2015 Fiscal Year Annual Research Report
結び目やグラフのトポロジーを応用した新高分子理論に基づく特性・機能創出
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26310206
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| Research Institution | Saitama University |
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Principal Investigator |
下川 航也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60312633)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
手塚 育志 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (80155457)
出口 哲生 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (70227544)
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| Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2019-03-31
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| Keywords | 高分子 / トポロジー / 高分子化学 / 統計物理学 / 結び目 / グラフ / ESA-CF法 / ランダムウォーク |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、数学者、高分子化学者、統計物理学者がそれぞれの分野で高分子の研究を行い、ボトムアップ的に連携を行い、高分子サイエンスに新たな視点を提供するものである。
下川が担当する数学では、高分子の数学的モデルである多環構造を持つグラフの命名法とその書き上げの研究を進めている。さらに、いくつかの高分子の化学的性質を数学的モデルから特徴付ける研究と、その結び目や空間グラフの構造の研究を行っている。
手塚が担当する高分子化学では、まったく新しい数学的視点からの高分子構造設計原理を確立し、高分子化合物に特徴的な「やわらかいひも状」の「かたち」に基づく新たな特性・機能創出を進めている。手塚らはこれまで、独自の高分子合成手法(ESA-CF法)を創案し、最新の有機合成手法とも組み合わせて、様々な新奇多環状トポロジー高分子の合成を行ってきた。本研究では、トポロジー幾何学の視点から特に重要な「かたち」に焦点を絞り合成を行うとともに、トポロジー幾何学および計算機シミュレーションにより高分子特性の予測と実験的検証を進めている。
出口が担当する統計物理学では、新しい理論的方法を用いて、複雑なトポロジー的構造をもつ高分子の統計物理量を計算し、実験と比較できる理論的結果を導くこと、スパコンを用いて計算時間が長くコストは高いが現実的な理論模型に対する数値シミュレーションを実行して結果を求め、新しい理論的方法による結果と比較し、その妥当性を確認している。具体的には、与えられた２点間をつなぐランダムウオークを高速に生成する新しいアルゴリズムを用いて、複雑なトポロジー的構造をもつ高分子に対して、慣性半径や拡散係数など様々な物理量を具体的に数値的に計算している。東工大のつばめ計算機を用いて分子動力学計算シミュレーションを実行し、排除体積を持つ模型に対するトポロジー高分子の慣性半径や拡散係数を求めている。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成２７年度には、各分野で下記の通りの成果を得ている。
数学の分野では、グラフの命名法の確立、多環構造の書き上げ、K3,3結び目表の作成を行った。さらに、化学的に指定されたいくつかの化合物の構成法、特に直鎖状の高分子からの構成に対し、どのようなトポロジーをもつ高分子が得られるか特徴付けた。
高分子化学の分野では、高度の対称性から古来わが国の意匠デザインとして家紋などに用いられ、さらに最近、ユニークな生理活性を示す多重折りたたみ環状オリゴペプチドの構造との関連でも注目されている七宝文様の高分子に着目し、独自に開発した高分子反応プロセスであるESA-CF法と最近の有機合成化学の成果であるClick法およびClip法と組み合わせて構築することに成功した。併せて、ESA-CF法の新たな展開の基礎となる周期性多官能環状高分子の合成プロセスも開発した。
統計物理学の分野では、与えられた２点間をつなぐランダムウオークを線形時間で高速生成する新しい計算アルゴリズムを用いて、シータ型高分子や完全二部グラフ型高分子など複雑なトポロジー高分子の慣性半径や流体力学的半径を求めた。この模型では排除体積はないが、しかし、後述の結果から、異なる高分子の間での慣性半径の比や流体力学的半径の比は排除体積効果のある模型とほぼ一致した。この結果、この新しいアルゴリズムは理想鎖を生成するが、物理量の比に着目すれば、実験と比較可能な結果を導くことが分かった。東工大のスパコンであるツバメ計算機を用いて、排除体積を持つKremer-Grest 模型の分子動力学シミュレーションを実行し、トポロジー高分子の慣性半径と流体力学的半径を求めた。さらに２点間距離分布関数を求めたところ、短距離の振る舞いに関して興味深い結果を得た。
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| Strategy for Future Research Activity |
数学の分野では、高分子のトポロジーの分類を元に、高分子化合物の特性を推察し、求める化学特性を有する新奇化合物の候補の提案を行う。
高分子化学の分野では、前年度までに得られた成果をふまえて、ESA-CF法を適用した高分子の折りたたみによる多環状高分子異性体の選択的合成プロセスの検討を進める。また環状高分子の環拡大重合プロセスによる実用的合成法も検討する。さらに、多環状高分子異性体間の相互変換（異性化反応）についても検討し、これらの結果と、トポロジーに基づいた様々な「かたち」の高分子の体系的分類、および、異なる「かたち」相互の関係性（異性現象等）の抽出を合わせて、トポロジー理論に基づく新奇構造高分子合成プロセスの開発を進める。これにより、高分子ブレークスルー機能の創出が期待される。
統計物理学での次の目標は、トポロジー的に複雑な高分子の静的構造因子（散乱関数）を求めることが挙げられる。この物理量は２点間距離分布関数のフーリエ変換で与えられる。静的構造因子の特徴が明らかになれば、その情報を用いて、散乱実験の結果から溶液中の高分子のトポロジー的構造が判定できるようになる可能性が高い。また、さらに複雑なトポロジー的構造を持つ高分子の性質を調べることが考えられる。そして究極的な目標としては、東工大のつばめ計算機を使用して、トポロジー高分子の高分子メルトの性質を調べることが今後の重要課題である。
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| Causes of Carryover |
次年度使用額532,300円のうち、364,000円は東京工業大学スーパーコンピュータTSUBAMEの使用料に対応し、のこりの168,300円は物品費に対応する。これは、今年度行う予定であったシミュレーションの一部の実施を次年度に変更したために生じたものである。物品費もこの計画変更に伴い生じたものである。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
東京工業大学スーパーコンピュータTSUBAMEでシミュレーションを行う。特に様々なトポロジーを持つ高分子のシミュレーションと、高分子メルトのシミュレーションを行う予定である。またそれに伴う物品の購入を行う。
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[Presentation] Knots and links in the simple cubic lattice2015
Author(s)
Koya Shimokawa
Organizer
Simons Center's Workshop: Symplectic and Algebraic Geometry in the Statistical Physics of Polymers
Place of Presentation
Simons Center of Geometry and Physics, Stony Brook University, NY, USA
Year and Date
2015-10-13
Int'l Joint Research / Invited
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