2015 Fiscal Year Annual Research Report
MRSAの薬剤耐性アンチバイオグラム進化パターンのグローバル調査解析
Project/Area Number |
26305034
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
寺尾 豊 新潟大学, 医歯学系, 教授 (50397717)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 真隆 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (00412403)
土門 久哲 新潟大学, 医歯学系, 助教 (00594350)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | MRSA |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化社会の到来と共に,人口に占める易感染性宿主の比率が高まっている.また,グローバル化の拡大に伴い,ヒトとモノの世界規模移動が増加してきている.そうすると,小規模な感染起点が直ちに大流行へと転じることとなる.それらの大きな問題としては,初めての感染症(=新興感染症)や,長期間流行らなかった久々の感染症(=再興感染症)に対して,現在のヒトは免疫を有さないため重症化しやすく,かつ治療法も予防法も無いか流行遅れになっていることがあげられる.高齢者社会が進行するわが国でも肺炎が年々増加し,毎年約10万もの死者を出すに至っている.高齢者で特に多く発症し,かつ口腔を感染起点とする誤嚥性肺炎は,医科と歯科の共通懸案である.しかし,医科と歯科の狭間に位置するため,医学・歯学双方の研究領域のエアポケットとなっていた.その結果として,細菌学的・疫学的解析結果に基づく科学的な予防・治療のクリティカルパスの立案が遅れている.多くの歯科医療従事者が驚くことに,70歳を超えた高齢者の誤嚥性肺炎患者の病巣からは,黄色ブドウ球菌が最も高頻度に分離される.黄色ブドウ球菌は,抗生物質の過剰使用に伴い耐性化が進み(=メチシリン耐性黄色ブドウ球菌; methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA),院内感染の主因ともなり治療も困難になるとされている.しかしながら,臨床現場からは,同じ抗生物質療法を行っても,患者ごとにMRSAの耐性化の進行パターンが異なるとの症例報告も散見される.そこで,本申請研究では,日/米/欧/アジア/アフリカを統合するネットワークを構築し,世界規模でMRSA治療歴と細菌DNAを解析調査し,抗生物質使用前後のMRSA薬剤耐性の変化をパターン分析する.そして,同解析結果を基盤としたMRSA治療法のクリティカルパス確立を目指す.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトで採取したMRSA菌200~400株を用い,細菌遺伝子のMLST解析実験を行った.現段階での実験データからは,MRSA菌自体の染色体DNAが,「外来耐性遺伝子を組込み易い型=高度耐性移行型」と「外来遺伝子を受容しにくい型=耐性進化しにくい型」に大別できるのではないかと仮説を立てるにいたっている. 収集菌株の抗生物質耐性試験と治療履歴を照会することで,遺伝系統学的な検証と実際のMRSAの薬剤耐性進化パターンの相関付けを行った.さらに,仮説検証したMRSA進化パターンの結果に基づき,研究室内で薬剤感受性の黄色ブドウ球菌や耐性進化初期のMRSAに対し,各種抗生物質を滴下して実験上の「MRSA耐性進化パターン」を確認した.そうして得られた「MRSA耐性進化パターン」のうち,分離菌200~400株のみを用いた『MRSAの治療経過に伴う薬剤耐性変化パターン=アンチバイオグラム』は,次のようであった.臨床分離した200~400株は,治療前の抗生物質耐性検査で(A)~(E)と定義した5型に分かれた.そのアンチバイオグラムは,各種の抗生物質に対する耐性度をブロットし,レーダーチャートを模して描くと,多角形のパターンを構成する.治療による抗生物質暴露で,(A)~(E)の5型は,それぞれ一定の抗生物質耐性能を獲得したが,それ以上の進化パターンは存在しなかった.具体例として,元々高度耐性であった (C)パターンのMRSAは,レボフロキサシン(LVFX)を使用してもLVFX耐性にはならなかった.一方で,(B)パターンのMRSAは,治療前は耐性度が低かったにも関わらず,LVFXをはじめとして種々の抗生物質に対して次々と耐性を獲得していった.
|
Strategy for Future Research Activity |
日本で平成26~27年度中に収集した菌株については,MRSAの遺伝子型別に使用される必須遺伝子7種類のDNA塩基配列を決定し,分担研究者らがこれまでに実施してきた遺伝子系統分類の通法に従い型別を行う(Iwase, Uehara et al, Nature 2010等).さらに,別の分担研究者は,MRSAが外来性の抗生物質耐性遺伝子を取り込む際に,頻回にその組換えポイントとなるIS配列やattP/attBモチーフ配列を調べ,外来遺伝子の取り込み易さのタイピングを試みる.その他の海外エリア担当スタッフは,前年度の海外調査先の各種事務手続きの承認を得しだい,MRSA抗生物質耐性データと細菌株を新潟大学へ送付する.計画の進捗に伴い(Domon H, Uehara Y, Oda M, Seo H, Kubota N, Terao Y: Poor survival of Methicillin-resistant Staphylococcus aureus on inanimate objects in the public spaces. MicrobiologyOpen 5: 39-46, 2016),新たに浮上した仮設がある.すなわち,一人の患者から採取し続ける経時的なMRSAサンプルは,必ずしも同じクローンでは無く,感染が完治しMRSAが完全排除されると,別クローンのMRSAが新たに感染するという可能性である.当初の申請計画が順調に進捗した場合は,単一患者から複数箇所の菌株スワブを行い,複数菌株をトレースすることで,MRSAクローンの排除と新規感染について経時的な解析も試みたいと考えている.
|
Causes of Carryover |
当初,海外渡航予定を計画していたエリアにテロが発生し,研究者の安全確保と危険回避を最優先させたため,旅費の使用延期が生じた.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
テロの動向を注視し,研究者の安全確保が図られるタイミングで海外渡航を実施する.
|
Research Products
(14 results)
-
[Journal Article] Chemical hybridization of Vizantin and Lipid A to generate a novel LPS antagonist.2016
Author(s)
Yamamoto H, Oda M, Kanno M, Tamashiro S, Tamura I, Yoneda T, Yamasaki N, Domon H, Nakano M, Takahashi H, Terao Y, Kasai Y, Imagawa H
-
Journal Title
Chem Pham Bull
Volume: 64
Pages: 246-257
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Clostridium perfringens alpha-toxin induces GM1a clustering and TrkA phosphorylation in the host cell membrane.2015
Author(s)
Takagishi T, Oda M, Kabura M, Kurosawa M, Tominaga K, Urano S, Ueda Y, Kobayashi K, Kobayashi T, Sakurai J, Terao Y, Nagahama M
-
Journal Title
PLoS one
Volume: 10
Pages: e0120497
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-