2014 Fiscal Year Annual Research Report
劇症ウイルス病多発のインドネシアにおける弱毒ウイルス探索とワクチン利用の展開
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26304023
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
夏秋 知英 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10134264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 尚志 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60361614)
村井 保 宇都宮大学, 農学部, 教授 (90284091)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物 / ウイルス / インドネシア / 遺伝子解析 / ワクチン / 防除 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、世界中の様々な農作物でコナジラミ伝搬性ウイルスが猛威をふるっている。我が国でもトマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)とトマト退緑ウイルス(ToCV)が大問題となっていて、インドネシアでもコナジラミ伝搬性ウイルスの劇症系統が大発生し、トマトやトウガラシ、ダイズなどが大打撃を受けている。一方、わが国ではウイルス病防除対策の一つとして、弱毒ウイルス(ワクチン)の利用が広がりつつある。しかし、ワクチン株は他国から輸入すべきでなく、その国で選抜しなければならない。そこで本研究では、ウイルス病激発地のインドネシアで難防除害虫のコナジラミ、アブラムシが媒介する強毒ウイルスの弱毒株を探索し、ワクチンとして圃場レベルで利用する防除法を確立するとともに、強毒株・弱毒株を遺伝子レベルで比較・解析して、世界で通用する弱毒株の選抜法と防除法の確立を目指す。 本年度はまずインドネシアを訪問し、発生するコナジラミ伝搬性ウイルスを採集して分析したところ、わが国ではほとんど発生しなくなったトマトインフェクシャスクロロシスウイルス(TICV)も分離されたので、その全塩基配列を決定し近縁のToCVと比較した。また、わが国でわが国でワクチンとして利用を考えている非虫媒性TYLCVの遺伝子解析を行い、インドネシア株と比較した。さらに、インドネシアで多数の激発圃場を巡って病徴のほとんどない植物体を採集し、海外共同研究者にスポンジ法による無病徴株の維持管理を依頼した。 また、インドネシアの海外共同研究者と「Recent Progress on Research on the Plant virus & Insect Vector Relationship」というシンポジウムを開催し、防除法の確立に向けて意見交換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究遂行の目標は1)弱毒株の探索;2)ワクチンによる防除法の確立;3)弱毒ウイルスの遺伝子の解析と感染性クローンによる弱毒株の保存、の3項目である。申請時は、年に2回ずつインドネシアを訪問して広範囲にわたってウイルス激発地で無病徴株を採集することを計画していたが、予算の関係上、年に1回の訪問しかできなかった点が、1)と2)の課題である無病徴株の探索、維持と弱毒ウイルスの選抜の進展に大きく影響している。しかし、遺伝子解析は順調に進展している。インドネシア側の海外共同研究者の協力により、多数の強毒株および弱毒候補株をインドネシアで採集できたので、そのような分離株の遺伝子解析は順調に進展している。また、わが国の非虫媒性TYLCV株を用いて虫媒決定遺伝子を解明し、感染性クローンを構築した。また、インドネシアのPepYLCV強毒株の感染性クローンも構築した。 よって、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の研究期間は3年間を予定しており、平成27年度も基本的に前述の1)~3)の手順を繰り返し、防除に有効なワクチン株の選抜を目指す。すなわち、ウイルスが大発生しているトウガラシ、トマト、ダイズ、キュウリの圃場で、無病徴株を多数採集する。採集した株をスポンジ法で維持する間に、ウイルスの感染を検定し、弱毒株感染植物を選抜する。選抜した苗を圃場で暴露試験して、干渉効果の強いワクチン候補株を確立する。選抜したワクチン候補株感染植物は、現地圃場において栽培し、強い干渉効果と弱毒性を併せ持つ実用的で有効なワクチン株かを判定する。 一方、多数の病原性が異なるウイルス株を分離し、塩基配列を決定し、ウイルスの弱毒性・強毒性の病原性決定因子を解明する。無病徴株から分離されるPepYLCVの感染性クローンを構築して、強毒株と比較する。また、ToCVやTICVの病原性決定遺伝子や虫媒性決定遺伝子を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
大学の会計が年度末で締め切られる3月~4月も研究を遂行するために、少額ではあるが繰り越した。このような制度ができて、安心して年度末・年度初めも研究が遂行できるので深く感謝している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ウイルス遺伝子の塩基配列を決定するためのシーケンサ使用料や、分子生物学的試薬類の購入費として使用する。
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Research Products
(2 results)