2014 Fiscal Year Annual Research Report
流行地患者血液を用いた新規伝搬阻止ワクチン候補抗原の有効性の検討
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26305010
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
石野 智子 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (40402680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 真由美 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 助教 (00301325)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マラリア / タイ王国 / 国際研究者交流 / 伝搬阻止ワクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
マラリア伝搬阻止ワクチンは、マラリア制圧の有効な手段として期待が寄せられているにも関わらず、実用化の期待される候補抗原は非常に限られている。申請者らは、ネズミマラリア原虫を用いて伝搬阻止ワクチン候補抗原を見いだしたので、その相同体(PvMGS)が三日熱マラリア原虫の伝搬阻止ワクチン抗原になりうるか検討する。 本年度は、タイ王国の三日熱マラリア患者血清中にPvMGSの特異抗体が含まれるか否か検討する目的で、組換えタンパク質を作成した。三日熱マラリア患者の血液からマラリア原虫を回収し、さらに生殖母体を密度勾配遠心法により粗精製した。ここからmRNAを抽出しcDNAを合成し、これを鋳型にして、分泌シグナルおよびC末端側の膜透過ドメインを除いたほぼ全長のPvMGSに相当するDNA断片をPCRで増幅した。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成システムを用いることでGSTタグに融合させたPvMGS組換えタンパク質を合成することに成功した。 一方で、タイ王国の感染流行地にあるマラリアクリニックを訪問し、7人の患者血液を入手できた。このうちの2つからマラリアゲノムを抽出し、PvMGSの遺伝子配列を決定した。その結果、赤血球感染ステージ表面タンパク質であるPvMSP1の一部では、アミノ酸置換を伴う遺伝子変異が7-10個検出されたのとは対照的に、PvMGS遺伝子にはアミノ酸置換を伴う遺伝子多型は全く見られなかった。さらに多くの患者サンプルの解析が必要ではあるが、PvMGSには遺伝子多型が少ないことが予想される。また、今後PvMGSの抗体価を測定するために必要な患者血清を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度には、三日熱マラリア原虫の伝搬阻止ワクチン候補分子であるPvMGSの組換えタンパク質を大量合成し、これを用いてELISA法により患者血清中のPvMGS抗体価を測定することを予定していた。コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いて組換えタンパク質の合成を試みたが、高い収率での回収が困難であった。そこで、マラリア独特なコドンユセージをコムギで頻度の高いものに変更し、十分量の組換えタンパク質を得ることに成功した。ここに予定より時間がかかったので、患者血清の抗体価測定、および特異抗体の精製は次年度に行うことにした。一方で、予想より多くの患者血液サンプルを入手できたため、予定していなかった遺伝子多型の測定を前倒しで行った。また、以降の解析に用いる血清サンプルも入手できていることから、総合的に判断すると、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度には、既に入手済みの7種類の患者血清サンプルを用いて、ELISA法によりPvMGS抗体価を測定する。特に高い抗体価を示す血清があれば、そこからPvMGS特異抗体を精製し、タイ王国のフィールド調査の際に持参する。クリニックに三日熱マラリア患者が訪問した際には、インフォームドコンセントを得た後に採血し、マラリア感染赤血球とPvMGS特異抗体を混合後、人工吸血法により媒介蚊に吸血させる。約10日後に、十分に吸血した蚊を解剖し、消化管上のマラリア原虫(オオシスト)の数を顕微鏡下で測定する。これにより、PvMGS特異抗体の伝搬阻止効果を評価する。 さらに、患者赤血球に弱アルカリ性の培地(pH8.2)を加え、室温で培養することで、鞭毛放出を誘導するアッセイ方法を確立する。条件を決定できたら、これにPvMGS特異抗体を添加して鞭毛放出を阻害するか否か検証する。また、他の地域からの患者血液も用いて遺伝子多型の解析を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
上述のように、タンパク質合成に予定より時間がかかった為、次に計画していたELISAによる抗体価測定、特異抗体の精製が行えなかった。また、その代わりに前倒しで行った遺伝子多型解析に用いた試薬類は、使用途中のものを用いて行うことができたため、物品費を予定より節約することができた。 旅費に関しては、2-3度タイ王国の感染流行地を訪問できるようにと計画していたが、1度の訪問で当面の解析に十分な7例のサンプルが得られたこと、また、その期間以降、予定していた地域でのマラリア発症数が極端に少なかったことから、当該年度は1度のみのフィールド調査を行ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、患者血清からの抗体精製等の生化学的手法に用いる試薬、および遺伝子多型解析のための分子生物学的試薬を購入する為の物品費として、次年度分とあわせて3518469円を使用予定にしている。また、培養できない三日熱マラリア原虫を得るため、さらに患者血清サンプルを得る為のタイ王国への渡航、滞在費用、および、国際学会での成果報告のための旅費として、次年度分とあわせて1500000円使用予定である。研究を促進する為の研究補助員の人件費として、1500000円計上した。
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Research Products
(3 results)