2015 Fiscal Year Annual Research Report
有機無農薬水稲栽培年数の経過に伴って土壌・水稲・雑草・動物はどう変化するか?
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26310304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 和彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10354044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内野 彰 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (20355316)
鳥山 和伸 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 生産環境・畜産領域, 専門員 (30355557)
山田 晋 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30450282)
宮下 直 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (50182019)
山岸 順子 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (60191219)
程 為国 山形大学, 農学部, 准教授 (80450279)
二宮 正士 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90355488)
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Project Period (FY) |
2014-07-18 – 2018-03-31
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Keywords | 農業環境工学 / 有機農法 / 雑草 / 物質循環 / 水田生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
農法モニタリング班は、手持ち及びドローン搭載カメラ画像から、植被率と葉面積を推定する方法の開発を進めた。インターバルカメラとGPSロガーを用いた農作業モニタリングの結果、有機圃場の方が慣行圃場よりも面積当たり作業時間が短いことが分かった。 土壌班は、長期有機栽培が水田土壌における窒素固定量と脱窒量に与える影響を明らかにするため、窒素安定同位体を用いた静置培養実験を行った。その結果、ラン藻由来の窒素固定量、脱窒量ともに慣行栽培よりも有機栽培で高く、また有機栽培年数が長いほど高かった。冬雑草すき込みを2年連続して中止すると、すき込み区に比べて収量と窒素吸収量が減少した。すき込まれた雑草は、嫌気的分解が水稲生育に有利に働いた。 水稲班によると、有機継続区では発生した分げつが退化せず収量に結びついており、生育の後半まで高い同化能力を維持することで、登熟期の乾物生産量を確保していた。また、穂数と収量には高い正の相関があり、生育初期の分げつ数確保により収量を増大させる可能性が示された。 雑草制御班は、埋土種子数あたりのコナギ残存個体数は、多くの有機圃場で1%以内であることを見出した。中央農研の場内圃場の無除草区で、埋土種子あたりの残存個体数が1-5%程度であるのよりも少なく、本有機農法の雑草抑制効果が示唆された。 雑草生態班は、代かき直前における雑草バイオマス量が、有機連用年数の経過とともに増加し、約10年で最大となることを見出した。雑草に含まれる窒素含有量も連用約10年の圃場で最大となり、慣行水稲作で年間に投入される窒素量に匹敵する量に達した。 動物班によると、ヨコバイ類とウンカ類の個体数が、イネの生育段階に応じて変化しているが、農法間での差は見られなかった。一方でカメムシ類は、同じ生育段階では有機栽培で個体数が多かった。鱗翅目の幼虫は農薬散布後に明らかに有機栽培で個体数が多くなっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年は、有機圃場での登熟期に日射量が少なかったため、米収量はかなり低い結果となった。本研究で対象とする有機農法では、晩植が重要な技術要素であるため、気象の年々変動の影響も慣行農法とは異なる。米収量を有機と慣行で比較する際に、この点をどう考慮するか、今後検討の必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
農法モニタリング班は、フィールドルーターを中心とするセンサーネットワークによる環境計測、インターバルカメラやGPSロガーによる農作業記録、そしてドローン搭載カメラによる植物生育の画像計測を行い、対照圃場の環境・農作業・植物生育を継続的・多面的に解明する。 土壌班は、現地圃場から採集した現地圃場から採集した土壌断面サンプルを用いて、高い地力が維持できる有機農法水田の仕組みを安定同位体比の測定と室内培養実験で解明する。また、昨年秋に採集した有機農法歴の異なる圃場および慣行農法圃場の土壌サンプルを用いて室内培養実験を行い、有機農法が水田土壌中の窒素固定と脱窒に与える影響を明らかにする。さらに、圃場に設置するポット実験を行って、雑草のすき込みが水稲の窒素吸収に及ぼす効果を解明する。窒素以外にも、全リン酸と可給態リン酸の評価、土地改良後の掲示変化の観測を行う。 水稲班は、昨年度までの結果から、有機農法圃場では穂数が不足していると考えられるので、栽植密度と作期を操作した場合の水稲生育・収量の変化を、有機農法圃場と慣行農法水田で比較する。 雑草制御班は、基盤整備圃場を継続して調査し、雑草抑制効果の年次推移を明らかにする。調査項目は昨年度と同様に入水前の埋土種子数と、生育期(移植後40-50日目)の雑草残草量とし、埋土種子数あたりの雑草残草量で雑草抑制効果を評価する。 雑草生態班は、稲作期間外の雑草生育が圃場の窒素収支に及ぼす影響を解明する目的で雑草除去区を設けて対照区と比較するとともに、種組成の異なる雑草リターを埋め込んで、稲作期間中の分解を観測する。 動物班は、これまでに採取したサンプルを用いた解析において、特に放棄田・畔・水路脇との距離が水田内の害虫の個体数に及ぼす影響を解析する。一方、有機農法生態系における土壌動物生態の年次変動を解明する目的で、現地調査を行う。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Modeling aerobic decomposition of rice straw during off-rice season in an Andisol paddy soil in a cold temperate region, Japan: Effects of soil temperature and moisture2016
Author(s)
Nakajima, M., Cheng, W., Tang, S., Hori, Y., Yaginuma, E., Hattori, S., Hanayama, S., Tawaraya, K., Xu, XK
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Journal Title
Soil Science and Plant Nutrition
Volume: 62
Pages: 90-98
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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