2016 Fiscal Year Annual Research Report
黄砂発生域における草原生態系の菌根共生とグロマリン蓄積
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26304046
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山中 典和 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (20202385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 政秀 千葉大学, 教育学部, 准教授 (00571788)
谷口 武士 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (10524275)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境 / 菌根 / 生態学 / 黄砂対策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は最も降水量の少ないブルガン地域において、植生と菌根共生系の関係解析、及び土壌の固結化を促進するグロマリンの蓄積と土壌団粒との関係性調査を行った。 調査結果より、ブルガン地域の植生に関しては、被食影響の少ない場所では平成26、27年に調査を行ったフスタイ国立公園、マンダルゴビ地域同様、種は異なるものの、同じStipa属植物が優占する植生が見られた。しかし、その被度や植生高は降水量の多いフスタイに比べかなり小さな値を示した。放牧強度が強まるに伴い、Stipa属植物の被度、植生高がフスタイ同様低下した。また出現種数も放牧強度が強まるのに伴い低下した。 これまで実施した3箇所(フスタイ国立公園、マンダルゴビ地域、ブルガン地域)の調査結果で検出されたAM菌DNAを97%の相同性にしたがってOTUに区分したところ、6科(Archeosporaceae, Claroideoglomeraceae, Diversisporaceae, Gigasporaceae, Glomeraceae, Paraglomeraceae)111OTUのOTUが得られ、モンゴルの草原植生に多様なAM菌が存在することが明らかとなった。このうちGlomeraceaeは91OTUとなり、最も優占していた。それぞれの地域においてOTU組成の非類似度(Bray-Curtis指数)を算出し、非計量多次元尺度構成法(NMDS)による解析を行ったところ、いずれの地域においても3つの食害強度の間で群集構造が有意に異なっており、降水量に関わらず家畜食害はAM菌の群集構造を変化させることが示唆された。また、全ての植生帯において、土壌pH、植物根バイオマス、Stipa属の地上部バイオマスはAM菌群集構造と有意に相関した。以上のことから、家畜食害による植生劣化と土壌化学性の変化がAM菌群集構造を変化させると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定通りにモンゴルの降水量傾度の異なるフスタイ地域、マンダルゴビ地域、ブルガン地域における野外調査は終了した。当初は予定していなかった、より降水量の少ないブルガン地域でも、他の2地域同様、放牧の程度による植生劣化の影響に関する調査も実施した。得られたサンプルに関しても、AM菌の群集構造解析が進められ、3箇所(フスタイ国立公園、マンダルゴビ地域、ブルガン地域)のいずれの地域においても3つの食害強度の間で群集構造が有意に異なっており、降水量に関わらず家畜食害はAM菌の群集構造を変化させることが示唆される結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していたモンゴル草原の降水量変化や放牧の程度についての野外調査はほぼ終了したため、今後は、得られたサンプルの分析、解析を進めてゆく予定である。特に資料の分析を夏までに終え、夏にモンゴルで、モンゴルの共同研究者とともに、得られた分析結果の検討を行う予定であり、必要であれば補足的なサンプリングも行うことを計画している。検討の結果をもとにして、残りの期間でデータの解析を進め、論文化を目指す計画である。
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Causes of Carryover |
当初、あと1名のモンゴル現地調査を予定していたが、日程が合わず断念したため海外渡航費用の残額がでた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用としては、モンゴルの共同研究者とともに、得られた分析結果の検討を複数回行う予定である。実際にモンゴルでの研究打ち合わせのための渡航費用として使用を計画している。
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