2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26310213
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田邊 優貴子 早稲田大学, 高等研究所, 助教 (40550752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 顕 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 教授 (90211937)
工藤 栄 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (40221931)
水野 晃子 名古屋大学, 地球水循環研究センター, 研究員 (60551497)
吉山 浩平 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 助教 (90402750)
池田 幸太 明治大学, 先端数理科学研究科, 講師 (50553369)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2017-03-31
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Keywords | 光合成 / パターン形成 / 進化動態 / 群集構造構築プロセス / 水圏生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに蓄積してきた湖沼環境データと試料から、水中に光スペクトルの特性と湖底群集の形態の解析を行った。また、一部の湖沼でしかまとまられていなかった、湖底群集の光捕集・防御機能を持つ色素類(カロテノイド類、クロロフィル類)と紫外線防御物質(シトネミン、マイコスポリン様アミノ酸)を、採取した全湖沼について詳細に解析した。不足しているデータについて、国立極地研究所の低温室に冷凍保管されている試料からHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって分析を行った。同様に、現場での湖底群集の光合成パターンについて詳細に解析した。これらのデータに基づき、以下①~③の数理モデル化を進め、室内パラメータやモデルの妥当性を評価するために、南極で現地調査を行い、現場データ(特に、湖底群集の形態・構成種の解析、水中の光強度および波長構成の経日変化と集合体の生理状態の変動との関係)を収集した。 ①「光化学系応答のモデル化」 光合成生物の光合成反応中心である光化学系を3状態モデル(アクティブ、非アクティブ、ダメージ)で記述した。光エネルギーの波長区分に応じた光捕集・光防御の最適戦略を求めることで、ある光スペクトルに対する光合成生物の応答メカニズムを理論的に説明した。この成果は現在学術論文として投稿し、修正中である。 ②「群集の鉛直構造構築プロセスのモデル化」 鉛直的な空間構造のもとで光合成生物の生産性を求め、群集の鉛直構造が形成されるプロセスをモデル化を進めた。 ③「色素の鉛直パターン形成をモデル化」 光化学系応答のモデルに鉛直的な空間構造、および群集動態を導入し、実際の湖底に入射する光スペクトルに対して実際の光合成生物が持つ色素の鉛直構造が形成されるプロセスをモデル化した。この成果は現在論文としてまとめ、投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で目的としている現場環境と数理とをつなぐモデル構築作業のうち、メインとなる光化学系応答のモデル化が完了し、その成果は論文としてすでに投稿され、現在修正中であるため近日中に受理される状況である。また、モデル化する上で不足している現場データを南極調査を実施することにより採集した。これまでのデータと合わせて解析したことにより、色素の鉛直パターン形成をモデル化もほぼ完了した。これらの研究成果は国内外の学会およびシンポジウムにおいて発表し、現在論文としてまとめている段階である。その他のモデル化作業は現在も継続して進めているところである。以上のことから、当初の計画から乖離することなく、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
・ 「モデル構築」 1年目に引き続き、各自、「群集の鉛直構造構築プロセスのモデル化(佐々木、水野、吉山)」、「色素の鉛直パターン形成のモデル化(水野、田邊)」、「光獲得競争による群集マット形成のモデル化(吉山)」、「空間パターン形成および円錐構造形成のモデル化(池田、田邊)」の構築を進める。数理モデリングを進める中で出てくる、問題となる部分について全員で意見交換やディスカッションを重ね、修正・改良をしながら実施する。
・ 「室内実験」 湖底群集の一次生産者および分解者の優占種を分離し、特定の光波長下ないし様々な温度域で一種もしくは多種共存下で培養し、光スペクトルおよび温度に対する進化的応答実験を行う。これにより、群集の鉛直構造が短期的応答によるものなのか、適応・進化によるものなのかを明らかにする。
・ 「現場データおよび試料の採取、現場データ解析」 現地調査により、不足するデータと試料の採取を実施する。1年目に引き続き、現場調査で得られたデータの解析および試料の分析を行い、室内実験で得られたパラメータや数理モデルの妥当性を評価する。
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Causes of Carryover |
本研究課題の開始が年度後期からであったため、データ解析および研究ディスカッションによって、必要となる湖沼の衛星画像データや試薬等を選定しなければならず、年度内の購入および納品が難しい状況となった。また、年度末に予定していた研究分担者全員での研究打ち合わせ会の日程調整ができず、次年度の初めへと延期した。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
湖沼の衛星画像データおよび分析・実験用試薬等の消耗品の購入、研究分担者同士の研究打合せの旅費として使用する。
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