2015 Fiscal Year Annual Research Report
アジア人固有の血栓症発症要因の病態解明と新たな予防治療戦略の確立
Project/Area Number |
26305027
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Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
津田 博子 中村学園大学, 栄養科学部, 教授 (30180003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
濱崎 直孝 長崎国際大学, 薬学部, 名誉教授 (00091265)
隈 博幸 長崎国際大学, 薬学部, 准教授 (40435136)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際学術調査 / 静脈血栓塞栓症 / 発症要因 / 予防治療戦略 / protein S / protein C |
Outline of Annual Research Achievements |
静脈血栓塞栓症の遺伝要因に人種差があることが次第に明らかになってきた。本研究では、アジア、ヨーロッパ等の研究者の国際協力により、アジア人固有の血栓性素因の病態を明らかにし、食生活改善を主軸とした予防治療法開発を目的としている。今年度の研究によって得られた成果は以下のとおりである。 1.静脈血栓塞栓症の遺伝要因、環境要因の人種差に関する国際学術調査 日本、韓国、ハンガリーの静脈血栓塞栓症患者および健常者の解析から、日本人の遺伝要因であるprotein S遺伝子多型(protein S Tokushima)は韓国人、ハンガリー人には存在せず、日本人固有であることが示唆された。一方、中国人の遺伝要因であるprotein C遺伝子多型のうちPROC c.574_576delを韓国人および日本人の健常者の1.4%および0.6%に同定したが、PROC c.565C>Tは同定しなかった。ハンガリー人にはこれらのprotein C遺伝子多型を同定しなかったが、白人の遺伝要因の第V因子遺伝子多型(Factor V Leiden)を健常者の8.6%に同定した。シンガポールとブラジルの共同研究施設では倫理審査が終了し、検体採取中であり、解析は平成28年度に実施予定である。 2. 食生活改善を主軸としたアジア人固有の静脈血栓塞栓症の予防治療戦略の確立 血中protein S比活性測定系が直接トロンビン阻害薬(ダビガトラン)添加の影響を受けないことを確認し、血栓症治療薬投与中でも診断可能なことが示唆された。株化ヒト肝細胞のprotein S遺伝子発現量が培地中のglucose濃度と正に相関すること、肥満および非肥満日本人女性の血中protein S濃度がLDLやVLDLに存在するアポタンパク質の血中濃度と正に相関することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.国際学術調査 研究基盤として、血漿解析システムを長崎国際大学およびシノテスト(株)に整備、遺伝子解析システムを研究代表者の研究室および長崎国際大学に整備して、国内外の研究協力者から送付された匿名化検体を順次解析し、データベースを構築している。情報交換ネットワーク構築では、平成27年6月開催の国際血栓止血学会学術集会(トロント)において、SSC委員会Plasma coagulation inhibitors部会およびアジア太平洋血栓止血学会Council meetingにて進捗状況を報告し海外研究協力者との情報交換を行った。また、平成27年5月開催の日本血栓止血学会学術集会のプロテインS研究会シンポジウムにおいて進捗状況を報告し国内研究協力者との情報交換を行った。平成28年2月に日本血栓止血学会SSC委員会シンポジウムを開催し、先天性血栓性素因による静脈血栓塞栓症の現状と指定難病認定に向けての取り組みについて周知を図った。 2. 予防治療戦略確立 株化ヒト肝細胞のprotein S遺伝子発現に影響を及ぼす食事因子を探索したところ、培地中のglucose濃度により制御されることが明らかになり、そのメカニズムについて検討している。また、中村学園大学健康増進センターで健康診断を実施した血栓症を発症していない肥満女性と非肥満若年女性の調査結果の解析から、血中protein S濃度に関連する因子の解明に取り組んでいる。 長崎国際大学において、種々の血栓症治療薬による血漿解析システムへの影響を解析し、診断精度の評価を試みている。また、静脈血栓症モデルラットを用いて、候補食因子の予防治療効果を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 国際学術調査 平成28年度はシンガポールとブラジルの研究協力者から送付予定の検体の解析を実施し、新たな共同研究施設を追加する予定はない。平成26、27年度と同様に、国際血栓止血学会SSC委員会、日本血栓止血学会SSC委員会のそれぞれの部会、およびアジア太平洋血栓止血学会のCouncil meetingにおいて、研究の進捗状況報告と研究協力者との打ち合わせを行う予定である。研究成果を国際血栓止血学会、アジア太平洋血栓止血学会、日本血栓止血学会の学術集会で発表する。すべての解析が終了し、リスク要因の人種差についての結果がまとまった時点で、国際血栓止血学会機関紙にSSC subcommittee communicationとして報告する予定である。 2. 予防治療戦略確立 平成27年度の研究を継続する。研究成果を国際血栓止血学会、アジア太平洋血栓止血学会、日本血栓止血学会の学術集会で発表し、論文として報告する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度は人件費およびその他経費が予想より減額できたため、差額相当額の助成金約210万円を平成28年度に繰り越している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の直接経費は約470万円となる。支出の内訳としては、物品費約240万円、旅費50万円、人件費・謝金100万円、その他約80万円を計上しているが、新たな物品の購入予定はない。
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Research Products
(19 results)