2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of genetic marker for artemisinin-resistant malaria: Field-genomics analysis
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26305015
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
美田 敏宏 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 順 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80301141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マラリア / 薬剤耐性 / アルテミシニン / K13 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ウガンダ共和国における前年度までの調査で複数のin vitro RSAアルテミシニン耐性原虫を見出すことができた。これは調査地においてアルテミシニン耐性のポテンシャルを持った原虫が出現している可能性を示している。そこでin vivoレベルでの耐性出現を評価するため、アルテミシニン単独治療後の原虫密度を経時的にモニタリングした。その結果、解析が終了した約100例中3例においてWHOの耐性基準を越える原虫を発見した。アフリカで初のアルテミシニン耐性原虫の発見であり、現在データ固めをしている。 (2)(1)の調査において、原虫密度が0.1%を越える症例についてはRSAを実施、耐性例3齢中1例においてはRSAでも耐性基準を上回っていた。 (3)アルテミシニン耐性候補遺伝子PfKelch13のシークエンス解析により耐性3例すべてに特定の変異が確認された。本変異は昨年の調査では1例のみ見られており頻度が増加してきている可能性がある。本変異はアルテミシニン耐性関連変異と推定されているが、まだ確定されていない。 (4)ウガンダにおけるアルテミシニン耐性原虫の起源を明らかにするために、アルテミシニン耐性原虫3例および20例の感受性について、全ゲノム解析を実施、そのデータをもとに主成分分析およびSTRUCTURE解析を実施した。その結果、3例のアルテミシニン耐性原虫はいずれもアフリカ由来のマラリア原虫集団と強い相関を示したことから、アフリカで独自に出現したことが明らかになった。 (5)パプアニューギニアにおける集団遺伝学的解析によって、薬剤(サルファドキシン)耐性原虫の急激な増加によっても、原虫の集団多様性に変化は見られないことを明らかにした(Sci Rep 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存抗マラリア薬への耐性原虫の出現起源地であるパプアニューギニアとミャンマーに加え、ウガンダも調査地に加えることとなった。これは、本課題実施中にアフリカで初めての耐性原虫をウガンダで発見したためである。 その結果ウガンダ共和国において以下に示す多くの研究進捗が得られた。① in vivoレベルでのアルテミシニン耐性原虫が出現している可能性が示された。これはアフリカで初のアルテミシニン耐性原虫の発見であり、現在論文作成に向けデータ固めが進行中である。② ウガンダにおけるアルテミシニン耐性の遺伝マーカーとなりうる候補遺伝子変異をPfKelch13内に同定することができた。③ ウガンダで発見したアルテミシニン耐性原虫は東南アジアでの耐性原虫が移入したものではなく、アフリカで独自に出現したことを明らかにした。 これらの結果を踏まえ、本年度はウガンダでのフィールドで採取したマラリア原虫を凍結保存後、国内に持ち帰り、培養株樹立を実施する予定であった。患者からの培養株を用いることによって、RSAによる耐性レベルのconfirmation、網羅的な転写等による耐性メカニズムの解明、耐性遺伝子の同定を実施することが可能になる。しかし、凍結保存のために使用した携帯型ディープフリーザーが故障したため、解析に必要な数の培養株を樹立することができなかった。 パプアニューギニアでの調査にも大きな進捗がみられた。薬剤(サルファドキシン)耐性原虫の急激な増加によっても、原虫の集団多様性に変化は見られないことを明らかにしたほか、PfKelch13のC580Y変異が当地で出現していることを明らかにした。この変異は、メコン流域において急激に増加しており、アルテミシニン耐性の遺伝マーカーとしてWHOがその応用を推奨しているものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度の延長となる。以下2つの課題を進める予定である。 ① ウガンダでの調査を実施し、アルテミシニン耐性出現のデータ固めをするとともに、凍結保存検体を得る。国内輸送後、培養株樹立を実施する。その後、RSAによる耐性レベルのconfirmation、網羅的な転写等による耐性メカニズムの解明、耐性遺伝子の同定、耐性遺伝マーカーの開発を実施する。 ② パプアニューギニアでの調査で明らかになったPfKelch13のC580Y変異原虫について集団遺伝学的な解析を実施し、耐性の起源、拡散、可能であればアルテミシニン耐性へのバックグランド変異を解明する。
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Causes of Carryover |
本年度はウガンダでのフィールドで採取したマラリア原虫を凍結保存後、国内に持ち帰り、培養株樹立を実施する予定であった。しかし、凍結保存のために使用した携帯型ディープフリーザーが故障したため、解析に必要な数の培養株を樹立することができなかった。 次年度は、ウガンダでの調査を実施し、アルテミシニン耐性出現のデータ固めをするとともに、凍結保存検体を得る。国内輸送後、培養株樹立を実施する。その後、RSAによる耐性レベルのconfirmation、網羅的な転写等による耐性メカニズムの解明、耐性遺伝子の同定、耐性遺伝マーカーの開発を実施する。 また、新たにパプアニューギニアでの調査で明らかになったPfKelch13のC580Y変異原虫については、集団遺伝学的な解析を実施し、耐性の起源、拡散、可能であればアルテミシニン耐性へのバックグランド変異を解明する予定としている。このため、海外調査にかかる旅費と解析費用を予算として計上した。
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Research Products
(25 results)
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[Journal Article] Absence of in vivo selection for K13 mutations after artemether-lumefantrine treatment in Uganda.2017
Author(s)
Balikagala B, Mita T, Ikeda M, Sakurai M, Yatsushiro S, Takahashi N, Tachibana SI, Auma M, Ntege EH, Ito D, Takashima E, Palacpac NM, Egwang TG, Onen JO, Kataoka M, Kimura E, Horii T, Tsuboi T.
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Journal Title
Malar J.
Volume: 16
Pages: 23
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] ウガンダにおけるin vivo薬剤耐性試験およびRSAを用いたアルテミシニン耐性疫学調査.2017
Author(s)
池田美恵, 橘真一郎, 山内祐人, Auma M, 関原誠, 森稔幸, 平井誠, Palacpac N, 木村英作, Aginya E, 堀井俊宏, 美田敏宏.
Organizer
第86回日本寄生虫学会大会.
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[Presentation] ウガンダ国の熱帯熱マラリア患者において腸内細菌叢の変化が起こる.2017
Author(s)
谷口委代, 宮内栄治, OliaAlex, 長安英治, OsbertKaturo, 鈴江一友, 今井孝, 下川周子, 大西里咲, I. O-A, PalacpacNirianne, 丸山治彦, 木村英作, 美田敏宏, 大野博司, 堀井俊宏, 久枝一.
Organizer
グローバルヘルス合同大会プログラム・抄録集.
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[Presentation] ウガンダにおける熱帯熱マラリア原虫キニーネ感受性の実態.2017
Author(s)
山内祐人, 橘真一郎, 池田美恵, 関原誠, Balikagala B, 八代&櫻井美樹, 平井誠, Palacpac N, 木村英作, 堀井俊宏, 美田敏宏.
Organizer
第86回日本寄生虫学会大会
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[Presentation] 宿主内競争による熱帯熱マラリア原虫のクロロキン感受性の回復.2017
Author(s)
橘真一郎, 池田美恵, Balikagala B, 櫻井美樹, 八代聖基, 関原誠, 山内祐人, Auma MA, 平井誠, 森稔幸, Palacpac N, 片岡正俊, 木村英作, 堀井俊宏, 美田敏宏.
Organizer
第86回日本寄生虫学会大会
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[Presentation] Detection of artemisinin-resistant Plasmodium falciparum isolates with ex-vivo ring-stage survival assay in Uganda.2017
Author(s)
Mita T, Ikeda M, Kaneko M, Balikagala B, Tachibana S-I, Sakurai-Yatsushiro M, Yatsushiro S, Takahashi N, Hashimoto M, Katuro O, Olia A, Obwoya P, Auma M, Anywar D, Odongo-Aginya E, Hirai M, Palacpac N, Kataoka M, Tsuboi T, Kimura E, Horii T.
Organizer
Keystone Symposia Conference: Malaria
Int'l Joint Research
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[Presentation] Application of a cell microarray chip system for accurate, highly sensitive, and rapid diagnosis for malaria.2017
Author(s)
Kataoka M, Yatsushiro S, Yamamoto T, Oka H, Okello-Onen J, Odongo-Aginya E, Palacpac N, Mita T, Baba Y, Horii T.
Organizer
Keystone Symposia Conference: Malaria:
Int'l Joint Research
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