の生長過程を明らかにした。また、タワーフラックス観測と降水・葉の同位体分析を継続して長期データセットを整備するとともに、新たに篩液の採取と同位体分析を開始した。 チーク2個体の樹幹から形成層と当年の年輪を含む木部辺縁部を定期サンプリングして顕微鏡観察を行った結果、形成層は展葉開始初期に活動を再開して早材の形成が進み、順次木化が進む様子が観察された。雨季中盤の7月末には晩材の形成へ移行した。晩材の形成がいつ終了するのかについては今後の解析が待たれるが、樹幹木部組織としての炭素の蓄積は主に雨季の前半に行われると推察される。また、タワーフラックス観測を開始した2006年から2014年までのNEE、RE、GPPを推定し、同位体年輪との比較を行うためのデータセットを整備した。同位体年輪の形成に関わる要素として、降水と葉の定期サンプリングも継続し、酸素・炭素安定同位体比のデータの蓄積と季節変動の解明を進めた。篩液については異なる季節に計三回の採取を行い、現在同位体比分析を進行中である。以上の成果とデータセットは、同位体年輪がどのように気象・生理的環境応答を反映しているのかを解明するための重要な基礎情報となり、今後比較解析を進めることによって、同位体年輪を用いた過去の気象・生理的環境応答履歴の抽出に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28年度計画の主要な課題である、樹幹木部がどの時期に生長し炭素を蓄積するのかを組織観察により特定するという点について、おおむね順調な進捗がえられたため。また、各種データセットの整備も進んだため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、現地観測タワーでの気象・フラックス観測と葉面積指数モニタリングの維持・継続とデータベース化、雨・葉・木部・木部抽出水のサンプリングと酸素・炭素安定同位体比分析を行い、出来るだけ長期のデータベースを作成する。長期タワーフラックスデータベースと雨の同位体比データを基に生理的環境応答指標を算出して、同位体年輪及び樹木から採取した各サンプルの同位体比変動との比較を行う。特に、H28年度に形成層・木部組織の顕微鏡観察により木部生長時期の特定を行ったH28年形成の樹幹部年輪について、詳細な比較を行う。そのための木部コアサンプルを年度初めに採取する。これらの解析結果から、気象や生理的環境応答の変動が樹幹木部の酸素・炭素安定同位体比プロファイルにどのように反映しているのかを解析する。
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Causes of Carryover |
初年度にウルトラミクロ天秤等の購入を計画していたため初年度に多くの予算を割り当ていたが、助成金交付額が申請額より減額されたため購入を断念したので、初年度に多くの残額が生じた。一方で、H27年度以降、MaeMo熱帯季節林の試験地の維持と気象・フラックス観測の維持・メンテナンスのため、計画時に想定した以上の予算が必要となったため、初年度に発生した残額をH27以降のそれに充てることとした。H27、H28年度にその一部を使用したが、H29年度に必要な分が次年度使用額として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
熱帯季節林サイトの維持・メンテナンス・サンプリング継続のための費用に充てる。
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Research Products
(10 results)