2015 Fiscal Year Annual Research Report
環太平洋地域における周北極高山植物の起源とベーリンジア・レフュジア仮説の検証
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26304013
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸口 浩彰 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (70206647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 啓 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (70580405)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 周極要素植物 / 高山植物 / ベーリンジア / 植物系統地理 / 第四紀 / レフュジア / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、米国アラスカ州の首都:ジュノーを拠点にして、近隣の高山帯にアプローチして研究材料を採集した。この場所は、太平洋に面したアラスカ州の最南端部にあたり、降水量が多い地域である。そのために、これまでに収集調査してきた北海道やカムチャッカ、アリューシャン列島などと同じ植物種を多く採集することが出来た。また、ロシア科学アカデミーとオスロ大学の共同研究者からも、周極要素植物の試料が追加提供されて、解析に加えることが出来た。 系統地理解析においては、日本にも生育するツツジ科のコケモモ、エゾノツガザクラを解析し終えることが出来て、直ちに論文化と投稿を行った。周極地域におけるこれら二種に見いだされた共通した特徴は、分布の辺縁にあたる日本列島の集団の特異性であった。すなわち、「アラスカからアリューシャン列島、サハリンやシベリア内陸部」にかけての北の系譜と、「北海道や国後島など」の南の系譜に分かれることが示された。これは、分布の辺縁部にあたる日本列島が保有する周極要素植物が、第四紀における気候変動の中で一貫したレフュジアに生き続けたことを示唆している。また、エゾノツガザクラでは同属別種と浸透性交雑を起こしており、これが独自の遺伝子型を保有する一因にもなっていた。 海外調査を終えた下半期においては、アブラナ科のCardamine bellidifoliaの地理構造と、夏期の日長の差異に対応した光受容体遺伝子(フィトクロム)の地理構造を解析を継続中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに研究成果が順調に得られ、学会発表を経て国際学術誌に掲載が進んでいる。業績欄には無いが、投稿中の論文もある。したがって、研究成果を順当に得て、これを国際誌の論文として体現化している、ということにおいては順調に進捗していると自己評価している。「海外学術研究」としての側面としても、アリューシャン列島とアラスカ大陸部を順調に調査が出来ている。これはカウンターパートのご協力に拠るとともに、アメリカ合衆国がABSについて関わらない方針を貫いているため、公園内の手続きを踏みさえすれば、試料の持ち出しや解析において、何の障害も無いことも大きい。 その一方で研究開始当初においては、ベーリンジアの南端にあるアラスカ沿岸部最南部において、日本と同様に独自の遺伝子型が発見できると期待していたが、これについてはサハリンやアリューシャン列島、アラスカ北部と均一な結果が出ている。この点については異なる植物群を使って、さらに検証することを続けたい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度として、引き続きアラスカ州南部の太平洋沿岸部を対象にした収集調査を進める。とくに光受容体遺伝子:PHYEが南北分化をしていることで大きな関心の一つであったCardamine bellidifoliaについて、更に採集地点を増やして、系統地理研究に「自生地の緯度の光環境に対する適応」という側面での研究を加えたい。また、系統地理研究としての対象種における解析を更に増やして、従来とは異なる系統地理構造を見いだしたい
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Causes of Carryover |
理由は二つある。まず一つが、発表した論文を掲載したジャーナル:Journal of Plant Researchが、日本植物学会発行の雑誌で、掲載料金が派生しなかったことである。通常、欧米の国際誌に論文を一本掲載すると、ページチャージ(掲載料金)だけで2,000 USドル(今の為替レートで約23万円)を必要とする。残念ながら日本発のジャーナルなのでインパクトファクターは低いが、このジャーナルに掲載することによって23万円ほどが未使用となった。 第二に、本来はこの年度中に掲載するつもりであった論文が、査読によって時間を要する修正を要求され、この年度中に発行することが出来なかった(現在、再投稿・査読中)。これによって、投稿前の英文校正代金(約5万円)と論文掲載料(23万円)が未使用になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在投稿中の論文が2本あり、いずれもヨーロッパ系の出版元であるので、受理されれば上記のページチャージを要する。また、新規の論文も作成するので、その英文校正代金も必用となる。これらの経費で、次年度に使用する計画である。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Persistent history of the bird-dispersed arctic-alpine plant Vaccinium vitis-idaea (Ericaceae) in Japan2015
Author(s)
Ikeda, H., Yoneta, Y., Higashi, H., Eidesen, P.B., Barkalov, V., Yakubov, V., Brochmann, C., Setoguchi, H.
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Journal Title
Journal of Plant Research
Volume: 128
Pages: 437-444
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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